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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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松下電器産業株式会社は4日、2004年度第3四半期連結決算を発表した。 売上高は、前年同期比13%増の2兆2,965億円、営業利益は24%増の883億円、税引前利益は1億円増加の831億円、当期純利益は47%増の356億円で増収増益となった。国内の売上高は28%増の1兆1,890億円、海外は1%増の1兆1,075億円。
また、第3四半期までの9カ月間の累計では、売上高は17%増の6兆6,151億円、営業利益は62%増の2,446億円、税引前利益は57%増の2,204億円、当期純利益は94%増の917億円となった。
部門別では、AVCネットワークが前年同期比3%減の1兆410億円、営業利益が23%減の257億円と減収減益。PDPテレビやデジタルカメラ、FAXなどが好調に推移したものの、携帯電話事業の低迷が大きく響いたほか、オーディオ事業の不振も減益要素となった。川上徹也取締役専務は「営業利益率は2.5%と落ち込んだが、携帯電話を除けば、3.5%の利益率になる」とし、携帯電話事業の建て直しが急務であることを訴えた。
携帯電話事業は、欧州市場での新製品投入の遅れが響いたほか、中国において市場全体で3,500万台にのぼる流通在庫があり、松下電器でも約70万台の流通在庫の削減に取り組まざるを得なかったこと、価格競争の影響を受けたことなどが悪化の要因となっている。だが、中国での在庫処分が期末にかけて進むこと、国内で発売したP901iが好調な出足を見せるなどの効果が出ており、今後改善が図れるとしている。
主要ドメイン会社別に見ると、パナソニックAVCネットワークス社はPDPテレビ、デジカメ、パソコンの増販によって、売上高で7%増の3,702億円、営業利益は4%増の105億円と増収増益。一方、携帯電話事業を担当しているパナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)が、売上高が24%減の1,244億円、営業利益はマイナス64億円の赤字となっている。 家電製品のアプライアンスは、10%増の3,438億円、営業利益は8%増の216億円。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、コンプレッサーなどの新製品が好調に売れ、2桁の増収を支えた。 デバイスは、売上高が18%減の3,562億円、営業利益が33%減の91億円の減収減益。電子部品などの好調が押し上げ要因となったものの、携帯電話向けやパソコン向けの減少が響いた半導体が低迷し、当初の計画から大幅に出荷が減少したのがマイナスにつながった。
川上取締役専務は「デバイス事業のマイナスは、松下電器社製デジタル家電向けの出荷が減少したことだけが要因ではない」とした。一方、松下電工・パナホームは、売上高が3,908億円、営業利益が203億円。昨日決算が発表されている日本ビクターは、売上高が9%減の2,134億円、営業利益が28%減の72億円となった。
■ V商品は堅調、「勝ち組は価値のある商品で勝つ」
V商品に関しては、第3四半期までの9カ月累計で、前年同期比10%増となる1兆440億円を売り上げた。
川上取締役専務は、「この4年間でPDPテレビは年率18%ずつ価格が下落、DVDレコーダは21%、デジタルカメラは24%下落している。第3四半期だけをとっても、PDPテレビとDVDレコーダはいずれも20%の価格下落となっている。とくに海外のDVDレコーダは米国を中心に35%も値下がりした。その中で、松下はV商品による付加価値戦略をとっている。PDPテレビを例にとれば、マネジメントとしての価格下落の影響は10%程度で、商品構成を大型化に再編することで一般市場の価格下落分を吸収している。デジカメもFX7というヒット商品の創出によって、価格は下落していない」と説明。 さらに「DVDレコーダは乱戦によって、厳しいが、ここもアセンブリをするだけでなく、DVDカーナビやパソコン用ドライブ、DVDレコーダ用システムLSIなど、DVDに関わる事業の裾野を広げることで強みを発揮している。デジタル時代は垂直統合でないと勝てないことを示した」などとした。 また、「社長の中村は、“勝ち組は、価値によって勝つ”と言っており、バリューのある商品を投入することが当社の神髄である」と話す。 さらに、今回の会見では、国内において、かつてナショナルショップと呼ばれた「スーパープロショップ」による専門店ルートが好調な販売実績をあげていることに触れ、「専門店では、業界全体はほぼ前年並みであったのに対して、5,000店舗を超えるスーパープロショップのうち、約6割が2桁成長となっている。また、国内のPDPテレビ販売の約6割が専門店ルートによるもの。結果として、前年同期比比7%増となっており、一時は重荷になると言われていた専門店が、デジタルの時代になり、強力な武器になり、復活しつつある」とした。 国内の量販店では、業界全体が3%増であるのに対して、同分野における松下電器製品の伸び率は12%増で、同社が提案している薄型テレビの調光比較展示の徹底や、冷蔵庫や斜めドラム式洗濯機の垂直立ち上げの成功などが影響しているという。
