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日立マクセル株式会社は31日、MP3など圧縮音源の高音質化を図る技術「Bit-Revolution」(ビット・レボリューション)を九州工業大学と共同で開発したと発表した。同技術を利用し、新ブランド「VRAISON」(ヴレソン)シリーズとしてPC用USBオーディオやヘッドフォンなどの製品を11月より順次発売する。
■ MP3や音楽CDの周波数を44kHzまで補間
「Bit-Revolution」は、MP3などの圧縮音源でカットされた高域を補間し、44kHz相当まで復元するという技術。基本波をもとに高調波を予測し、周波数の補間とスムージングを行なうことで原音に近い音をシミュレートできるという。 圧縮された音源の場合、ダイナミックレンジの上限が音楽CDでは22kHz/96dB、MP3では16kHz/96dBに制限されるが、「Bit-Revolution」では高域補間とビット拡張を行なう。 他の補正技術との違いとしては、MP3では16kHzでカットされる音を22kHzまで伸ばすという技術に比べ、Bit-Revolutionでは44kHzの周波数まで復元できるという。また、CDのWAV音源に関しても、44kHzまで復元。補正のレベルは、「ハイエンド」と「プロフェッショナル」の2段階で調節できる。
同技術は楽器の高調波の発生メカニズムに基づいており、基本波を復調することで高調波を予測。基本波の一部ではなく、全体的に復調を行ない、高域に加えて低い周波数にも効果が出るという。また、一般的な補間方法として、ノイズを入れたり、歪んだ波形を入れる方法に比べて無理のない補正が行なえるという。 また、MP3などの16bitの音を24bitにリサンプリングし、量子化に伴うノイズに関しても予測補間を行なうことで軽減、滑らかな再生が行なえるという。音楽ファイルに加え、WMVなどの動画における音声部分にも対応する。 さらに、ユーザーの可聴域に合わせて補正のレベルを調整する機能も搭載し、感度の低下したユーザーでも原音に近い聴感が得られるという。
■ 売上目標は2007年度で20億円
開発は、同社と九州工業大学ヒューマンライフIT開発センターの佐藤寧教授が共同で実施。佐藤教授は説明で「MP3の音をDVDオーディオ相当、さらにはSACDに迫る音質で再現できる」と説明、アナログ音源でも「デジタルの圧縮音源のようにバッサリとカットされていないため、より滑らかな復元ができるのでは」とした。 さらに、PCゲームなどの音源に対しても、同じ解析アルゴリズムで高域が伸びることにより効果があるとし、「“いい音”というよりも“面白みのある音”になるのではないか」とする。 同技術を採用したブランド名の「VRAISON」は、フランス語の「VRAI」(本物の)と「SON」(音)を合わせた造語で、「人間工学に基づいた本物の音を実現することがコンセプト」であるという。
日立マクセルでは、「VRAISON」製品の第一弾として、PC向けのUSBオーディオコントローラとヘッドフォンのセットを11月に発売。USBコントローラをPCに接続し、ドライバをインストールすることで、市販のDVD再生ソフトなどと合わせて音質の補正が可能。24bit/48kHz対応の上位モデルと、16bit/24kHz対応の標準モデルを用意し、価格は9月下旬に改めて発表するとしているが「2~3万円レベル」になるという。 また、AV用ヘッドフォンや、スピーカーシステム、Mac用のUSBオーディオ、携帯電話用ヘッドフォンなども2007年春に発売を予定。AV用ヘッドフォンでは「外付けユニットなどを使用せずに、ハウジング部にチップを内蔵することが可能」(佐藤教授)としている。 さらに、佐藤教授は「Bit-Revolution」を応用したノイズキャンセル技術も研究しており、周囲の騒音に対する学習アルゴリズムを用いたノイズキャンセル搭載ヘッドフォンや、Bluetooth対応ヘッドフォンに関しても開発を行なっており、2007年春に向けて日立マクセルが製品化を進める。また、2007年度からは海外展開も始める予定。
製品化の経緯やマーケティング戦略については、グローバル営業統括本部マーケティング部長の松岡建志氏が説明。 松岡氏は「音楽CDが出た'80年当初から音の切捨てが行なわれているが、AACなどのように、圧縮しながらも高音質が欲しいというニーズも多い」と述べ、「高音質対応の機器は多様化したが、マクセルとしては新しいハードを買うということで前の製品が使われなくなり、メディアも“お蔵入り”となるのはもったいない」という点から、「機器を選ばずに一人一人に合わせた高音質化で、最高のアナログアウトプットを目指す」とした。
販売戦略に関しては、20歳で人間の可聴帯域は20kHzに達し、以後は落ちるという例を挙げ、「20歳以上の人口である1億200万人、80%の人が高域を失っており、可聴帯域に個人差もある」とし、幅広くターゲット層を設定。さらに、「激しいスポーツなどで片方の耳が聞こえにくくなるといった症状の人に対してもアプローチできるのでは」という見方を示した。 同技術を用いた製品の売上規模目標としては、国内では2007年度で20億円と設定。また、他社へ技術供与については、「全ての機器に使えるというコンセプトの製品であるため、まずは自社製品で多くの人に使ってもらうように提案し、市場を作る」として、現時点では考えがないことを明らかにした。
(2006年8月31日) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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