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すっかり、International CES開幕前夜の顔として定着した感のある、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CSAの基調講演が、今年も1月7日(現地時間)にヒルトン・ホテル劇場内で開催された。
■ シームレス・コンピューティングを実現するためのMicrosoftの第1手「MCX」
Microsoftが提言する今年のキーワードは「シームレス・コンピューティング」。ゲイツ氏がこれまでたびたび引用してきた「デジタル時代」。今年はその実現化を本格化させていく…… という意味を込めて掲げたキーワードだという。 しかし、非常にありふれた言葉の組み合わせであり、なおかつ抽象的で雲を掴むようなイメージのキーワードだ。ゲイツ氏は、具体的には「たとえば、音楽、写真、動画の取り扱いが楽で誰もが自由に取り扱えること」とし、これを具現化するアイディアとして、今年Microsoftが提唱するのが「Microsoft Windows Media Center Extender」(以下MCX)と切り出した。
MCXはWindows XPベースのテレビパソコンとしてリリースされている「Windows XP Media Center Edition」(MCE)の機能を取り込んだ、PCの周辺機器にあたる製品。 これまで、MCEパソコンで取り扱っていた音声、映像コンテンツは「PC間で共有できるデータ」ではあったが、家電製品からは切り離されたスタイルで、AVコンテンツの活用体系が形成されていた。MCXはPCネットワークと家電ネットワークの「橋渡し」的な役割を担当する。 仕事部屋や書斎にMCEパソコンがあり、これが家庭内LANに接続されているとする。 そしてリビングルームには大画面テレビがあって、MCXのビデオ出力端子とそのテレビを接続。さらにMCXを家庭内LANに接続する。LANは有線でも無線でもかまわない。これでそのテレビから、リモコンを操作するだけでMCEパソコン内部の静止画、楽曲、動画などのAVコンテンツが自在に楽しめるようになるのだ。
■ XboxをMCX対応にする計画も発表
いってみれば、MCXは、MCEパソコンを、「より家電的に」ホームAVサーバーとして活用する新手段として提供されるわけだ。 セットトップボックスのような単体ボックスタイプのMCXは丁度ルータ程度の大きさであり、置き場所には困らない。また、MCX機能自体を大画面テレビ機器側に組み込んだMCX内蔵型テレビ製品も企画されており、そのプロトタイプも公開された。
センセーショナルだったのが、Microsoftのゲーム機XboxをMCXに変身させるキットのリリースがアナウンスされたことだ。発売時期、導入方式、価格などは今回の講演内では一切明らかにされなかったが、実際にXboxの映像出力からMCEのメニュー画面をテレビに表示し、基本的な操作を行なって見せた。 以前から、Xboxは「ゲーム機として各家庭に入り込み、最終的にはAV家電として活動を開始し、家庭内のMS化活動の一端を支えることが前提としたトロイの木馬だ」という説があった。ついにここにきて、それが具体性を帯びた……、といったところだろうか。
■ Portable Media Centerの発表
もうひとつ、その「架け橋」的なコンセプトを持つ製品として非常にユニークな製品が紹介された。 それが「Portable Media Center」(PMC)であり、読んで字のごとく、携帯型Media Centerともいうべき製品だ。PMCは、昨年のゲイツ氏の基調講演で発表されたコードネーム「Media2Go」の正式名称。 MCEパソコンが管理するAVコンテンツを引き出す形で、PMCへ転送、これを持ち歩きながら楽しむことができる。ハードウェア自体は、カラーTFT液晶パネルとHDDを組み合わせたポータブルAVプレイヤーといったイメージだ。 PMCへのコンテンツ転送にはUSB 2.0が利用され、SmartSyncと呼ばれるソフトウェアを利用して、MCEパソコン側のコンテンツとPMC側のコンテンツとの同期を取ることもできる。PMCで再生可能なメディアの種類は静止画がJPEG、TIFF、音声がMP3、WMA(Lossless対応)、動画はWMV7/8/9となっている。なお、MPEG-1/2はサポートしない。 本体側には拡張メモリスロットは無く、さらにUSB 2.0でPCと接続した場合も「あえて」ストレージデバイスとして見えなくしているという。つまり、PMC側を友人のPCに接続して、PMC側のコンテンツを友人のPCへ移すような、交換行為を行なえなくしているわけだ。使い方は、良くいえばシンプルに、悪くいえば限定的になっている。
また、本体にはAVエンコーダDSPチップなどを一切内蔵していないため、ビデオデッキやDVカメラの映像をPMCへWMVとして取り込んだりするような活用も行なえない。一方、動画の再生は、PMCに内蔵されたCPU(Intel XScale)のみで行なう。あくまで、MCEパソコン側のAVコンテンツを持ち出して楽しむというコンセプトを貫いている。 バッテリ駆動時間については、動画の再生で連続3~4時間、音声の再生で連続10~12時間程度とのこと。価格は399~699ドルの範囲で、発売は2004年後半を予定している。 なお、PMCは、MCEパソコンではなく、一般的なWindows XPベースのPCと組み合わせて活用することも可能。その場合のAVコンテンツ管理もやはりSmartSyncが行なうことになる。さらに一点補足しておくと、このSmartSync機能は、次期Windows Media Playerに統合される予定と話していた。 □関連記事 【2003年10月29日】Microsoft、HDDプレーヤー「Media2Go」の正式名称を決定 -リリース時期は2004年末に延期 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031029/ms.htm
■ 大いなるデジタル時代の海へ 「これから湯水のように溢れかえるだろう様々なデジタルメディアを、ユーザーにとって使いやすく、あるいは“作り出しやすい”世界を実現していくことが、我々Microsoftのようなソフトウェア会社やハードウェア企業に課せられた使命。そうした一連の活動全体が、これから成熟化していくだろうデジタル時代の歴史を紡いでいくことになるのだ」
ゲイツ氏は講演の最後をこう締めくくった。 コンピュータを使いやすくする。これはMicrosoft創業時からのゲイツ氏の信条である。これを実現するためのMicrosoftの主力技術がWindowsであることは今更説明するまでもないだろう。この部分についてのMicrosoftの進化が止むことはないだろうが、ここにきてMicrosoftは、自らが指揮を執り、PC業界全体を1つ上の次元へ向けて歩み出させようとしている節が伺える。 やっと、「使いやすいコンピュータ」で「何をしていくのか」という命題に取り組み始めたというわけだ。 この命題に対する一つの道としてゲイツ氏が掲げだしたのが「シームレス・コンピューティング」というキーワードであり、現時点では「コンピュータと家電の融合」ということになるのだろう。 Microsoftが言い出すと、新しいコンセプトのような気がしてくるが、日本の大手家電メーカーは随分前から当たり前のように取り組んでいるし、最近では、IntelやDELLといったコンピュータ業界の大手企業までが、そうした動きを見せ始めている。 リーダーシップを取っているように見えるゲイツ氏率いるMicrosoftも、彼がいうところの「デジタル時代」というマーケットに置いては、フォロワーに過ぎないのではないだろうか。 □2004 International CESのホームページ (2004年1月8日)
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