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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第210回:デジタル放送対応レコーダ、松下「DMR-EX300」登場
~ デジアナ同時録画が魅力のハイビジョンDIGA ~


■ デジアナ混在時代のレコーダ

 ブルーレイやHD DVDを待たずして、DVDレコーダが次々とデジタル放送に対応を始めている。デジタルチューナを搭載し、HDDにハイビジョン録画を可能にしたこれらの製品群は、当Electric Zooma! でも東芝「RD-Z1」、ソニーのスゴ録「RDZ-D5」をレビューしてきたわけだが、いよいよパナソニックのDIGAシリーズからも対抗製品が出てきた。

 DIGAと言えば、派手な広告展開とツボを心得た製品ラインナップ、わかりやすい操作性で、いわゆるファミリー層を積極的に取り込んできた。昨年夏にはフラッグシップとしてブルーレイレコーダ「DMR-E700BD」がリリースされたが、今回のハイビジョンDIGAは、そこから一歩下がったハイエンドの位置にあると言っていいだろう。

 ハイビジョンDIGAには、HDD容量の違いなどで2モデル存在する。400GBの「DMR-EX300」(以下EX300)と、200GBの「DMR-EX100」だ。今回は上位モデルのEX300をお借りしている。各社ともデジタル放送特有の制限とDVDメディアのつじつまを合わせるのに苦労している中、パナソニックはどういうアプローチで挑むのだろうか。さっそく試してみよう。


■ 重厚な本体にコテコテのリモコン

 いつものようにデザインから見ていこう。従来型のDIGAは、四角い箱にハーフミラーでアクセント、といったスタイルが多かったが、EX300のフロントパネルは同社のブルーレイレコーダ「DMR-E700BD」の高さをぐっと抑えたようなイメージになっている。型番にもXが付いたように、あきらかにこれまでの路線とは違うレベルの製品であることを物語っている。

 斜めに切り出したボディからブラックアクリルがせり出した恰好で、ドライブベイ、液晶表示部がここに収まっている。そこから上向きに設えられたアルミパネルには、電源と操作系ボタンがシンプルにまとめられている。アルミのヘアラインとポリッシュ仕上げのコントラストも見事だ。

 DVDドライブは、DVD-RAM、DVD-R/RW、DVD+Rの記録に対応し、DVD+RWは再生のみ対応している。松下は今年1月のCESでHPとの協業を発表して以来、レコーダでDVD+Rをサポートするようになっている。

フロントパネルは「DMR-E700BD」を意識したデザイン ボタン類はシンプルで、アルミパネルの素材感が美しい DVDドライブはベゼル部が下に沈み、トレイだけが出てくる

 気になるデジタル放送のムーブだが、DVD-RAMは元々CPRMに対応しており、さらに今回はDVD-RのCPRMメディアも使用できるようになった。しかしDVD-RWへのムーブには対応していない。

 また今年のレコーダは、2層記録への対応も話題となっているが、残念ながら本機はDVD-R、DVD+Rともに2層メディアには対応していない。PC用ベアドライブでもそうだが、もともとパナソニックではDVD-RAMイチオシということもあって、新しいDVD-Rメディアへの対応へは積極性が感じられない。その一方で、当然のようにDVD-RAMのカートリッジに対応している。

 搭載HDDは400GBで、ハイビジョンをダイレクトに録画するDRモードでは、BSデジタルで約36時間、地上波デジタルで約50時間30分となっている。デジタル放送メインでの利用を考えると、やはり最低でもこれぐらいは欲しいところだ。

 前面下部のパネルを開くと、外部AV入力端子とチャンネルボタン、B-CASカードスロットがある。その上部には小さくSDカードスロットもある。従来のDIGAには、SDカードにMPEG-4の映像を録画できるモデルもあったが、EX300ではその手の機能はなく、デジカメ写真の表示や取り込みに使用するためのものだ。

前面にある外部入力端子 B-CASスロットの上にSDカードスロットが

 デジタル放送をSDカードにMPEG-4で再エンコードムーブともなると、コピーワンス番組はオリジナルの高画質ファイルを消してしまわなければならない。モバイルソリューションから見ると、以前から注目されていたポイントだが、この問題は次回へ持ち越しとなっている。

