~ DSDやマルチchをサポートした「2.0」の強化点 ~ |
FA-101を接続したところ、問題なく利用できた |
VAIOの場合は、5.1ch出力をサポートしたモデルはあっても、5.1ch入力をサポートしたものはない。そのため別途入力用のデバイスが必要になる。
もっとも、これらのデバイスに対してネイティブドライバで対応するというわけではなくASIOドライバ経由となっているので、裏を返せば基本的にはASIOデバイスであれば何でも利用可能。手元にUA-101がなかったので、同じEDIROLのFireWireデバイス「FA-101」をVAIOのi.LINK端子に接続して使ってみたところ、問題なく利用することができた。
入力デバイスの選択は、ドライバの設定画面で行なうとともに、入力画面で、内蔵オーディオインターフェイスであるSound Realityのマイク入力を選ぶか、ライン入力を選ぶか、ASIOデバイスを選ぶかの設定があり、これで選択する。そして、録音/編集画面において、2chにするか5.1chにするかを設定する。
入力画面で、マイク入力、ライン入力、ASIOデバイスの中から選択する | 録音/編集画面で、2ch/5.1chを選ぶ |
5.1chを選び、録音ボタンをクリックすれば、5.1ch同時録音が可能に |
ここで、5.1chを選び、録音ボタンをクリックすれば、5.1chを同時に録音できる。もっとも、5.1chを同時に録音するというシチュエーションは、一般ユーザーにとってはあまり考えられないようにも思うが、とにかくSSMSはやってしまったのである。
SSMSで面白いのは2chと5.1chをスムーズに変換できるということ。つまり、5.1chで録音したものを2chのスピーカーへミックスダウンして出力したり、2chのソースを5.1chサラウンドに広げて出力すること、さらには5.1chのままより音に広がりを出したり、さまざまなエフェクトをかけるなど、非常に自由度が高くなっている。
出力段の接続 | SSMS 2.0のミキサーのダイアグラム |
具体的にあげると、まずはQSoundのエフェクト群。SSMSがWAVESやSony Oxfordなどのプロ用エフェクトを搭載してきたことと、コンシューマー用としても有名なQSoundにはややギャップを感じたが、ステレオ・サラウンド間の変換ユーティリティとして考えるとなかなか魅力的なエフェクトである。
まずは5.1chのサラウンド感を保ったまま2chで鳴らすバーチャルサラウンド実現のためのQSurround Virtualizer。反対に2chの音に広がりをつけてサラウンド化するQMSSがある。さらに、QSurround 5.1は5.1chの音にさらに広がりをつけて、そのまま5.1chで出力するというエフェクトとなっている。
QSurround Virtualizer | QMSS | QSurround 5.1 |
WAVES S360 Surround Imager |
もちろん、このマニアックなSSMSだけに、サラウンド関連エフェクトはQSoundだけというわけではない。WAVESのサラウンドエフェクトの決定版「WAVES S360 Surround Imager」もプリインストールされている。これは5.1chサラウンドの音を非常に細かく調整して、音の広がりを完成させていくもので、やはりプロ御用達ツールのひとつである。
Fader | Surround Panner | Downmix |
SSMS 1.xのときからもWAVESのS1 Stereo Imager、Renaissance Bass、L1 Ultramaximizerに加え、Sony Oxford EQが搭載されていたが、この一連のエフェクトもさらに追加された。そのひとつはこれまでオプション扱いだったSony Oxford Multichannel 5 Band EQ + Filter。
メディアインテグレーションが扱っているProTools用のプラグインとはユーザーインターフェイスは異なるが基本的には同じ。各パラメータがツマミではなく、フェーダー形式になっているので、マウスでの操作はしやすくなっている。また、同じくSony OxfordのInflatorというエフェクトも、サラウンド対応に拡張された。これは聴感上の音圧を上げながらも温かみを付加するというエフェクト。L1 Ultramaximizerと似た役割ながらも、違った音作りが可能となる。
Sony Oxford Multichannel 5 Band EQ + Filter | Sony OxfordのInflatorというエフェクトも追加 |
そして、もうひとつ追加されたのがSony Oxford Restorer。これのみはレコーディング時に即利用することも可能になっているのだが、原音を損なわずにノイズ成分を除去するというノイズリダクション・プラグインだ。これを利用することで、手持ちのアナログ素材をしっかりとデジタル化できる。試しに以前、使ったことのあるサンプルを用いて、このRestorerの実力はどれほどのものなのか実験してみた。
Sony Oxford Restorer | レコーディング時に即利用可能 |
このパラメータを見てもわかるとおり、ヒスノイズ、ハムノイズ、クラックルノイズのそれぞれに対応できるようになっており、それぞれが独立している。まずヒスノイズで試したところ、ノイズリダクションを強めると、ややキュルキュルした音が入るようになる。いろいろ試したところ35%程度のかけ具合がちょうどいい感じだったが、まだノイズ感は残る。
次にハムノイズを試したところ、50Hzに設定すると、確かに低音部は取れるのだが、ハムノイズとして乗ったザラザラした感じの高域の音はまったく取り除かれずに残ってしまう。ヒスノイズ除去である程度取れるかと思ったが、音質が変化してしまうばかりで、ノイズはあまり取れなかったので、併用にはあまり効果はなさそうだった。
一方、クラックルノイズはリダクションレベルを100%に設定するのがいい感じで、原音をほとんど損なうことなく、かなり取り除くことができた。こうした結果を見ても、これが完璧なノイズリダクションとはいえないが、SSMSではサードパーティのVSTプラグイン、DirectXプラグインも利用可能なので、これらと組み合わせて使うことで、より真価を発揮できそうだ。
ヒスノイズ | ハムノイズ | クラックルノイズ |
sample1.mp3 (472KB) |
sample2.mp3 (471KB) |
sample3.mp3 (472KB) |
ノイズリダクションを強めると、キュルキュルした音が入る | 高域のザラザラ感が残る | リダクションレベルを100%に設定すると、原音をほとんど損なわずに除去できる |
A&Vフェスタ2005で展示されたDSDレコーディング対応のVAIO(左)と、TASCAMのDV-RA1000(右) |
DV-RA1000はUSBでPCと接続でき、接続するとPCからは外付けドライブとして見えるが、ここにあるDSDIFFファイルを読めるようになる。また、DSDファイル(DSF/DSDIFF)再生のためのDirectShowフィルタも開発されており、それを利用することで、Windows Media Playerでもそのまま再生できるようになる。まだ、参考出品という段階であり、アップデータの提供時期は未定ということだ。
また、DSDIFFのエクスポートについても尋ねたところ、未定とのこと。民生機がDV-RA1000しかない現状においては、限られた用途でしか活用できないが、今後のDSD普及のための地固めは進んでいるようである。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報(VAIO typeR)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-RC70/
□製品情報(VAIO typeH)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-H71S/
□製品情報(VAIO typeV)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-VA200DS/
□関連記事
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~ 対応チップ搭載VAIOで、DSDという選択肢を提供 ~
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-音楽製作機器でのDSDフォーマットの普及へ促進へ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050407/stein.htm
(2005年9月26日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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