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株式会社ディーアンドエムホールディングスのブランドカンパニー、日本マランツ株式会社は17日、鹿島建設株式会社と英サウサンプトン大学音響技術研究所が共同開発した立体音響技術「OPSODIS(オプソーディス)」の製品化権を取得。共同開発プロジェクトを立ち上げたと発表した。
OPSODISは、「Optimal Source Distribution Technology」の略で、視聴者の前方に数個のスピーカーを配置するだけで、視聴者の左右や後方、上下を含む360度の立体音響を創出できるというバーチャルサラウンド技術。
専用のプロセッサと特殊なスピーカーセッティングを併用し、視聴者の耳に理想的な音波を送るというもので、反射音を利用せずに明確な音場が創造できるという。そのため、スピーカー側面の壁の有無や、視聴者後方の壁の有無など、環境に左右されないバーチャルサラウンドを実現したとしている。 デモとして用意されたシステムは、B&Wのスピーカー、ノーチラス801のツイータ、ミッドレンジ、ウーファ2台分をそれぞれ分離したもの。視聴者の前面に狭い間隔でツイータが並べられ、その少し離れた場所にミッドレンジを設置。ウーファは視聴者の左右90度に置かれている。なお、音源は6個になるが、ソースはバイノーラル録音した2ch音源が使用された。
一見特殊なセッティングに見えるが、各周波数の音が互いに打ち消し合わず、視聴者の耳に届いた時点でフラットになるための配置。音は周波数によって伝わり方が違うため、それぞれの帯域に理想的な音源間隔(位置)があるという。 なお、各ユニットの間隔は音源と視聴者の距離が関係しているため、部屋が狭く、視聴者と音源が近ければ、間隔も狭く、結果的にコンパクトなバーチャルサラウンド製品が作れるとしている。
この技術は鹿島技術研究所の武内隆主任研究員と、サウサンプトン大学音響技術研究所のP.A.ネルソン教授の音響理論に基づいたもので、一般のバーチャルサラウンド技術と比べ、反射音の利用や音の改造が少ないため、音質の低下が少なく、能率の良いサラウンドシステムが実現できるという。そのため、マランツは「シアターサラウンドだけでなく、ピュアオーディオ部門にも積極的に投入していきたい」としている。 また、配置の法則さえ守れば、安価なスピーカーでも効果を実現できるため、「これまでハイエンドシステムでしか再現できなかった広大な音場を、ミニコンポ程度の製品に気軽に投入できる」(マランツ)という。
■2005年6月には対応製品を
マランツの後藤正男社長は「現在のホームシアターは、音の包囲感という面では一定のレベルにある。しかし、例えばコンサート録音などでは、拍手や声など、周囲の観客の気配が身近に感じられず、視聴者を遠巻きにしているような違和感があった」と、昨今のマルチチャンネルサラウンドの欠点を表現。
そのうえで「OPSODISはスピーカーを設置した物理的な位置に関わらず、身近な人の気配から遠くの人の叫び声まで、明確な定位で前後の距離も再現できる」という。さらに「前方に置いたスピーカーだけで実現できるのでリスニングポイントが広く、家族4人が全員、手軽にサラウンド効果を得られるだろう」と魅力を語った。
なお、後藤社長によれば同技術を採用した機器は、2005年6月頃に販売予定。商品形態などはまだ未定だが「ドルビーデジタルなど、DVDビデオのサラウンドにも対応できるため、手軽にDVDサラウンドが楽しめるシアターシステムを想定している」と語る。さらに、前方に設置するスピーカーは、2ウェイでも3ウェイでも構わない。現段階では、バラバラに配置したツイータとミッドレンジを1個の筐体にまとめた、横長のシステムを考えている」という。 前方に設置するスピーカーの間隔や、ウーファの設置角度などは、視聴者との距離に関係しているため、「六畳間での使用を想定した製品なら、横長といってもテレビの下に入れられる、肩幅くらいの短いケースに収まるはず。サブウーファ設置の自由度も高いので様々な製品形態に対応できる」とのこと。 さらに、後藤社長は今後の展開として「この技術をチップに落とし込んで外販し、広く普及させたい」と語った。
鹿島建設の岩松良彦副社長はOPSODISを「異業種の先端技術の組み合わせ」と表現。 「もともとホールなどの建設時に音響設計用のシミュレータとして、鹿島建設とサウサンプトン大学が製作したもの。その成果を建設市場だけに終わらず、一般市場へ新事業として展開していくのは素晴らしいこと。今回マランツと協力して送り出す製品は、建設業の技術が一般に販売される代表的な事例となるだろう」と語った。
(2004年9月17日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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