 背面へ回ってみよう。最初に目に付くのは、2つの出っ張った放熱ファンだ。ソニーRDZ-D5もデュアルファンだったが、あちらは出っ張っていなかったのでさほどの違和感は感じなかった。以前からDIGAでは、電源ファンを外側に出っ張らせる設計を続けてきているが、さすがに2つともなると、ちょっと違和感がある。

 また実際の弊害として、それぞれがアンテナ入出力端子の近くにあるため、RFコネクタ特有のL型に曲がったものを接続するときに上手くケーブルをさばいてやらないと、ファンの出っ張りにケーブルが押し上げられて、抜けてしまうことも考えられる。アンテナ接続はネジでしっかり留まる「F型接栓」を使った方がいいだろう。

 外部入力は、前面と合わせて3系統。出力はアナログAVが2系統のほか、D4端子と光デジタルの音声出力がある。またデジタルで映像と音声を伝送するHDMI端子が付いているのもポイントだ。そのほかモデムとLAN端子があるが、これはデジタル放送特有の双方向番組などで利用するためのもので、映像配信などのネットワーク機能はない。また、i.LINK端子も装備していないので、ハイビジョン映像(MPEG-2 TS)を他の機器とムーブしたりはできない。

背面はでっぱりファンが2つになった D4まで対応し、HDMI端子まで装備している

 続いてリモコンも見ていこう。デジアナ含めて4波対応になった割には、リモコンのボタンが整理され、初心者にもわかりやすくなった。再生、停止などの操作ボタンが大きくフィーチャーされている。またメニュー操作系では、ジョグダイヤルと十字キーの機能を併せ持つ「マルチジョグ」がユニークだ。

「マルチジョグ」搭載、ボタンがやたら大きな新リモコン 内部の数字ボタンも文字が大きい

 周りを囲む番組表などのキーも、文字もボタンも大きくなっている。見た目はかなりコテコテだが、これもわかりやすさを追求した一つの結果だろう。

 フタを開ければこれまた大きなチャンネルボタンが現われる。ユーザーアンケートで頻度の少ないボタンをここに集めたという事だが、まず録画ボタンが表面に出なくなったのは、予約録画でしか使わないということだろう。

 またレコーダのチャンネル上下ボタンさえも仕舞われたというのは、衝撃的だ。レコーダの黎明期には、レコーダを経由してテレビを見ると追っかけ再生ができます、というのが一つのウリだったわけだが、実際には大して使われなかったということなのだろう。いろいろ考えさせられる結果だ。


■ なかなか強力な「デジ・アナどっちも録り」

 では中味のほうを見ていこう。番組表はアナログ、デジタル放送ともにGガイドを採用している。したがってアナログとデジタルの番組表を切り替えたときにも、違和感がない。左側に広告が入ってしまうのが難点だが、HD対応テレビであれば高解像度で横に長いので、番組表スペースもまずまずの範囲で表示される。

番組表は最大9チャンネルまで表示可能 アナログ放送の番組表も高解像度で表示され、見通しがいい

 番組表はズームすることができ、最多9チャンネル、最小3チャンネルの表示となる。また番組表の時間軸方向にはジョグダイヤルが使えるので、一つの局の番組をブラウズするときは楽だ。

 ちなみに本機は「クイックスタート」機能により、電源OFFの状態からでも番組表ボタンを押すと、3秒程度で表示される。コンポジットやSビデオで接続しているテレビモニタには、これよりも速く表示されるようだ。ちょっと予約してまたOFFにしておくというような使い方が多い人には、イライラしなくて済むだろう。

 「機能選択」ボタンからは、「番組表の検索」が利用できる。従来のDIGAでも同様の機能があったが、キーワード検索や人名検索などは自分でキーワードを入力するのではなく、あらかじめ登録されたカテゴリの中から選択するスタイルだ。

キーワード検索もカテゴリから選択するだけ 人名検索もあいうえお順から選択するだけ

 予約録画では、地上デジタル、BSデジタル、110度CSデジタルのデジタル放送いずれかと、アナログ放送が同時に録画できる「デジ・アナどっちも録り」は、本機最大のメリットだろう。特に地上波は、アナログとデジタルでほとんど同じ番組を放送しているため、いわゆるダブルチューナ機のような裏番組録画ができる。

