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JASRACとRIAJが電子透かしに関する共同発表を実施
--FM放送でも電子透かしの有用性を確認


JASRAC加藤衛常務理事

1月22日発表


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)と、社団法人日本レコード協会(RIAJ)は22日、電子透かしのに関する共同の発表会を開催し、利用実証実験の結果有効性が実証できたと発表した。

 実証実験は、JASRACがインターネット上の違法利用、RIAJはCD音源のFM放送での利用実態調査で、それぞれの目的や手法は異なっているが、どちらも電子透かしの有用性が確認できたという結論となった。なお、技術的には、既に確立されており、あとはコンテンツホルダの協力が得られれば、早期に実現できるという。

 会見では、最初にJASRACの加藤衛常務理事が、今回の実証実験の意義について説明した。まず、JASRACが昨年、一昨年と行なってきた電子透かしの選定作業「STEP2000」、「STEP2001」の成果として、音源に透かしを入れた状態でのクラッキングなどに対する耐性や、音楽の品質を損なわないことが確認できたと説明。「(昨年までは)放送などに適用した場合、正しくデコードできるかどうかなどの実際に運用する上での問題は検証していなかった。今回はより検証を進めておりその結果について報告する」と要約した。

 また、“ネット環境において不法利用の追跡ができる”、“不法ファイルからも権利情報を取り出せる”、“訴訟の場合に、著作権者の特定作業が容易になり、訴訟実務の点でも効果がある”など電子透かしの利点を述べた後、「(地上波デジタル放送など)モバイル端末に対する映像配信ももうじき始まる予定で、映像の透かしについても、NTTをはじめ各社が取り組んでいる。そうした映像系の取り組みにもいい刺激を与えられればと考えている。これが終わりでなく、継続して著作権保護に取り組んでいく」と意気込みを語った。

JASRAC野方英樹ネットワーク課長

 また、JASRACの菅原瑞夫送信部長は、今回のレコード協会との共同発表について、「音源の権利者であるRIAJとJASRACの両団体が一緒に発表するのは初めてで、実ビジネスでこういうことをやろうということを訴えていくことでも意義がある」と説明した。

 その後、JASRACの野方英樹ネットワーク課長が、JASRACが中心になって行なった実証実験について解説した。JASRACが行なったのは、インターネット上の違法利用を発見する実験で、「非常にシンプルなもの(野田課長)」という。

 実験は、市販のCD音源に電子透かし情報(ISWC)を埋め込みMP3ファイルに変換、それをJASRACが用意した2つのインターネットサーバーにアップロードし、音楽ファイルの違法利用環境を構築した。同サーバーを約2週間公開した後で、JASRACが運用する違法著作物データ監視システム「J-MUSE」でインターネットサイトを検索し、「J-MUSE」の電子透かしデコーダーにより、収集したファイルのチェックを行なった。その結果、電子透かしが埋め込まれたMP3ファイルを確認でき、楽曲の特定が行なうことができたという。

 今回利用した電子透かしは、技術的にはSTEP2001の時点と同様で、15秒以内のタイムフレームに2bit、30秒以内のタイムフレームに72bitの透かしデータを挿入するというもの。透かしはSTEPの認定企業である、IBM、エム研、マークエニー・ジャパン、日本ビクターの4社それぞれの電子透かし技術を利用し、各社の技術を用いて、3曲ずつ計12曲を公開。その結果、各社の電子透かしが並存する環境下でも、違法利用発見や侵害物特定が行なえたという。

RIAJ田中純一事務局次長兼情報・技術部長

 一方で、RIAJの実験はFM放送向けのものとなっている。FM放送事業者などの協力のもと、放送で利用されるCD音源を電子透かし技術を用いて特定し、その利用実態を把握することが目的で、2002年7月に実施された。

 電子透かしを含めた放送音源把握システムは、株式会社コンファメディアが扱う、米VERANCE開発のCofirMedia Broadcast Monitoring Systemを利用した。実験は、FM東京とFM大阪の協力のもと行なわれ、放送するCD音源に電子透かしにより固有のIDを埋め込み、受信した音声をチェックして、電子透かしを取り出すことができるかを検証。また、放送された音源の特定と利用実態をシステムを用いて自動的に把握できるかということに重点を置いて行なわれた。

 音源は、期間内の両局のパワープレイタイトル3曲で、合計48曲が放送された。RIAJの田中純一事務局次長兼情報・技術部長によると「楽曲の検出率は100%で、ナレーションがかぶったときでも十分満足できる結果が残せた。強い自信を持つことができた」という。また、FM東京では放送の休止時間帯に、生放送やトーク番組中に流すといった様々なシチュレーションを用意ながら実験したが、いずれもID検出可能だったとしている。

RIAJの実験概要 検出データ処理の流れ

 発表会後の質疑応答では、今回の実証実験の目的についての質問が出た。RIAJは「第一の目的は利用状況を把握するためで、次いで違法行為の検出という位置づけ」としたのに対し、JASRACでは、「2011年にテレビ放送が完全にデジタル化した際には通信と放送の差はなくなってくる。私的複製の範囲について議論する必要があるが、我々としては、私的複製の範囲を超えた利用に対しては、JASRACが追っかけますよという注意や、海賊版販売に対する抑止力となることを当然考えている」と説明するなど、それぞれの立場の違いも伺えた。

 また、電子透かしにより個別の曲の利用状況が特定できるようになる可能性が高いが、JASRACでは、「現在各社に事業売上の何%と固定で行なっている著作権使用料の課金方針を変える予定はない(加藤常務理事)」、RIAJでも、「2次使用料の徴収方針などについては、変更する予定は無い(田中事業部長)」としている。

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□RIAJのホームページ
http://www.riaj.or.jp/
□関連記事
【2001年10月19日】JASRAC、“使える”音楽電子透かし技術としてIBMなど4社を認定
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/1019/step2001.htm

(2003年1月22日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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