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DVDフォーラムは5日、「DVDフォーラムセミナー 2006」を開催。HD DVDフォーマットの現状報告や、今後への期待が語られた。
■ マネージドコピーは原則1回のコピーを許可 DVDフォーラムWG11議長のNEC 早津亮一氏は、DVDフォーマットの市場動向や、HD DVD規格の概要について解説した。
IT業界ではDVDの倍速競争の終了やPCのAV化傾向、家電業界ではHDTVの伸張、コンテンツ業界では違法DVDコピーや映画ライブラリのDVD化の一巡などを理由に、HD DVDへの期待が高まっている状況を紹介。 その上で、HD DVDの各フォーマットと既存DVDとの親和性を強調し、DVDからのスムーズな移行をアピール。また、片面2層のHD DVD/DVDツインフォーマットなどの新方式について説明するとともに、各物理/アプリケーションフォーマットの概要を解説した。 なお、HD DVD-ROMのリージョンコードについては、現在リージョンフリーとなっており、地域ごとの制御は行なわれていないが、「コンテンツ業界からの要求が高く、リージョン設定に向け、検討を開始している」という。
DVDフォーラムTCG議長の東芝 山田尚志氏は、コンテンツ保護技術の動向について説明。CSSなど過去のDVDフォーマットで採用された技術の歴史を説明するとともに、DTCP-IPなど、現在の課題について説明した。 HD DVDでは、ディスクの著作権保護技術としてAACS、IP/IEEE 1394などのネットワーク伝送にDTCP、デジタル映像出力にHDCPを採用している。活用が有力視されている、DTCP-IPについては、ネットワーク上で、どこまでを家庭内と定義するかという議論があるが、現状は、「IPネットワーク上で、7ms以下でレスポンスが返ってくることを家庭内と定義している」という。 なお、AACSは2月に仮ライセンスが開始されているが、11月に正式ライセンスに移行する予定。仮ライセンスに基づいたプレーヤーやディスクは、正式ライセンス製品との互換性を維持するが、新たに最終ライセンスではマネージドコピー(Managed Copy)への対応と、デジタル出力制御(Digital Only Token)、音声の電子透かしなどが追加される。 マネージドコピーは、ネットワーク経由で認証を行ない、HDDやHD DVD、メモリーカードなどへのコピーを許可する機能で、「基本的にデフォルトで1つのコピーを許す方針」という。また、ネットワーク経由で、コピー回数の許可などに応じた課金などを検討し、「基本姿勢はユーセージの拡大を目指すもの」とした。 アナログ出力については、2010年以降は、SD解像度でインターレース信号のみに制限、2013年以降は全面禁止とする方針。
また、製品への著作権保護機能の実装についても注意を喚起。著作権保護機能を無効化できるプレーヤーを発売していたSamsungをMPAA(全米映画協会)が訴え、MPAAが勝訴している事例などを紹介し、「東芝では専用の審議会を開いて製品発売時に検討しているが、近年はMPAAなどが注目している。特に輸出製品などでは気をつけてほしい」と呼びかけた。
■ HD DVD-VRフォーマットでレコーダの使い勝手向上を図る
HD DVDのフォーマット概要については、ライターの北川達也氏が解説。HD DVD-ROMやR/RW/RAMの概要を紹介するとともに、それぞれの特徴を説明した。 HD DVD-Rについては、DVD-R用設備の改良で製造できるなど初期投資を軽減できるほか、有機膜と無機膜の両方を利用できるなど、記録材料の選択肢が増えるため、設計の柔軟性が向上。また、2層ディスクについても、1/2層のトラッキング特性を選択でき、柔軟な設計が可能で、コスト減が期待できるという。
アプリケーションフォーマットについては、記録用のHD DVD-VRフォーマットについて説明。HD DVD-VRでは、エンコード録画用のVideo Object(VOB)モードと、放送ストリームをそのまま記録するStream Object(SOB)モードの2種類が用意される。 SOBは、デジタル放送のMPEG-2 TSをそのまま記録するためのモードで、7月14日より発売されるHD DVDレコーダ「RD-A1」はSOBモードのみの対応となっている。 一方のVOBは、MPEG PSシステムを採用し、MPEG-2のほか、MPEG-4 AVC(H.264)やVC-1(WMV)などの各映像コーデックに対応する。今後低ビットレートでのトランスコードを行いながら録画する機器などが出てきた際の採用が見込まれている。また、VOBモードでの録画したコンテンツはHD DVD-ROMのアプリケーションフォーマットであるHD DVD-Videoのサブセット扱いとなるため、同モードで記録したディスクは通常のHD DVDプレーヤーでも再生可能となる見込み。