 あいにく筆者宅に引かれているCATVは、地上デジタル放送をパススルー伝送していないので試すことができなかったが、予約が重複した際に、アナログ放送での予約に変更する機能が搭載されている。HHD放送ならデジタルで、SD放送ならアナログでと、取り分けるのもいいだろう。

 予約で気になるのが、野球の延長などに追従する「番組追従」機能だ。これがデジタル放送でなければ使えないというのは、まあEPGの更新頻度から考えても妥当だとは思うが、毎週予約に使えないというのはどうだろうか。

 予約画面を見るとわかるのだが、本機での予約には、EPGのデータそのままで予約登録するタイプと、時間で勝手に動くタイマー予約へ振り替える機能がある。毎週録画に設定するためには、このタイマー予約へと振り替えなければならない。つまり本機での毎週予約というのは、ライン入力信号のタイマー録画と同じ動作原理で動いているのである。したがって毎週予約では毎回録画前にEPGを参照せず、時間が来たら動き出すだけなので、番組追従が働かないというわけだ。

毎週予約では、番組追従機能が使えない 予約一覧を見ると、毎週予約はタイマー予約にコンバートされているのがわかる

 まあ動かない理屈はわかるのだが、毎週録画が基本のドラマ録りでまったく役に立たない番組追従機能に、いかほどの価値があるだろうか。他社ではこの機能を実現するために、内部アルゴリズムまで全部作り直しているのに比べると、あまりにも付け焼き刃の感じがする。


■ 今ひとつ使い勝手が悪い再生系

 続いて録画・再生系を見てみよう。本機ではデジタル放送のストリームをそのまま記録するDRモードのほか、XP、SP、LP、EPモードがある。EPモードは6Hと8Hの切り替えが可能な点は、従来どおりだ。他社に比べればモードが少ないが、このあたりもDIGAのわかりやすさに繋がっているとも言える。マニュアルでのビットレート設定はないが、DVDメディアの残量に自動でぴったり合わせるFRモードがあるため、無駄のないダビングが可能だ。

 また今回のLPモードでは、従来画像サイズがHalfD1であったのに対し、SPと同じD1サイズ(720×480ピクセル)になっている。エンコーダの改善で、低ビットレートでも画質が上がったという現われだろう。

 今回も編集部が画質サンプルを取ってくれたので、まとめて掲載しておく。

DMR-EX300録画サンプル
画質モード HDD録画時間 DVD録画時間 サンプル
DNR OFF
XP 約89時間 約1時間
ezsm01.mpg(25.4MB)
SP 約177時間 約2時間
ezsm02.mpg(14.4MB)
LP 約355時間 約4時間
ezsm03.mpg(8.2MB)
EP(6H) 約532時間 約6時間
ezsm04.mpg(4.6MB)
EP(8H) 約709時間 約8時間
ezsm05.mpg(3.6MB)
DNR ON
HQ+ 約89時間 約1時間
ezsm10.mpg(25.3MB)
EP(8H) 約709時間 約8時間
ezsm11.mpg(3.6MB)
編集部注:DVカメラ「FV500 KIT」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像をAV変調機「VMD3M」でRF信号に変換し、録画した。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 再生ナビ画面では、アナログ放送から録画したものや、デジタル放送でも圧縮録画した番組は、サムネイル表示が可能だ。サムネイルを選ぶと動画として再生される。サムネイルの移動もジョグが使えるので、高速にブラウズが可能だ。だがDRモードで録画した番組は、別画面のリスト表示のみで、サムネイルの表示ができない。他社の機材ではやってることなので、別にデジタル放送の制限というわけではないようだ。

再生ナビでは、圧縮記録したものはサムネイル表示される DR録画したものはリスト表示のみ。選択した番組は小画面で再生される

 SDで録画した番組は、1080iにアップコンバートして、D3出力として表示することができる。市販DVDはHDMI端子のみしかアップコンバートしてくれないのは、他社製品も同じだ。自分で録画したDVDは、試した限り、どうもCPRM対応メディアにVR録画したものはD3出力するようだ。一方CPRM非対応のDVD-RなどにDVD-Videoフォーマットで保存した番組は、D2出力になる。

