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エプソン、世界最大の40型有機ELディスプレイを開発
-2007年の製品化を目指す。5月末にはリアプロを国内発表


5月18日発表


 セイコーエプソン株式会社は18日、世界最大の40型フルカラー有機ELディスプレイを開発したと発表した。

 エプソンでは、プリンタで利用する独自のインクジェット技術を応用し、大型TFT基板に対応した有機層成膜のインクジェットプロセスを開発。大型基板に有機層をインクジェット技術で一括形成することで、世界最大サイズの有機ELディスプレイを実現した。同社では、これらの技術を利用した有機ELディスプレイを2007年の商品化を目指して開発を進めていくという。

 試作機は解像度が1,280×768ドットで、駆動方式はアクティブ・マトリクス方式、色数は26万色。精細度は38ppi。4枚のパネル張り合わせで40型とし、その上に一括してインクジェットで有機ELの材料を塗布している。

4枚のパネルを張り合わせて40型を実現している 奥行きは非常に短い

花岡清二 代表取締役副社長

 発表会では同社代表取締役副社長(CTO)の花岡清二氏が、エプソンのディスプレイ戦略と有機ELディスプレイの位置づけについて解説した。液晶については、三洋との合弁会社三洋エプソンイメージングデバイスで、主に中小型ディスプレイ事業を積極展開する。

 一方、プロジェクタ向けなどの高温ポリシリコン液晶は、「フロントプロジェクタやリアプロジェクションテレビ向けに自社で開発を進めている」とし、「今月末に国内でもリアプロジェクションテレビを発表し、テレビ市場に参入する」とした。

 有機ELについては、「長年開発してきたが、モバイル機器向けの小型ディスプレイから、40型のデジタルテレビまでを有機ELで展開。それ以上のサイズはリアプロジェクションでカバーしていく」という。有機ELを投入する具体的な製品例としては、携帯電話のほか、PDA、フォトビューワ、薄型テレビなどを見込んでいる。

有機ELは40型までの薄型テレビで採用 エプソンのディスプレイ事業戦略

飯野聖一 OLED技術開発本部長

 飯野聖一 OLED技術開発本部長は、同社の有機EL開発戦略について説明した。まず、有機ELの最大の特徴として「綺麗」なことを挙げ、さらに高コントラスト、低消費電力、薄型軽量、高視野角、高速応答性などの有機ELの特徴を解説した。

 「これらの特徴を最大に生かせるのは、映像メディアを流すテレビになる」。有機ELの開発ターゲットがテレビになることを強調した。同社が有機ELで目指す市場は、薄型テレビなどの「リビング・エンターテインメント」、パーソナルテレビやインターネットビューワなどの「デスクトップ・エンターテインメント」、モバイルテレビや車載機器、携帯電話/PDAなどの「モバイル・エンターテインメント」の3領域とし、「特にモバイルの立ち上がりは早い」という。

 今後の技術開発方向としては、寿命や大型/高精細化が挙げられた。寿命については現在の試作機で1,000~2,000時間で、最新の材料を利用することで5,000~1万時間の程度の寿命を近く達成できる見込み。2007年にはテレビ用途でも製品投入が見込めるという。目標とする数値については、「PDPの立ち上がり時期にならって、1万時間をひとつの目標」とした。

 今回の試作機では高分子材料を採用し、駆動方式には低温ポリシリコンを、成膜技術にはエプソン独自のインクジェット技術を採用している。駆動方式はアモルファスTFTでも応用でき、アプリケーションにより柔軟に対応できるという。

有機ELは40型までの薄型テレビで採用 エプソンのディスプレイ事業戦略

インクジェット技術についての解説

 今回の試作機の最大の特徴である、エプソン独自のインクジェット技術(マイクロピエゾヘッド技術)は、非加熱方式の技術のためインクジェットプリンタヘッドの応用が容易。また、1,200×820mmの大面積パターニングや、2,880dpiの高精細パターニングが可能。さらに、発光材料を必要な画素だけに吐出できるため、発光材料を有効に利用できるという。

 なお、今回は40型大画面テレビを発表したが、2007年の製品投入時には、どのようなサイズで市場参入するかは未定。また、市場投入時の液晶との価格競合については、「液晶の歩留まりは2007年頃にはかなり向上すると思うが、基板や周辺デバイスなどは共通で、さらに有機ELではバックライトなどの周辺部材が少なくてすむので、価格的に戦えると思う(飯野本部長)」と話す。

 また、エプソンブランドで有機ELを用いたテレビを投入するほか、「他社への供給も視野に入れている(花岡副社長)」という。「テレビメーカーを目指すのか?」との質問には、「PCサイドから事業が立ち上がっていることもあり、デジタル、PC系からのアプローチになる。大手AVメーカーの向こうを張るつもりはない。エプソンらしいアプローチを目指す(花岡副社長)」と回答した。

 投資金額や目標とする事業規模については未定としており、液晶で協業している三洋との有機EL分野での協力については、「三洋は低分子の有機ELをKodakとやっている。有機ELについては、協力関係を築くことは考えていない」とした。

□エプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040518.htm
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-シャープが外販用45V型パネルモジュールを展示
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040408/edex.htm
【3月24日】エプソンと三洋、液晶事業を統合(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0324/epson.htm

(2004年5月18日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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