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RIAJやNHKが東條英機の声など7万音源をデジタル化
-「歴史的音盤アーカイブ推進協議会」設立。Web公開も


4月27日発表


 社団法人日本レコード協会(RIAJ)や日本放送協会(NHK)、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)など6団体は27日、「歴史的音盤アーカイブ推進協議会」(HiRAC:Historical Records Archive Promotion Conference)の設立を発表。都内で記者会見を行なった。

 同協議会は、歴史的・文化的資産とみなされる放送音声や音楽などが記録されたSP盤レコードや金属盤の音源をデジタル化してアーカイブとし、公共財として活用することを目的に設立。参加団体としてRIAJやNHK、JASRACに加え、社団法人日本芸能実演家団体協議会、財団法人日本伝統文化振興財団、特定非営利活動法人映像産業振興機構が名を連ねている。

 保存されるのは、1900年初頭~1950年頃にかけて国内で製造されたSP盤/金属原盤に収録された約7万曲/音源。内容は演説などの記録音声や楽曲、映画の説明音声などで、1943年の東條英機による大東亜共同宣言の実況録音や、1947年に録音されたNHKの放送劇「鐘のなる丘 第1編」、1959年に発売された、永六輔作詞・中村八大作曲の「黒い花びら」(映画「青春を賭けろ」主題歌)などが含まれる。

 かつて録音メディアとして用いられていたSP盤は、当時としては音質・耐久性共に優れるとされていたが、劣化や破損、散逸などの問題が起きているという。そこで、音源をデジタル音声としてアーカイブ化し、広く活用できるように公開する。

東條英機の大東亜共同宣言(左)や映画「大義」の説明音声(中)、童謡「ドンブラコ」(右)などが歴史的音源の例として紹介された

破損したSP盤 金属原盤

 協議会では、収録時の音声フォーマットなどを検討する技術検討部会と、アーカイブの利活用に関する運用ルール策定などを検討する運用検討部会を設置。今後のスケジュールとしては、2007年度に約1,000曲で試験運用のプロトタイプを作成。2008年度からメタデータの整備や音源のアーカイブ化を開始、2010年度からアーカイブの公開や利活用の準備を進め、2011年度からの公開を目指す。

 具体的な公開方法は検討中だが、「レコード店の試聴機のようなものを図書館など公共施設に設置して試聴する方法」などをイメージしており、ウェブ上での公開も検討。利活用には、別の新たな組織で行なうことも考慮するだろう」としている。

 協議会は保存や公開、管理/運営を担当し、営利行為は行なわない。財源としては協議会内での負担に加え、国からの助成金などが想定され、「文化庁や関連省庁にお願いしている段階」としている。



■ 宝探しのような楽しみで

代表幹事の廣瀬禎彦氏

 代表幹事を務める、コロムビアミュージックエンタテインメント社長兼CEOの廣瀬禎彦氏は、「一昨年、川崎のCDプレス工場を閉鎖したときに、作業で出てきたSP盤の中に有名な詩人の朗読を収めた盤が見つかり、驚いたことがあった。この活動の道のりは長く、難しいことを考えるときりがないが、宝探しのような楽しみを持ちながらアーカイブを作る」とコメントした。

 NHKの原田豊彦専務理事 放送総局長は、「放送番組を保存し、継承、活用することは大事なことととらえているが、音源についても同様にアーカイブ化することは大切。音楽文化に加え、放送文化という観点でも意義深い」とした。

 また、「私もSPや金属盤の時代はほとんど知らないが、レコードが主な録音装置だったころの話では、録音することは“円盤を切る”といわれていたと聞く。今、NHKでもSPレコードは1万6,000枚ある。今回の活動に参加することで、クリアな音で残し、将来も活用したい」と述べた。

 ビクターが1993年に設立した日本伝統文化振興財団の藤本草理事長は、「大正から昭和にかけての時代は、日本の音楽界にとって後世に残すべき名人が多かった。ビクターが創立した昭和2年に専属第一号だった筝曲の宮城道雄さんが残した楽曲は、今でもLPやCDで聴けるものもある。しかし、それ以外に40~50ほどある伝統ジャンルの音楽は、売れると判断されたもの以外は再活用されていない。こういった中に日本の文化の財産が詰まっており、これらをデジタル化して、海外にも伝えていきたいという夢がスタート地点に立った」と述べた。

 RIAJの佐藤修会長は、「書籍なら国会図書館、映像なら国立フィルムセンターがあるが、音楽は未着手。個々のレコード会社で行なうには限界がある。統廃合も進んでいるレコード会社において、外資では歴史的価値の評価が一定していないことから、既に散逸は始まっている。今が残せるかどうかの岐路」とした。

NHKの原田専務理事 放送総局長 日本伝統文化振興財団の藤本草理事長 RIAJの佐藤修会長

日本芸能実演家団体協議会の会長で、狂言師の野村萬氏「世阿弥が“命には終わりあり、能には果てあるべからず”と言ったように、この活動が肉体の限界を超えて芸の伝承の鑑として機能することが大切」 JASRACの吉田茂理事長「流行歌や、音楽そのものの美しさ・楽しさはもちろん、生活の中での情感、世相を伝える音源が散逸の危機にある。歴史の闇の向こうに消えないように努力したい」 映像産業振興機構の石川知春事務局長「音楽以外にも、放送に利用されたものなど文化的な意味がある。この時期に始めなければ失われるものが多い」

□NHKのホームページ
http://www.nhk.or.jp/
□日本レコード協会のホームページ
http://www.riaj.or.jp/
□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□日本芸能実演家団体協議会のホームページ
http://www.geidankyo.or.jp/
□日本伝統文化振興財団のホームページ
http://www.japo-net.or.jp/
□映像産業振興機構のホームページ
http://www.vipo.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.riaj.or.jp/release/2007/pr070427.html

( 2007年4月27日 )

[AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]


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