 もっとも1080iになるからといって、大幅に画質が向上するわけでもないので、過度な期待は禁物だ。このあたりの機能は、ソニーRDZ-D5のほうが上質だった。

 本機で再生可能なメディアとしては、HDD、DVD、SDカードがあるわけだが、この切り替えがボタン押しでローテションする作りになっている。多くのレコーダではHDDとDVDそれぞれに切り替えボタンがあるのだが、DVDからHDDに切り替える場合には、いったんSDを経由してからでないとHDDに切り替わらない。それぞれに切り替わる速度もそう速くはないので、なんともまどろっこしい。

 しかもタイマー録画が一度動作してしまうと、タイマー予約モードを切ってからではないとメディアが切り替わらない。いろいろ内部的な都合はあるのかもしれないが、そういう都合はユーザーには関係ないので、なんとかすべきだったろう。


■ 従来とは違うDR録画時の編集

 続いて編集回りを見ていこう。本機はいくつかの編集方法を持っている。まずイン・アウトを指定して部分削除する方法、チャプターを作成して削除・結合していく方法、タイトル分割・消去していく方法だ。手法は違うものの、いずれの場合も本当に映像を部分削除してしまうので、やり直しがきかない。またDR録画した番組に対してはチャプター機能が使えなくなるため、編集法としては部分削除か、タイトル分割・消去のみとなる。

部分削除は、不要部分のイン・アウトを指定する方式

 今回は部分削除を試してみたが、画面そのものは従来機と変わりがない。リモコンの操作法としては、ジョグダイヤルの回転でスロー速度と方向が変わり、左右押しでコマ送りとなる。普通はジョグでコマ送りを行なうものだと思うが、ちょっとイレギュラーな操作感だ。

 またDR録画した番組の編集では、逆方向のスローだけができない。またコマ送りも、戻し方向だけは15フレーム程度となってしまうので、その感覚に慣れるまで結構大変な思いをする。再生や早送りは、ボタンを押して反応するまでちょっともたつくが、一時停止はすぐに止まるので、編集点の決定はやりやすい。

ダビング時には、素材の切り替えを行なう必要がある

 DVDへのダビングに関しては、やはりここでも通常のビデオとDR録画したもので設定が違う。モードの「ダビング素材」のところで、SDのビデオなのか、DR録画したビデオなのかをいちいち選択しなければならない。

 DRビデオを選択した場合は、ダビングリストの登録時には、DR録画した番組だけが表示される。まあそれでいいといえばいいのだが、1枚のメディアにアナログ放送のコンテンツも入れるということが、一度の作業でできないということになる。


■ 総論

 デジタルチューナを搭載したハイビジョン録画対応のレコーダは、今までシャープ、日立、東芝、ソニーが製品化しており、パナソニックで5社目となる。次世代DVDの決着が付かないまま、各社とも手探りの中での商品化という苦しい状態が続いているようだ。

 今回のDMR-EX300は、機能の全体像が把握しやすく、従来のDIGAらしさを継承している。だが他社に遅れることなく夏前には対抗商品をということで若干焦ったのか、まだハイビジョン対応レコーダとしては発展途上の製品という印象を持った。特にデジタル放送のDR録画、そして録画したMPEG-2 TSの扱いに関しては、「なんでこんななの?」という制約が散見され、キカイの都合はユーザー側でなんとかしてくれみたいな面を感じてしまう。

 全体的に見れば、本体デザインも良く、特にリモコンはよく工夫されている。デジタル放送とアナログ放送が同時に録画できるのも強力で、編集したりDVDにダビングしたりする機会が少なく、HDDに録れればいいという人には使いやすい機材だ。ただ番組追従機能が毎週録画では効かないという点だけは、メーカー側の努力が足りないと責められても仕方がないだろう。

 現在はアナログ放送やDVDなど、SDコンテンツもまだまだ多い。特にDVDは個人の資産として、これから10年20年と残り続けていくだろう。レコーダがこれらをうまく処理することは当然でありながら、しかし中味はHD化していくという、難しい技術が求められている。

 すべてのソースがHD化するのはまだまだ当分先のことだ。今のところ消費者としてはどこに妥協ポイントを設定するかで、製品を選んでいくしかないということだろう。

□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□製品情報
http://panasonic.jp/dvd/products/ex300_ex100/index.html
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(2005年6月22日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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