また、「HD DVD記録への期待」と題して、東芝DM社 デジタルAV事業部DAV商品企画部商品企画担当グループ長片岡秀夫氏が登壇。RD-A1のコンセプトを説明するとともに、アプリケーションフォーマットの点からHD DVDのメリットを説明した。 デジタル放送を記録した「TSタイトル」のほか、SDコンバートやアナログ録画した「VRタイトル」をHDD内で混在可能なほか、HD DVD-R(HD VRモード)上で混在可能で、HDDから無劣化ダビング(コピーワンスコンテンツを除く)できるメリットを強調した。
■ 各業界がHD DVDサポートを表明 DVDフォーラム PCC マクロソフト株式会社 Windowsクライアントビジネス開発事業部技術部マネージャーの土田圭介氏は、HD DVDのインタラクティブ機能について説明した。 同社のiHD技術のポリシーを説明するとともに、XMLやCSS、SMILなどのオープン技術をベースとしている旨をデモ映像を交えて解説した。マイクロソフトの取り組みとしては、PC用のエミュレータなどをまとめたHD DVD Jumpstartkitを提供開始したほか、次世代WindowsのWindows Vista向けにHD DVDイニシアチブを開始。テストサンプルのライセンスや、プレーヤーソフトウェアの開発支援で、InterVideoやNERO、SONIC、CyberLinkなどと協力しているという。
DVDフォーラム FLAG議長でワーナー・ホーム・ビデオの長谷瓦二氏は、コンテンツホルダの視点からHD DVDへの期待を語った。 DVDの成功について、'99年に499ドルと低価格でスタートしたことや、早期に20ドル程度で多くのパッケージソフトがそろったことなどを例に挙げ解説。しかし、2004年以降DVD市場の鈍化し、2005年は一桁成長となったことから、「事業を継続する上でマージンの確保が難しくなってきた」と次世代を求める理由を説明した。 さらに、北米市場でのポータブル型の伸張など多様化が進んだことを例に挙げ、「映画を見る人のライフスタイルが変化している。昔のようにハリーポッターを売っていればいい状況ではない。HDTVよりDVDの画質が負けていていいのかという素朴な疑問も根強く、ワーナーとしても約1年半前に次世代に踏み切る決断をした」と、HD DVDにかける期待を語った。 また、映画の約7割が120分以下というデータを例に挙げ、「容量としてはHD DVDは十分。(DVDをベースに高圧縮コーデックを利用する)3XDVD-ROMも低コストが見込め、HD DVDでは現在VC-1での圧縮を行なっているが1層15GBで収まればそれに超したことはない」と説明し、製造コストの安さを求める意向を示した。 HD DVDタイトルについては「制作のノウハウも蓄積されてきており、年内に80~90タイトルをラインナップする。HD DVD急速立ち上げの準備が整った」とし、積極的にHD DVDを推進していくことを明らかにした。
最後に、日本国際映画著作権協会(MPA)の飯山恭高氏が映画産業からみた著作権保護の取り組みを説明。海賊版の取り締まりの近況を語るとともに、現行の著作権法の問題点などを解説した。 海賊版の元ソースとなるのは主に映画館でビデオカメラで撮影した映像だが、日本国内では民法上は施設管理権を元に、劇場から退出を求めることができるが、それ以上の罰則規定がないという。そのため、行為を強く防止できる法律の策定を政府に提言しており、「知的財産推進計画2006」にもその旨が盛り込まれたという。 北米では、2005年に連邦法でカムコーダ盗撮防止が盛り込まれたほか、州法でも導入が進んでおり、海賊版のソースとなる事例は減少傾向という。また、近年では北米の映像に日本で盗録した音声を加えるなど、海賊版も巧妙化しているほか、海賊版のクオリティが最も高いのはロシア地域とのこと。その理由は、テレシネソースが流出して海賊版が作られるためという。 □DVDフォーラムのホームページ ( 2006年7月5日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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