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ソニーのフラッグシップNCヘッドフォン
ノイズキャンセル効果は最強だが……
ソニー 「MDR-NC50」
発売日:12月1日
標準価格:オープンプライス
実売価格:19,800円


■ QuietComfort2に強敵現る?

PXC250との比較

 いままでAV Watchでは、各種ノイズキャンセリングヘッドフォンを紹介してきたがが、今回取り上げるのはソニーの“フラッグシップ”ノイズキャンセルヘッドフォン「MDR-NC50」。

 密閉型のノイズキャンセルヘッドフォンで、40mm口径ドライバユニットを採用。低音域の再生能力を向上させ、より低い周波数の騒音に対しても逆位相の音を出しノイズキャンセリングが可能になったという。

 ノイズキャンセル機構は、ノイズ検出マイクをヘッドフォンのハウジング内側に設置。キャンセルするノイズの集音精度を高め、ノイズキャンセリング効果を向上させている。さらに、耳覆い型密閉構造を採用するなどで、ノイズキャンセリング性能がMDR-NC6/NC11Aの1/3から1/5に向上しているという。価格は実売で約19,800円とやや高めだが、BOSEの約4万円の高級NCヘッドフォン「QuietComfort 2」(QC2)と比較すれば割安ともいえる。

 よく見ると、本体のデザインやキャリングケースの形状などはQC2に似ており、QC2を意識して開発したことが伺える。また、実売2万円という価格はこのレンジでは定評のあるSennheiserの「PXC 250」と競合する価格だ。ソニーが本気で取り組むノイズキャンセルヘッドフォンの実力を検証した。



■ NC回路や電池を本体に内蔵。質感は高い

パッケージ

 パッケージ内容は、ヘッドフォン本体のほか、延長ケーブル、ステレオ標準変換プラグ、航空機内オーディオ対応のデュアルプラグ、キャリングケースなど。キャリングケースはQC2の付属品と良く似たデザインで、本体やヘッドフォンケーブルなどの同梱品が収納できる。

 ヘッドフォン部は密閉ダイナミック型で、ユニット径は40mm。電源は単4乾電池で右ハウジングの上部に電池を収納できる。ノイズキャンセルのON/OFFスイッチも右ハウジングに備えている。

 左ハウジングにはステレオミニのヘッドフォン入力を装備。また、再生中の音をミュートして、マイクで拾った相手の声を聞くことができる「モニター機能スイッチ」も装備している。

 ハウジング部がミラー仕上げとなっているほか、ヘッドバンドの大きなSONYロゴのプリントなど、QC2と比較するとやや派手で、若者向けのデザインを狙っているように感じられる。しかし、ヘッドバンドやイヤーパッドの素材のソフト肌触りなど、本体の質感は2万円のヘッドフォンらしい高級感がある。

ハウジングはミラー仕上げを施している ヘッドバンド上にSONYの文字をプリント 右ハウジングに単4電池を内蔵
右ハウジングに電源ボタンを装備する 左ハウジングにステレオミニのヘッドフォン入力やモニタースイッチを備えている 同梱品
キャリングポーチに付属品を入れて持ち歩ける


■ ノイズキャンセル効果は最強も、音質は今一歩

装着例

 早速装着してみると、重量は270gでQC2の170gと比較してもかなり重いが、重量バランスが良く、しっかりとフィットして安心感と適度なホールド感がある。イヤーパッドのソフトな感触が心地よい。側圧がやや強めで、最初は少し違和感があったが、慣れればほとんど気にならない。

 ノイズキャンセルのON/OFFは右ハウジングのスイッチで行なう。自動パワーオフ機能は備えていないので、使い終わったらOFFに戻しておく必要がある。まずはiPodと接続して、NC OFFで音楽を聞いた。ちなみに、QC2では電源OFFでは音楽を聴くことができないのがもどかしかったが、MDR-NC50ではNC OFFでも普通のヘッドフォンとして利用できる。

 大口径のヘッドフォンにしては音場がさほど広くなく、低域のボリュームと情報量に乏しい。高域のヌケも余りよくない。基本的にNC ONで聞くことを想定されていると考慮しても、見た目の質感から受ける印象に比べると、やや期待はずれ。再生周波数帯域14~22,000Hzとなっているが、聴感上はそうした再生音域の広さは感じられない。


イヤーパッドはソフトな肌触り。ハウジング内にマイクを装備する

 、インピーダンスは40Ω(電源ON時/1kHz)/100Ω(電源OFF時/1kHz)と高い。ノイズキャンセルヘッドフォンに共通していえることだが、プレーヤーの音量を通常のヘッドフォンより上げないと再生音量も少し寂しい。

 MDR-NC50のノイズキャンセル機構は、仕組み的には従来の製品と同様だが、マイクをハウジング内に装備したほか、ノイズ検出領域を、従来モデルより広く人が耳障りに感じやすいとされる40~1,500Hzの低周波帯域に広げることで、ノイズキャンセル効果を高めたという。

