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株式会社に・よん・なな・みゅーじっくは18日、無料ダウンロードを基本とした楽曲配信や、楽曲の紹介・プロモーション、ネットラジオなどを提供する総合音楽サイト「mF247(ミュージック・フォーキャスト247)」を12月にスタートさせると発表した。
に・よん・なな・みゅーじっくは、元ソニー・ミュージックエンタテインメント社長であり、ソニー・コンピュータエンタテインメントの取締役も勤めた丸山茂雄氏が設立した会社。「mF247」は同氏が主催する音楽配信サイトだが、有料配信を基本とした従来の配信サービスとは思想やシステム、サイト構成が大きく異なっている。
最大の特徴は、登録されている楽曲が基本的に無料でダウンロードできること。さらに、フォーマットはMP3を採用しており、DRMはフリーに設定されている。そのため、ダウンロードした楽曲は、ポータブルプレーヤーへの転送、CD-Rへのライティングも自由に行なえるほか、ファイルのコピーも制限されていない。ビットレートは128kbps。
これは、インディーズを中心に、「楽曲を販売して利益を得るよりも、まず自分の曲を多くの人に聴いてもらいたい」というミュージシャン、または楽曲権利者を対象に、楽曲登録を呼びかけることでシステムとして成立させるという。 このサービスを考えた理由について丸山氏は「大手メジャー・レコード会社から、インディーズ・レーベル業界に移動して感じていた“新しい・良い音楽を発表する場の無さ”を打開したかった」と説明。「ヒットチャートやタイアップばかりがメインとなり、音楽がつまらなくなっている。だが、良い、新しい音楽は生まれ続けており、それを音楽好きに届ける場所となることを目指す」という。
ビジネスモデルとしては、同サイトにミュージシャン(権利者)が楽曲を登録する場合、登録料として1曲の場合1万円が、以降2曲目は1,000円、3曲目も1,000円が必要。3曲で計12,000円が必要となる。なお、1度に登録申請できる楽曲は3曲までで、楽曲のクオリティが無料で審査される。登録が認められた場合は前述の登録料が要求される。なお、権利者が18歳以下の場合には1曲目の1万円が5,000円引きの5,000円となる。
ミューュージシャンは路上でのライブなどと同様の感覚でmF247を使用。利用するユーザーは無料でフルの楽曲をダウンロードして、好みの曲やミュージシャンを探すことができる。楽曲の募集は10月25日より開始。サイトオープン前までの登録料は全て無料となっている。
なお、無料配信は、権利者の意思で有料配信への切り替えも可能。単価は1曲99円を予定しており、その内70円程度がアーティスト(権利者)へ支払われるという。なお、有料配信した楽曲もMP3のDRMフリーとなる。
ダウンロード数は、「nF Charts」というチャート形式で掲載。大手メジャー・レーベルのタイアップなどと異なる、「ユーザーが実際に気に入った曲が上位になる“信頼できるチャート”が生まれ、結果的にテレビやラジオなど、従来メディアでのプロモーションにも繋がる」とする。 また、楽曲のダウンロードだけでなく、様々な機能も搭載する。「Disc Gather」は「このアーティストのCDが欲しい」という予約件数が設定枚数を越えたら、247musicからCDをリリースするというもの。また、「Live Gather」は「ライブが見たい!」というユーザーが最低催行人数を越えたら247musicがライブを開催するというシステム。
ほかにも、登録曲の紹介をメインとしたPodcast対応のネットラジオ「mf Station」も配信する。また、登録曲の中からお勧めの楽曲をレコメンドする「nj(ネット・ジョッキー)」制度を導入。ミュージシャンを撮影するカメラマンやスタイリスト、音楽に詳しい著名人などが選曲を担当。「現在200人程度が集まる感触」だという。さらに、ユーザーがnjとして参加する「ynj(ユース・ネット・ジョッキー)」も用意する。
さらに、「big“A”(ビッグ・アーティスト)」枠を設置。「知名度のある有名ミュージシャンだが、レコード会社の人員削減によるスタッフの移動などで、音楽の製作・発表が思うようにいかないアーティストに、楽曲を登録してもらう。さらに、彼らにはnjとしてインディーズの楽曲のレコメンドもしてもらう予定」だという。なお、big“A”枠に想定しているアーティスト名として佐久間正英、サンプラザ中野、GOTA(屋敷豪太)などが挙げられた。
■ 気に入られる前の楽曲は「作品」ではなく「情報」 丸山茂雄代表取締役は、同サイトを企画した理由について「メジャー・レーベルからインディーズの世界に移り、今は沖縄の新しい音楽を日本全国に広めようとしていた。しかし、沖縄でそこそこ成功した後で、いざ東京や大阪に持っていっても、新しい音楽を紹介する媒体があまりに無いことに愕然とした」という。 同氏はその理由について「現在も新しい曲は発表され続けているが、そのほとんどは何らかのタイアップを受けたもの。メジャー・レーベルはタイアップを取ることに躍起になり、ヒットチャートばかり気にする。自分の音楽が広まらないのが頭にきたと同時に、こうした構造が“おかしい”と強く感じた」と語る。 そこでインターネットを利用し、基本は無料での配信を企画したという。無料である理由について同氏は「音楽は、それがリスナーに気に入られない限り“情報”でしかない。気に入ってもらって初めて“作品”に昇華する。よって、まったく未知の楽曲(情報)に対価を支払ってもらうのには無理がある」という持論を展開。 そして、「まず情報として無料で、1人でも多くの人に広めないと何も始まらない」とし、「mF247はインターネットを使った、マスに向けた路上ライブだ」と語る。そして、リスナーが作品を見つけた後に、CDの販売や購入、ライブコンサートなどのプロセスが発生するシステムを解説。「従来のシステムと、お金をもらう時期をずらしたもの」と説明した。
その上で丸山氏は、「こうした考えは、音楽配信が本格的に立ち上がり、著作権保護の問題が活発に議論されている現状では極めて危険なもの」とした上で、「アップロードされる音源がフリーであることが当然だと主張するものでも、既存の著作権関連や課金などのルールを否定するものではない」とした。
また、JASRAC、コピナビが管理している曲や、出版社と契約している楽曲などについては、当該楽曲の「インタラクティブ配信」の部分をe-licenseに管理委託し、無料配信が可能な契約になっている必要がある。この契約が困難な場合や、247Songs(音楽出版社)に楽曲の著作権管理、プロモーションを依頼したい場合は、作詞家・作曲家の希望で247Songsと音楽出版契約を結ぶことができる。 丸山氏は、「我々はJASRACと事を構えるつもりはない」として、「登録には、未発表曲が望ましい。それ以外の楽曲は権利者が権利処理を済ませてから登録して欲しい」とした。
最後に丸山氏は、インターネットの命題として梅田望夫氏が挙げた「不特定多数の意見をどのようなメカニズムで集積すると、一部の専門家の意見よりも正しくなるか」という言葉を引用。「音楽ファンの意見をmF247というメカニズムを使い、専門家が紹介するよりも、より音楽ファンにより良いものにする」と語り、「音楽と音楽好きを結ぶための壮大な実験でもある」と付け加えた。
□247のホームページ
(2005年8月18日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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