SMSC、DLNA機能内蔵ネットワークコントローラ －HDストリーミングが可能に。暗号化/復号化にも対応

9月19日発表

　スタンダードマイクロシステムズ株式会社(SMSC Japan)は、DLNA処理などの機能を内蔵する組み込み向けネットワークコントローラチップ「LAN9131」を発表した。サンプル出荷は19日より開始し、サンプル価格は20ドル前後。2007年2月より正式出荷を開始する。同社では初年度の出荷個数を300万個と見込む。

　DLNAガイドラインに準拠したネットワークコントローラで、情報家電機器などに組み込んで利用。メインのシステムチップが従来行なっていたDLNA処理や、ネットワークのTCP/IP処理などを代わりに行なうことで、システムチップの負荷を軽減できるほか、ネットワーク帯域を向上し、地上デジタル放送などのHDコンテンツのストリーミング送受信が可能。

　CPUにARM926コアを内蔵し、処理能力を高めているほか、同社独自の「RipStream」技術を採用。DLNAガイドラインに準拠するほか、ネットワークのTCP/IP処理、DTCP-IP/WM DRM 10などの著作権技術保護技術による暗号化/復号化機能を1チップに内蔵している。また、2chの双方向TSI(Transport Stream Interface)を搭載。ストリーミングデータ専用の帯域を確保し、システムチップとのデータ通信時のボトルネックを解消するという。

評価ボード	「LAN9131」を搭載することで、10Mbps程度だった帯域を60Mbps前後まで拡大可能

　これらの処理を全てシステムチップが行なう場合、システムリソースを多く占有してしまうため、ネットワークのスループットは10Mbps前後にまで低下してしまうが、LAN9131でこれら処理を行なうことで、30Mbps相当のHDコンテンツ2本分の帯域(60Mbps)が確保できるようになる。

　汎用チップの組み合わせなどで同程度の機能を実現する場合と比べて、コストを約2分の1程度に抑えることが可能。CPUを内蔵しているため、消費電力は単体のネットワークコントローラに比べると高め。

■ Gigabit EthernetやUWBは市場を見て対応

鈴木康夫社長

　SMSC Japanは売上の6割をネットワーク関連チップが占めるネットワークチップメーカー。情報家電機器用のネットワークチップや、産業用通信プロトコル「ARCNET」対応製品などを企業向けに提供している。これまでの製品群の多くでは、PCなどで採用されて普及した技術を家電などに持ち込むスタイルが主流だった。

　発表会では、SMSC Japanの代表取締役社長、鈴木康夫氏が、今後の製品のロードマップについて言及、「Gigabit Ethernetの広帯域にそのままRipStream技術を組み合わせれば、30MbpsのHDコンテンツ5～6本の同時送受信が実現できる。だが、Gigabit Ethernetについては、まだ部材の高さから家電市場では搭載製品がほとんどない状態。そのため、市場の状況を見て提供していきたい。無線LANや、Ultra Wide Band(UWB)についても同様」と慎重な姿勢を見せた。

　また、発表会場には、株式会社アイ・オー・データ機器、株式会社デジオン、株式会社アクセス、株式会社ユビキタスの4社が駆けつけ、各社のDLNA対応製品への取り組みについての紹介を行なった。

　SMSC Japanと業務提携した株式会社ユビキタスでは、LAN9131の備えるRipStream技術に最適化したDLNA処理やTCP/IP処理の組み込みソフトを発表、デモを実施した。同社独自の開発により、コードサイズが200KB程度と軽量なのが特徴。SMSC Japanが提供するソフトはLinuxベースのため、コードサイズが大きめなのだという。そのため、SMSC Japanでも、より低容量で動作する組み込みソフトを要望する顧客に対しては、ユビキタス製ソフトの利用を勧めていくとしている。

アイ・オー・データ機器は、家電とPCがDLNAで接続する環境を「デジタル家電2.0」と呼称	同社のDLNA対応ネットワーク接続HDD「HDL-GT」シリーズなどの製品を紹介した

デジオンは、同社のDiXiMパッケージを採用した機器の多くがDLNA認証を取得している点を強調	ユビキタスは、同社製組み込みソフトとSMSCチップの組み合わせによる動作デモを実施

□スタンダードマイクロシステムズのホームページ
http://www.smsc.jp/
□ニュースリリース
http://www.smsc.jp/news/060919_lan9131.php
□製品情報(pdf)
http://www.smsc.jp/products/catalog/lan9131_060919.pdf

( 2006年9月19日 )

[AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]

Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.