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■ PC周辺機器のワンセグユニットがついに登場 4月から正式にサービス開始したワンセグ放送。それに前後して対応端末が続々と登場した。携帯電話、カーナビ、DVDプレーヤー/オーディオプレーヤーなどのポータブルAV機器。そしてPCだ。 ただし、これまではPCでワンセグ放送を視聴しようと思っても、単体のワンセグチューナユニットは存在せず、ワンセグユニットを内蔵、またはPCカード型ユニットなどが付属するPC一式を改めて購入する必要があった。ワンセグユニットに組み込まれた著作権保護機能により、指定のPCと接続しないとワンセグ放送の視聴や録画が行なえない仕組みを採用しているためだ。
とは言えワンセグ放送を見たいばかりにPCを買い換えられるユーザーはあまり多くない。そもそもワンセグユニットを備えるノートPCは、コンパクトなタイプが多いため、メインで使うノートとしては向かない製品が多い。自宅で据え置き型の大型ノートやデスクトップなどに搭載し、何かの作業をしながらテレビを見る「ながら見」の用途に使いたくても、そうした製品はほとんどなく、PC用周辺機器としてのワンセグチューナユニットの登場が望まれていた。 そんな中、まずロジテックが9月中旬に「世界初」のUSB接続のPC用ワンセグレシーバ「LDT-1S100U」を発売した。実売14,000円前後と価格も手頃で、重量も25gとコンパクト。ただしワンセグ視聴にのみ対応し、録画は行なえない。 それから2週間も経たないうちにバッファローから録画にも対応したワンセグユニット「ちょいテレ(DH-ONE/U2)」が発表になった。発売時期は10月中旬とやや先だが、録画機能に対応する上、本体は約12gとさらにコンパクト。価格も12,075円とお手頃だ。そこで今回はバッファローのDH-ONE/U2の使い勝手を検証した。 なお、今回試用したのは、試作機のため製品版とは仕様等が異なる可能性がある。 ■ コンパクトな外観。外部アンテナも付属 本体はコンパクトで、手のひらの中にすっぽりと収まるほど小さい。ロジテックのLDT-1S100Uもそれなりに小型だが、並べてみると、かなり大きく感じてしまうほど。なお、DH-ONE/U2付属のロッドアンテナもかなり小さく、外した時に無くしそうなので、着脱時には注意が必要だ。
パッケージに含まれる付属品は非常にシンプルで、本体と小型のロッドアンテナ、ケーブル長3mの外部アンテナなどが含まれる。外部アンテナはロッドアンテナと交換して利用する。着脱部は独自コネクタで、少々固め。アンテナの底面はマグネットになっており、金属製ラックやスチール製デスクなどにぴったり付くので使いやすい。また、マグネットが利用できない場所に備えて、吸盤も付属する。
■ シンプル機能の「PCastTV for ワンセグ」 視聴/録画ソフトは、同社のテレビキャプチャ製品ではおなじみ「PCastTV」をワンセグ放送向けに改良した「PCastTV for ワンセグ」を利用する。ワンセグの視聴/録画に特化したソフトに仕上がっており、設定項目も録画映像/静止画キャプチャの保存先フォルダの設定とiEPGで利用するサイトの指定のみで、設定できる項目はほとんどない。 チャンネル設定は、インストール時に地域選択で行なえるほか、PCastTV起動後も地域選択が行なえる。また、視聴可能なチャンネルを自動で検索する「自動取得」も可能。自動取得にかかる時間は3分前後。
