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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は28日、「JASRAC シンポジウム 2003 ~知的財産立国の実現に向けて~」と題したシンポジウムを開催した。 シンポジウムは、2002年11月に制定された知的財産基本法に基いて、内閣に設置された知的財産戦略本部から7月に発表された「知的財産の創造、保護および活用に関する推進計画」の柱となる「コンテンツビジネスの飛躍的拡大」に焦点を当てたもの。
音楽、アニメや映画、ゲームソフトなど「日本のエンタテインメント・コンテンツビジネスの拡大、活性化に向けて、コンテンツの流通促進、円滑な利用のための環境整備」などをテーマに、JASRACのほか、RIAJなどの各著作権管理団体のトップが集まり、パネルディスカッションが行なわれた。 パネルディスカッションは、「コンテンツビジネスをめぐる課題と将来展望」と題して、行なわれた。コーディネータは日本経済団体連合会(経団連)の立花宏専務理事、パネリストは荒井寿光 内閣官房 知的財産戦略推進事務局長、社団法人日本レコード協会(RIAJ)会長でエイベックス会長の依田巽氏、社団法人日本映像ソフト協会(JVA)会長で角川書店会長兼CEOの角川歴彦氏、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)理事長の吉田茂氏の4人。
各パネリストが団体を代表して、それぞれの取り組みを解説した。JVAの角川歴彦会長は、「政府の知的財産戦略本部の役員に就任して以来、月に1回官邸で意見を述べてきた。推進計画が決まった時に、“戦後日本が重工長大な産業に偏った政策を続けていた中で、はじめてコンテンツに目を向けた画期的なことではないか”と述べた」、政府の方向付けが知財重視となったことを「最大限に歓迎したい」とした。 また、「外交というレベルで言うと、太平洋戦争以降、アジアの各国は日本の文化に対して門戸を閉ざしてきたが、最近はかなり開かれてきた。それらの国では日本文化が閉ざされてきた一方で、海賊版が横行している。今までは、文化の交流、文化外交だったが、これからはコンテンツ外交、著作権外交でなければならない」と話す。 さらにコンテンツ産業の伸びが国内ではとまっており、「千と千尋の神隠し」の大ヒットについても、「日陰に咲いた一輪の花」と表現。中国、韓国なども国家レベルでの支援を得て、各国が力をつけている中では、「個人の力に加え、国家のサポートをフルに生かした戦略が必要だ」とし、人材の育成などへのサポートの期待を語った。
RIAJの依田巽会長は、「経団連のエンターテインメント/コンテンツ部会の部長に就任したが、映画、音楽、アニメ、出版、放送などの各業界から40数社のトップが集まり、4回の会合を実施。以下の8つの提言を産業界として提案した」。
特にエンターテインメント専門の法律家の養成など、人材教育への期待を語り、エンターテインメントの勉強のために海外に出るのではなく、日本で学べるような、「やる気を誘発するような仕組みを作る必要がある」と述べた。また、今後30億人以上の市場となる、アジアマーケットについては、「日本にアジアのクリエーターが集まるようにしたい。単に集めるという作業論だけでなく、日本に魅力を感じてもらうという意味で、文化論としても必要なこと」と説明した。 RIAJで取り組んでいるCDのデータベース化に積極的に取り組んだ結果として、20万曲、9万以上のジャケットのデータベースを所有し、これを流通、販売店などで利用できるようにしている。「今後も積極的に取り組むが、予算が足りないので、総務省などにも更なる支援を期待したい」とした。 また、CD-Rへのコピーなどの被害は深刻で、「今後、新しいセキュアなメディアに移っていく必要があるだろう」とし、中国などで流通しているCDが、安価に逆輸入されている問題については、「日本販売禁止レコードの逆流防止措置ということで、関係省庁にも理解を求めている」という。
JASRACの吉田茂会長は、「昨年知的財産保護法が成立したが、われわれにとってはありがたい限り。また、推進計画ができて、厳しい状況にあるわが国の著作権管理者には、非常に大きな前進だと思う」と述べ、「今月に経団連から、“エンターテインメントコンテンツ産業の振興に向けて”という意見書が出たが、経団連からこうした意見が出るのは非常に大きな意味がある。非常に心強い」。 また、ブロードバンドコンテンツ配信におけるコンテンツ保護の仕組みが重要になる強調。データベースの重要性について言及し、映像/音楽などよりさまざまなメディアが融合した複雑なコンテンツの権利処理を、より容易にできるようにデータベースの整備に力を入れると説明した。
内閣官房 知的財産戦略推進事務局長の荒井寿光氏は、「政府としても、文化/芸術に関わる人に対しては、遠慮しているところがある」と切り出し、その理由として、「文化/芸術に関わる人は、“私はお金のことには関心ありませんという人”と思われている節がある。“お金には換えられない、崇高なことをやっているんだ”という雰囲気が伝わる」という。 そのため、「政府としても遠慮している節があるし、アメリカや中国、韓国などに政策で出遅れている。そういう空気があり、日本は空気の世界だから、これを変えていかなければいけないと思っている。これが日本人の才能の発揮できる“ジャパンドリームの場だ”という風になっていかなければならない」と述べた。 また、「個人の能力と、産業として発展していくということが両立するはず。だから、市場経済のメカニズムを回し、産業として動かして機能する部分を作らないといけない。例えば、コンテンツ産業では“流通促進”という言葉を使うが、これは普通は“販売促進”という意味だ。皆にわかるような言葉を使わなければいけないし、これでは投資家からの投資はもらえない」とコンテンツ産業の現状を分析した。 「こうした、空気、発想を変えていく必要があるし、そうでなければより厳しくなる国際競争から勝ち残れない」と述べ、契約が軽視されている風潮も問題視。「近代的な契約慣行をいれて、世界的な水準でやっていくべき」だとした。 その後、それぞれの声明を受けて、各氏がコメントした。角川氏は「映画産業では、ブロードバンドで映画を流すことについて非常に期待しているが、しかし同時に恐れてもいる」とし、ネットコンテンツの認証システムが必要と語った。 また、昨日ファイル共有ソフトの「Winny」で不正にコンテンツを公開していた人物が逮捕された問題について、日経新聞の記事を示し、「41才の容疑者が映画を不法にネットに流し、1人で2億3,000万円の被害を与えていたという。2億3,000万円といえば、中規模な映画の配給収入にあたる」とし、映画産業が受けているダメージを強調。映画業界の困難を「バケツの底に穴が空いているところで、映画を見る人たちを増やそうとがんばっているようなもの」と喩えた。 また、RIAJの依田会長は「既に構築積みのCDのデータベースに加え、音楽DVDのデータベースも構築中で、音と映像の融合が今後進むため、そうした状況に合わせた権利処理のシステムが必要となる」と将来の課題を説明した。 □JASRACのホームページ (2003年11月28日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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