■ 2004年度の営業利益予測を上方修正
同社は、これらの状況や第3四半期の増収増益の結果を受けて、2004年度の通期連結決算見通しを修正した。 売上高は8兆8,000億円と当初の計画通りだが、国内は200億円増加に対して、海外は200億円の下方修正。しかし、先日の発表で日立製作所が売上高見通しを下方修正したため、この計画通りならば、国内最大規模の電機メーカーとなる。
営業利益は、200億円増加の3,000億円と上方修正。原材料のコストアップや価格低下といったマイナス要因があるが、合理化策で3,050億円、固定費の削減効果で1,015億円、売り上げ増で200億円、松下電工・パナホームの増加分の600億円の押し上げ効果で、通期3,000億円の営業利益を目指すという。
■ PDP事業への取り組みに時間を割いて言及 一方、今回の会見では、川上取締役専務が、質疑応答の時間に、わざわざ時間を割いて説明したのがPDP事業の現状。また、全社規模の大規模構造改革が終了し、今後はドメインごとの構造改革を推進することを強調したことも、今回の会見でのトピックスといえた。 PDPに関しては、「当社の経営資源の多くを投入しており、継続的にAVデジタルの柱として取り組んでいく。PDPをパワフル・デジタル・プロフィットと呼びたい」とした上で、「PDPは、37インチ以上の薄型大型テレビにおいて、93%程度の比重を占めており、スポーツ番組などの動きの速い映像に対応でき、色再現性が高く、高視野角であることなどが評価を得ている。消費電力が大きい点がデメリットとされているが、フレキシブルな光量の調整が可能であることから、この点でも今年中には液晶と横並びになり、2006年には完全に勝つと思っている」とした。 PDPテレビの構成比率に関しては、「2004年には台数で8%、金額で25%であるものが、2006年には台数で20%、金額で40%を占める。また、2004年には270万台の規模が、2006年には700万台になる。地域別には、米国では94万台から222万台に、日本では42万台から99万台に、中国では28万台から121万台に、欧州では82万台から198万台というように、いずれの地域においても成長率は5割以上となる」と予測。 さらに「37型以上の薄型テレビでは、2007年でも90%以上がPDPになる。日本ではLCDが2割を占めており、これは続くことになるだろうが、北米、欧州、中国のいずれも圧倒的にPDPが強い」と、今後の成長予測を披露。「松下電器では、2004年には108万台、2005年度中には尼崎工場の稼働によって330万台、2006年度中には年間480万台、月産40万台の体制とし、全世界で4割のシェアを目指す。尼崎工場では現在の3面取りから、6面取りとして生産することから、製造固定費を茨木第1工場と比較して28%にまで削減できる。早期に尼崎工場を立ち上げて、2005年以降は年平均25%以上のコストダウンを実現したい。とはいえ、パネルそのものがテレビ全体に占める材料費構成比はわずか2割で、機構、チューナー、回路といった垂直統合の強みを発揮することが他社との差異化につながる」とした。 ここにきて、市場では「液晶優位」の声が聞かれるが、大画面テレビにおいては、PDPが優位であることを改めて訴えた点に、この分野にかける松下電器の強い意志が伝わったといえそうだ。
■ 「大規模構造改革は終了」宣言 構造改革については、デジタル家電分野において、1,000人規模のリストラを発表したことに関する質問があったが、「グローバルのデジタルメガ競争のなかで、どんな状況にあろうとも、立ち止まってしまったら負けだ。まだ、日本における生産性が悪いと考えており、これを限りなく改善し、コスト意識を全社に徹底したい。しかし、大規模な構造改革はこれで終わりで、あとは、米国などのCRTブラウン管の拠点で赤字が出ないようにするといった構造改革程度だろう」と説明。 来期からは「構造改革の常態化に向けて、ドメインごとの構造改革を加速することになる。中村社長の就任以来、これまでの4年間に、これだけの構造改革をやってこなかったら、松下電器は潰れていただろう。構造改革は辛いが、続けていかなくてはならない」と話した。 なお、同社では、今年度のドメインごとの構造改革特別費用として、約600億円を積み増し、1,400億円とした。AVCネットワークでは、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、パナソニックコミュニケーションズ、松下寿の構造改革費用で300億円増加し約530億円としたほか、デバイスでは松下電子部品や米国での事業再編などに伴い、300億円増加の約790億円とした。また、アプライアンスは従来通りの80億円としている。 なお、ジャストシステムとの特許に関する訴訟に関しては、「当社が知財立社を目指していることには変化がない。だが、ジャストシステムとの訴訟に関しては、係争中のことでありコメントを差し控えたい」とした。
□松下のホームページ (2005年2月4日) [Reported by 大河原克行]
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