PCastTV for ワンセグを起動すると、メイン画面とサブウィンドウの2つの画面が開く。メイン画面はテレビ画面の下に5つのボタンを備え、サブウィンドウなどの表示/非表示の制御やチャンネル設定などが行なえる。その下には字幕ウィンドウ、プレーヤー機能ウィンドウを備える。 字幕ウィンドウは、ワンセグ放送に含まれる字幕データの表示を行なうもの。ただし機能ボタンを挟んで字幕ウィンドウが配置されるため、字幕と映像を同じ視野に入れて見ることが難しい。この辺りは字幕データを映像に重ねて表示するモードや、レイアウトを工夫するなど考慮してほしいところだ。 字幕データは基本的に番組のジャンルを問わず、ニュースやバラエティなどでも備えている番組が多いので、音声をオフにしても字幕と映像だけで大体の内容の把握ができるので、作業をしながらちら見で内容をチェックするには最適だ。 プレーヤーウィンドウは、手動録画や静止画キャプチャのほか、チャンネル変更、ボリューム操作などが行なえる。時計表示や選択したチャンネルの番組情報などの表示もできる。 これらウィンドウを全てOFFにすることで、テレビ画面と機能ボタンのみのコンパクトな画面で視聴することも可能。また、テレビ画面をダブルクリックすることで、全画面表示によるテレビ視聴が行なえる。
サブウィンドウには、視聴可能なチャンネルを一覧にし、そこからチャンネル切替が行なえるほか、タブの切替でワンセグのEPG番組表や、番組予約一覧、録画番組の一覧などを表示できる。 予約録画は、インターネット接続によるiEPGからの予約が可能なほか、ワンセグのEPG番組表が利用できる。EPGの番組データは、ワンセグ視聴時にデジタル放送波から取得するので、インターネット接続していなくても利用できる。ただ、今のところ、ワンセグ放送の特に民放のEPG放送は、数時間程度先までしか送信されていないため、録画予約用には不便だ。 録画が完了した番組の情報はサブウィンドウの「ビデオ」タブに表示され、番組名をダブルクリックすることで、メインウィンドウでの番組再生が開始する。録画番組の再生には、録画を行なったPCに対してDH-ONE/U2を接続しておく必要がある。PCを変更したり、DH-ONE/U2が外れた状態での再生は行なえない。
録画ファイルの再生時に気になったのは、プレーヤーウィンドウの挙動だ。通常プレーヤー機能ウィンドウは、チャンネル変更や手動録画ボタンなどを配したテレビ視聴時の状態になっている。このタブを切り替えて「テレビ」から「ビデオ」に変更することで、番組再生時の機能が表示され、録画番組の再生/停止/一時停止などが利用できる。 ところがサブウィンドウから録画番組をダブルクリックして再生を開始しても、自動でタブが切り替わらないため、再生中の番組を停止するような場合には、タブを手動で変更しなければならず、手間がかかる。再生時には自動で切り替わるような作りにしてほしかったところだ。
画質については、ワンセグとしては良好。元々が低解像度/低ビットレートの放送なので、PCの液晶ディスプレイ上で全画面表示などを行なうと、ブロックノイズは目立つものの、画面内の文字が読めるレベルは維持している。ただしアスペクトモードは切り替えられず、4:3の映像は周囲に黒帯が付き、16:9の番組では、上下に黒帯が付き、両端はフル表示となる。 チャンネル切替にかかる時間は早くて4~5秒、電波の受信状況が悪いと10秒近く待たされるため、ちょっともたつく印象を受けた。 電波の受信状況は、東京都千代田区のビル内にある編集部では概ね良好。東京MX以外のチャンネルはほぼ問題なく受信できた。ただし、局や場所による差も大きく、ビルの中央に近い位置ではNHKの受信が安定しないなどの問題もあった。また、全面ガラス張りの角部屋では、室内では受信が困難だった東京MXチャンネルの視聴も行なえた。 PCastTV for ワンセグでは、複数台のDH-ONE/U2接続に対応しないのは残念なところ。1台のPCに複数台接続して利用すると言った使い方も面白そうなだけに、今後のバージョンアップに期待したいところだ。 ■ 主要都市部は問題なし。市街など狭間のエリアの対応に期待
