|
三鷹の森ジブリ美術館は16日、アニメーション映画の配給事業への参入を発表。劇場は渋谷にあるシネマ・アンジェリカを使用。また、配給した映画のDVD化はブエナ ビスタ ホーム エンターテイメントが担当する。
東京・三鷹市にある「三鷹の森ジブリ美術館」は、スタジオジブリの作品をメインに、アニメーションに関連した展示を行なっている美術館。スタジオジブリでは2006年夏にフランス初の長編アニメ「王と鳥」('52年)の国内上映に協力。美術館の方でもジブリ作品以外の世界の優れたアニメを展示/紹介していたが、そうした活動の発展形として、アニメ映画の配給も行なうことになったという。 第1回提供作品として、ロシアの巨匠、アレクサンドル・ペトロフ監督の最新作「春のめざめ」(27分)を3月17日よりシネマ・アンジェリカにて上映。さらに、「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」の第1弾として、4月4日にブエナ・ビスタが「王と鳥」のDVDをリリースする予定だ。
DVDは2枚組みのスタンダード版(VWDZ-8710/4,935円)、3枚組みのエディシオン・コレクトール版(VWDZ-8712/6,825円)を用意。どちらも「王と鳥」以外の短編アニメも収録する。
■ アニメは美術品ではない? ジブリ美術館の中島清文館長は映画の配給/DVD化という新事業について「ジブリ美術館の館主である宮崎駿監督は“アニメは美術品ではない”と公言している。アニメの中から1枚の絵を抜き出して額に飾っても意味がない、アニメは動いてナンボという意味で、確かにその通りだと思っていた。そこで、アニメそのものを紹介する事業も展開することにした」とキッカケを語る。 また、昨年夏に行なわれた「王と鳥」の上映を振り返り「非常に好評で、アートアニメに対する確かなニーズを感じた。それならば、常設の上映場所を作ろうと考えた」という。
畠中基博氏は「もののけ姫」以降のジブリ作品でキャスティング・プロデュースを担当。現在はシネマ・アンジェリカの代表を務めており、「王と鳥」も同館で上映されるなど、ジブリとの関係が深い。それに関連して、ジブリ美術館配給作品の上映館になったという。「非常に面白い試みだと感じている。アニメの楽しさを広めるためにも、微力ながら協力したい」と意気込みを語った。 DVD化を担当するブエナ・ビスタの塚越隆行日本代表は「今までもアートアニメのDVDはあったが、どちらかと言えばアニメファンのみに向けたものだった。ブエナ・ビスタはより多くの人に作品を届けることをテーマに活動しているので、一部のファンだけでなく、多くのお茶の間にこうした作品を届けていきたい」とした。 今後は春休み、夏休みなど、長期の休みシーズンを節目として新しい作品を上映していく予定。すべての作品がDVD化されるかどうかは未定だが、できるだけDVD化も連動させたいという。
■ 油絵アニメ「春のめざめ」を上映 発表会では「王と鳥」のトレーラー映像と、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の短編アニメ「岸辺のふたり」、さらにアレクサンドル・ペトロフ監督の「春のめざめ」が上映された。「岸辺のふたり」は8分の短い作品だが人が人を想い続ける儚いが鮮烈に描かれている。
「春のめざめ」は油絵アニメーションと呼ばれるジャンルで、その名の通り、油絵がそのまま動いているかのような映像が特徴。ガラスやアクリル板に油絵の具で1コマづつ描いていくのだが、描いた絵に重ね塗りをしながら次のコマを描いていくため、セルアニメのように1枚1枚が残らないという。
その独特の映像からくる不思議な重厚感と、官能的な人物描写は素晴らしく、16歳の少年アントンの初恋の甘さや、残酷なまでの思春期の心の揺れが瑞々しく描き出されていく。上映後は集まったマスコミ関係者から盛大な拍手で称えられた。
発表会には、同作品のアレクサンドル・ペトロフ監督も参加。監督は「興行的な規模が大きいアニメ作品は皆さんによく知られていますが、私をはじめとして、アート系アニメと呼ばれる作品も数多く存在します。それらは映画祭などで1回くらいは上映されるのですが、それ以降は上映される機会も無く、DVD化もされず、埋もれていく作品が多い」と、アートアニメをとりまく現状を説明。 「そんな中、私の作品がこうして多くの人に楽しんでいただけるのはこの上ない幸せであり、幸運です」と喜びを語った。なお、最新作の「春のめざめ」はロシア国内でもまだ上映されておらず、一般の劇場での上映は、今回の発表会が初めてだという。
□ジブリ美術館のホームページ
(2007年1月16日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|