 NCをONにすると大幅に低域の迫力が増し、音像が目の前に持ち上がる。ボーカルがセンターに定位し、聞きやすさがぐっと向上する。音場は狭まるが、迫力はNC ONのほうが遥かに上になる。ただ、NC効果が強すぎるせいか、若干リバーブがかった独自の音場になり、ソースの忠実な再現という意味では今一歩だ。

 特に、ウッドベースやバスドラなどの低域については、不自然な共鳴に感じる短いディレイが加わってしまうことがある。また、倍音成分の多いアコースティック楽器でも、不自然な共鳴が付帯され、聞きなれたソースだとかなり違和感があった。

 音質的には外見のしっかりとした印象から比べるとやや不満が残ったが、それでも同社の「MDR-NC6」のチープな音に比べると、どっしりとした低域の量感などは上回っている。ただし、NC6の実売6,000円に比べて3倍以上の価格の製品なので、もう少しがんばって欲しかったというのが正直な感想だ。音質だけ見れば、ほぼ同価格帯のSenheiser PXC 250のほうがバランスが良い。NC ON/OFF時の音質変化も少なく、ソースを選ばず利用できる。

 しかし、MDR-NC50を電車内で利用してみると、ノイズキャンセル効果の高さに驚かされた。密閉型のため、NC OFFでも外部音をかなり遮蔽するが、NCをONにすると地下鉄内でもレールノイズと、それに付随する非連続的なノイズや車体の軋む音が聞こえる程度。空調のファンノイズはまるで聞こえず、音楽をかけていれば隣の乗客の話し声さえ、ほとんど気にならない。

 密閉型のQC2を含め、今までのNCヘッドフォンは、隣の人の話し声程度は拾えていた。しかし、iPodのボリューム70%ぐらいで音楽を聞いていると、隣で普通の音量で話している人の声はほとんど聞こえない。音楽を切っても、集中しないと何を言っているかわからないほど遮音/NC効果は高い。その一方で、車内アナウンスはきちんと聞き取ることができた。従来のNCヘッドフォンと比較しても、一番NC効果が高いと感じた。

 特にレールノイズの少ない新幹線ではノイズキャンセルの効果が大きい。前述のように、音楽再生についてはさほどクオリティが高くないが、NC ONだとセンター定位がしっかりするので、映画のセリフはかなり聞きやすくなる。PSPで映画を見ながら大阪-新東京を往復したが、映画視聴においては音のクオリティもあまり気にならず、聞き取りやすさも充分だった。

 ただし、逆相成分が強いためか、NC ONにした時に少し耳に違和感を感じることがあった。また、遮蔽性が高いので、人に話しかけられても何を言われているのか、良くわからない。そうした時のためにモニターボタンを備えており、押している間は再生中の音をミュートして、マイクで拾った相手の声を聞くことができるので、なかなか重宝する。

 歩きながらの利用では、ケーブルの擦れる音などは拾わない。しかし、自分が歩いた時の振動にあわせてノイズがのってしまう。もっとも、これだけ遮音性の高いヘッドフォンを付けて外を歩き回ること自体が危険なので、飛行機や新幹線などの長距離移動用と考えたほうがよさそうだ。

 バッテリ駆動時間はカタログ値で約30時間(アルカリ電池)/約15時間(マンガン電池)。アルカリ電池で15時間ほど利用してみたが、ノイズキャンセル効果の低下などは特に感じられない。


■ 最上のNC性能を求める人に

 電原やNCユニットを本体に内蔵、キャリングポーチを含めた使いやすさは非常に高い。価格的に直接の競合となるPXC250では、ヘッドフォンのほかに電源/NCユニットの取り回しを考えなければいけないことを考えると、取り回しの容易さではMDR-NC50が勝っている。

 また、NC効果も競合製品より強力で、より静かな環境を求める人には最適だろう。ただし、音質的にはPXC250やQC2の方が上で、ノイズキャンセル時の音質変化も少ない(QC2はそもそもNC ONでしか利用できないが)。どちらかというと、音楽より映画の音声をしっかり聞かせることにフォーカスしたのかもしれないが、もう少しがんばって欲しかった。

 最適な利用形態としては、飛行機や新幹線などの長距離移動用だろう。遮音性の高さを生かして快適に利用することができるし、音楽や映画の音声を止めて就寝用に使っていいだろう。とにかく最上のNC性能を求める人向けのヘッドフォンといえそうだ。

 ただし、NC効果が高いため耳の疲れを感じることもある。できれば店頭などで試聴してから購入を検討するのが望ましいが、販売店舗も多くないので難しいかもしれない。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200410/10-1027/
□製品情報
http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=18588&KM=MDR-NC50
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010612/saki17.htm

(2004年12月17日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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