続いて、ノートPCと組み合わせて屋外での視聴状況を検証してみることにした。今回は車上でのワンセグ放送の電波受信状況を検証してみた。 検証にはノートPCとDH-ONE/U2の組み合わせ以外に、東芝のワンセグ対応ポータブルプレーヤー「gigabeat V30T」を用意。同じチャンネルを表示して電波の受信状況を調べた。 とりあえず、板橋区高島平付近の自宅での電波受信状況を検証するところからスタートした。ところが自宅ではワンセグの電波がほとんど入らない。全く入らないわけではなく、一応NHKなど主要なチャンネルはかろうじて受信できる場合もあるものの、2~3分視聴していると、電波が途切れてしまい、受信ができなくなるといった状況のため、とてものんびり視聴したり録画できるような状態ではなかった。
自宅のマンションは昔から電波関係に難のあるマンションのため(無線LANも繋がりにくく、携帯電話も入りにくい)、外に持ち出して高島平近辺を車で移動し、駅前などで停車して、電波の受信状況を調べてみた。前述のノートPCとDH-ONE/U2(アンテナはロッドアンテナ装備)とgigabeatを共に利用して調査した。 ところが、都営三田線の西台駅や蓮根駅近辺でも受信状況は奮わず、車内での受信状況は自宅とあまり変わりなく悪い状態。都内ならどこでも問題なく受信できると思っていただけに、かなり悲しい現実を知ってしまった。 その翌日、外部アンテナを利用しての電波状況を試すべく、日曜の昼間に車で国道17号線を北上し、埼玉県へと向かってみた。外部アンテナは車外にマグネットで固定して利用した。移動しながらの視聴のため、視聴状態は同乗者に依頼し、検証を行なった。
板橋区内の移動中は相変わらず受信状況はあまりよくなく、一度安定したと思っても、2~3分視聴していると音声や映像が途切れ途切れになることもしばしば。 ところが、県境を越えた辺りから途端に電波の受信状況がよくなっていき、戸田/浦和/与野辺りまで国道17号線沿いをドライブしてみたが、地上走行時はあまり途切れることなく視聴が楽しめた。地方であっても、幹線道路沿線や、人口の多い地域であれば受信状態は悪くないようだ。 ただし、周囲を壁が覆っているような状態の場所では受信できず映像が途切れてしまった。また、東京から離れるほど、日本テレビやテレビ東京などの一部の局については、かなり受信しにくくなる場合もあった。 こうした微妙な状況下では外部アンテナが効果を発揮した。ロッドアンテナのみのgigabeat V30Tが車内で受信に失敗するような状況下でも、DH-ONE/U2では正常に視聴が行なえるような場面が多々見られた。 ■ ワンセグユニット大本命? 録画データのムーブなどに期待 一通りDH-ONE/U2の機能を使ってみたが、視聴/録画ソフトのPCastTV for ワンセグは、余計な機能を削ぎ落としシンプルなつくりに仕上がっており、あまり難しく考えることなくワンセグ視聴や録画が楽しめる。 画質は解像度も低くフレームレートも低いため、これで何かを保存して保管しておこうとは思わないが、メモ用途やニュースの内容をチェックするなどの目的でちょこっと番組を録画するような場合にはちょうどいい。ただこれら録画した番組を、再生して視聴する以外に何も利用できないのは残念なところ。通常の地上デジタル放送とは異なり、元々低解像度のワンセグデータなので、DVDへの書き出しや、他のPCで再生可能にするなど、今後の制限の緩和などに期待したい。 9月に入って盛り上がってきたPC用ワンセグユニットだが、いきなり大本命の製品が登場した印象だ。自宅で受信できるかが不安な人も多いと思うが、実売で1万円強になりそうなので、とりあえず買ってきて試してもいいと思う。家で使えなくても、会社のPCや、モバイルノートと組み合わせて、電車通勤時に使うなど、利用の幅も広いので、1台買ってみて損のない製品と言える。 □バッファローのホームページ ( 2006年9月26日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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