◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
東京高裁、P2Pソフト「ファイルローグ」の控訴を棄却
-「Winnyを使った違法ユーザーへの訴訟も行なう」


3月31日発表


 東京高等裁判所は31日、インターネットを使ったファイル交換サービス「ファイルローグ」を運営していた有限会社日本エム・エム・オー(日本MMO)に対し、音楽ファイル送信の差し止めと、同社、およびその代表者である松田道人氏に対して著作権侵害による損害賠償金の支払いを命じた東京地方裁判所の判決を支持。日本MMOと松田氏の控訴を棄却した。

 これにより、日本MMOと松田氏は、訴訟を起こした日本音楽著作権協会(JASRAC)に3,000万円、日本レコード協会(RIAJ)に約3,689万円の損害賠償を支払うことになる。

 この訴訟は、2002年2月にJASRACと、RIAJの会員19社がそれぞれ東京地裁に提起していたもの。2001年11月1日に日本MMOが開始したファイル交換サービス「ファイルローグ」が、音楽CDから作成されたMP3ファイルを、ユーザー同士が違法に交換している状況に対して必要な処置を講じず、著作権を侵害しているとしてファイルの送受信停止と、著作権侵害による損害賠償を求めていた。

 これに対して東京地裁は、2003年4月に日本MMOに対してファイルの送受信停止を命ずる仮処分を下し、同月中にサービスは停止。さらに、2003年1月の中間判決では日本MMOが著作権侵害の主体であり、同社および松田氏に損害賠償責任があるとの判断を示した。そして、2003年12月の終局判決で中間判決の判断を再度認め、具体的な損害賠償額を示した。これに対し、日本MMOと松田氏は判決を不服とし、2003年12月26日に控訴していた。

 ファイルローグは、ユーザー同士がインターネットを通してファイルを直接送受信するP2P(Peer to Peer)アプリケーションの1種。P2Pソフトは、個別のPCに保存された情報の管理や検索などを行なう中央サーバーのあるタイプと、中央サーバーのないタイプに大別でき、ファイルローグは前者に属する。

 裁判の争点として注目されたのは、日本MMOが音楽著作物の権利侵害の主体となるか否かという点と、日本MMOに対する損害賠償請求の額が正当なものであるかという2点。

 今回は控訴が棄却されたということで、東京地裁の判決から新しく追加された情報は少ないが、判決文は「違法な利用があり得るだけでなく、ファイルローグは違法な著作権侵害行為を惹起するもの。日本MMOはそのことを予想しながらもサービスを提供し、侵害行為を誘発。自らコントロール可能な行為により侵害の結果を招いている者として、その責任を問わることは当然」としており、日本MMOを侵害の主体として認めている。

田中豊弁護士

 これについてJASRAC側の弁護士である田中豊氏は「日本MMOが侵害の主体と高裁の知的財産部でも判断されたことは、非常に重みのあること。権利者にとって重要な判決というだけでなく、インターネット上で適法な流通システムを構築しようと努力している人達にとっても、大きなインセンティブを与えるものだ。内容が正しいだけでなく、ビジネスの観点から見ても適切なものだと考えている」と、語った。

 さらにRIAJの弁護士を務めた前田哲男氏は、日本MMOがプロバイダ責任制限法の免責規定が適用されると主張していたことに触れ「同社はファイルローグで経済的利益を上げており、高裁が免責規定が適用されないと判断したことを支持する」と述べた。

前田哲男弁護士

 損害賠償請求の額については、当初JASRACは有利用音楽配信の楽曲使用料を形式的に適用し、ファイルローグがサービスを行なっていた4カ月分の金額を計算。2億1,433万円とし、RIAJは1億5,100万円としていた。

 結果的に賠償額は大幅に減ったことになるが、これについて田中弁護士は「当時の通信環境は現在のそれと大きく異なるため、認定された金額になった。今の通信環境では被害額はさらに大きくなったかもしれない。ともかく、我々の合理性は認定されたと考えている」と語った。


■ Winnyなど、中央サーバーのないタイプでも個人に対する訴訟を

 また、前田弁護士はWinnyなど、中央サーバーのないタイプのP2Pソフトで、違法ファイルの交換が行なわれている事についても言及。「現時点では法的に、著作権者としてどう対応するか困難な問題だ。個人や法人を特定しない訴訟も日本では難しい」としながらも、「だからと言って、権利者が無力であるわけでは決してない。WinMXの違法ユーザーは刑事事件で摘発されているし、レコード会社がプロバイダに対して違法ユーザーの情報開示請求も進めている。個人の責任追及は可能で、中央サーバーを持たないソフトに対しても積極的に対策していきたい」との考えを示した。

JASRACの加藤衛常務理事

 さらに、JASRACの加藤衛常務理事は「我々はプロバイダを通して、3年間で違法な9万ファイル、5,000サイトを削除・閉鎖してきた。しかし、これらは氷山の一角。中には確信犯的に削除しない、プロバイダの言うことも聞かないというユーザーもいる」とした上で、「サーバーの存在しないP2Pも個人の特定など、難しい問題があり、慎重にやらなければいけないが、違法ユーザー個人への訴訟も時間の問題。RIAJと協調しながら、今まで通り、やるときはやる」と、違法ユーザーに今後も強い姿勢で臨むことをアピールした。

 なお、加藤理事はP2Pの将来性についても、「アメリカではiPodとiTunesというソリューションが受け入れられ、音楽ソフトの売り上げ低下を補うように業績を伸ばしている例もある。また、日本の音楽ソフト業界の低迷の原因の全てが違法なファイル交換によるものでもないと考えている。しかし、P2Pを使った交換は、現時点でまだマイナス面の影響の方が勝っている」との見解を示した。

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.jasrac.or.jp/release/05/03_4.html
□RIAJのホームページ
http://www.riaj.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.riaj.or.jp/release/2005/pr050331.html
□日本MMOのホームページ
http://www.filerogue.net/
□関連記事
【2003年12月17日】「ファイルローグ」を運営していた日本MMOに6,689万円の損害賠償命令 (INTERNET Watch)
ファイル交換ソフトの著作権侵害、今後は個人ユーザーが訴訟対象に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/12/17/1549.html
【2003年1月29日】「ファイルローグ」裁判、日本MMOが著作権侵害の主体と認定 (INTERNET Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0129/fr.htm

(2005年3月31日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.