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JASRAC、平成14年度業績説明会を開催。CDが減少、着メロが伸張
-日本でのiTunes Music Storeの展開には疑問を呈す


JASRAC吉田茂理事長

5月21日発表


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は21日、定例記者会見を開催し、業績説明を行なった。平成14年度の使用料等徴収額は前年比7億8,000万円増(0.7%増)の1,060億6,000万円となった。

 内訳としては、CDの生産実績が不振でオーディオディスクの徴収額が前年比90.6%の約308億7,000万円と落ち込んだものの、放送使用料や、着信メロディ配信を中心とするインタラクティブ配信の使用料が大幅に伸びたため、前年度実績を確保できたとしている。

 分野別では、演奏や放送、有線放送を含む「演奏」分野での徴収額が前年比102.5%の約415億1,650万円、前年比92.6%のCDやDVDなどを含む「録音」分野が約448億2,088万円、「出版」分野が同86.6%の約17億2,567万円、レンタルCDなどを含む「貸与」分野が同96.8%の約38億3921万円、通信カラオケやインタラクティブ配信(着メロなど)を含む「複合」分野が同142.2%の約132億5,011万円となっている。使用料収入の合計は前年比100.9%の1,051億5,239万円となった。

 また、録音用CD/MDや録画用DVDなどに含まれる「補償金」は、前年比83.6%の9億1,514万円となっている。

 発表会では、JASRACの吉田茂理事長が冒頭に挨拶に立ち「インターネット上での違法コピーなどの影響により、音楽は減収したが、着メロや、(平成14年4月から新たに導入された)有線放送事業者を対象にしたBGMからの徴収などにより、増収となった」と述べた。

 また、問題視されているインターネット上での不正コピーの配布などに関しては、「プロバイダー責任法などを元に、不正ファイルの削除要請を行なうなどの対策を行ない、著作権をとりまく環境の改善に今まで以上に取り組んでいく」とした。また、音楽著作権者の権利保護に尽力し、海外での不正コピーの取締りなどに関しては、各政府機関への働きかけや外国著作権団体との協力など、さまざまな働きかけにより対処すると述べた。

加藤衛常務理事

 その後、加藤衛常務理事が、平成14年度の業績概要を説明、「CDが落ちて、インターネットが伸びたということに尽きる」と昨年度の動向をまとめた。

 着メロなどを含む“インタラクティブ配信”は、前年比191.2%の約76億5,746万円と大幅に伸び、CDの売り上げ減などの損失を埋める形となった。

 インタラクティブ配信のうち95.6%、約73億2,382万円が、着信メロディの徴収。加藤理事は「着メロはそろそろ安定期かなという気がしている。すでに100社以上が着メロサービスを展開しており、値下げ競争が始まっている。これまでのように2倍、3倍と増えていくとは思えない」と説明した。その一方で、auが行なっているCD音源を着信音として利用する「着うた」サービスのような、単価の高い新しいサービスも登場しており、インタラクティブ配信は今後も伸張していくとの見通しを示した。

 また、国際間の著作権管理の充実に向けた取り組みが実を結びつつあるとし、特に東アジア地域での成果が上がっていることを説明した。従来よりアジア地域の管理団体との連携/協力関係の構築を図ってきた。中国の著作権管理団体「MCSC」とも、6年前より相互管理契約を締結していたが、本年度に初めて入金が開始されたという。また、台湾の管理団体MISTからの入金もスタートしており、今後もサポートしていくと解説した。

 質疑応答では、Appleが米国で開始した音楽配信サービス「iTunes Music Store」についても触れられたが、「アメリカでも完全に(法的に)OKというわけではない。5人がクローズドな環境で聞くということだが、制限を回避するソフトも出てきているようだ。また、日本ではいわゆる送信可能化権というのもあるので、日本で同様な事業が始まった場合は、音源を提供する事業者がそれに同意できるかという問題もある(加藤衛理事)」という。

 また、補償金収入が落ちていることについては、「MDレコーダの一巡で、ハードの販売台数がとどまっており、MD販売価格が落ちていて、マイナス成長である」という。また、「もっと大きい問題は音楽用で無い(補償金の適用除外となっている)CD-Rへの録音」とし、「こういった問題を放置しておくわけにはいかない。CCCDやレーベルゲートなどの導入を進めているが、導入していないソフトも出ているのが現状で、権利者同士で話しあっている。文化審議会でもそうした私的録音制度の検討会も始まっているので、そこで話を進めていきたい(細川英幸理事)」と今後の方針を語った。

JASRAC賞について

 また、あわせてJASRAC賞の発表も行なわれた。JASRAC賞は著作物使用料の分配額によって決定され、今年で21回目となる。

 金賞は、久石譲の作曲による「千と千尋の神隠し BGM」で、インストゥルメントの受賞は初。銀賞は宇多田ヒカルの「Traveling」、銅賞はすぎやまこういち作曲/橋本淳作詞の「亜麻色の髪の乙女」となった。

 また外国入金の分配額1位に送られる「国際賞」は宮崎慎二作曲の「ポケットモンスター BGM」、外国作品賞は宇多田ヒカルの「HIKARI」となった。「HIKARI」の受賞は、オリジナルパブリッシャーがWalt Disney Musicとなっているため。

金賞を受賞した久石譲氏。「サントラ/インストでは初めての受賞ということもうれしいが、2位が宇多田ヒカルさんというのもうれしい」とコメント すすぎやまこういち氏。40年以上前に書いた「亜麻色の髪の乙女」については「もうそのころの記憶も無いんですが」と笑わせ、「楽曲を使い捨てにしないでほしい」と訴えた 作詞/作曲者や音楽出版社に賞が送られた

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.jasrac.or.jp/profile/prize/index.html
□平成15年度定例記者会見要旨
http://www.jasrac.or.jp/release/03/05.html

(2003年5月21日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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