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三菱電機エンジニアリング株式会社は、超音波を利用した超指向性音響システム「ここだけ」の受注を5月20日に開始する。特定の空間にいる人だけに、限定的に音を聞かせることができるシステムで、主に交通機関や美術館、アミューズメント施設などでの業務用途を想定している。システムは放射器、増幅器、変調機の3つで構成され、価格は各1台ずつのセットで140万円となっている。なお、2004年度に600システム、約10億円の売上を予想している。
「ここだけ」の最大の特徴は、超音波を利用してビーム状の音場を作り出すこと。この技術は、人間の耳には聞こえない超音波が、空気を伝搬する過程で生み出す歪みを利用し、可聴帯域の音を得る「パラメトリックスピーカー」の原理を利用している。
通常、音は、その周波数が20kHz以上であっても歪まないで空気中を伝搬する。しかし、音圧レベルが120dBあたりを越えると、20kHz以上の音は正確なサイン波を作らず、歪むという特性がある。
システムはこの現象を利用したもので、音楽やアナウンスなどの音源(可聴音)をデジタル包絡変調器に取り込み、超音波(非可聴音)に変換、アンプで増幅し、放射器で放出する。すると、超音波はビーム状の高い指向性を持ったまま空気中を伝搬し、その過程で歪みを発生、その歪みが可聴音として聞こえるという。なお、今回の製品の再生周波数帯域は500Hz~20kHzまで。 超音波は放射器から水平/垂直方向に約20度の角度で広がり、円錐形の音場を形成する。その範囲は、放射器から10m離れた場所で、直径約3.5mになるという。
■ 利用形態 指向性が非常に高く、放射器が向いていない場所では音がほとんど聞こえないという静穏性を利用し、様々な場所での使用が想定されている。具体的には、駅の特定のホームにいる人にだけアナウンスを流したり、エスカレーターに設置して、乗り降りする人の耳にだけ注意のうながすことも可能。さらに、横断歩道に設置して視覚障害者用のアナウンスを流すといった使い方もできる。 指向性が強いため、音の反響、残響が激しいトンネルなどに設置し、災害時の避難誘導にも利用可能。また、反射した音もビーム状の音場を持っているため、反射音を使った利用形態も模索中とのこと。
■ 耳元でささやかれるような音 発表会場では、超指向性を体感するデモも行なわれた。まず、会議室内で報道陣に向けて放射器の向きを変えていくという実験が行なわれたが、放射器が自分の方向を向くまで音はほとんど聞こえず、音場に入ると突然、耳元でささやかれるようにハッキリと音楽が聞こえた。 放射器が別の方向を向いている場合は、放射器から音は聞こえないが、ビーム状に放出された超音波が会議室の後ろの壁に当たり、その壁から音が聞こえるという現象も確認できた。なお、実際の使用を想定しての野外デモも行なわれたが、ここでは背面からの音は聞こえず、放射器からの音のみ聞くことができた。
(2003年5月15日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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