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薄型テレビ購入ガイド 2007夏
【その1】購入前のチェックポイント



 普及率が20%を突破し、「クリティカルマスを超えた(総務省)」という薄型テレビ。2011年の地上デジタル完全移行を睨み、国内だけでも2007年度は800万台、2011年には1,100万台規模の市場となる見込みだ(ともにJEITA予測)。

 放送のデジタル化/高画質化だけでなく、薄型かつ省スペースというメリットもあり、購買増に繋がっている。ただ、2006年度実績で、30%超の価格下落が起きるなど、なかなか買い時の見極めが難しい。

 しかし、放送だけでなくBlu-ray DiscやHD DVDなどのハイビジョンディスクも登場した現在。オーディオビジュアルにこだわる人にとっては、もはや無視できない製品だ。今回は、HDコンテンツ視聴にこだわるテレビ選びの基本をまとめてみた。

 「テレビ」とひとことで言っても、一人暮らしや家族での利用など、その利用環境によって、必要とされるサイズやスペックは大きく異なるが、「大画面」と「フルHD」の2つのキーワードを活かしたテレビ選びを提案したい。


■ リビング用途では大画面を。フルHDにこだわるテレビ選び

 購入時にもっとも重視されるのは「予算」だろう。10万円、20万円という限られた予算の中で、最良のものを選ぶ、というのは非常に明確な指針ではある。しかし、リビングに据えるメインテレビは、買い換えサイクルが平均10年前後と長く使う製品。それだけに、こだわりも盛り込みたいところだ。

 各メーカーによれば、現在主流で値ごろ感のある32~37型のテレビ購入者へのアンケートでは、「もう少し大型にすればよかった」との意見が多いという。大画面であればあるほど迫力ある映像を楽しめる。気軽に買い換えられないからこそ、部屋や設置スペースの許す限りではあるが、薄型のメリットを活かして、大型にこだわりたい。最高の臨場感を求めるのであれば、「予算が許す限り大型」がひとつの指針となるだろう。

 さらに、デジタル放送だけではなく、Blu-ray DiscやHD DVDなどを楽しむことを考えれば、「フルHD」も重要なキーワードだ。液晶/プラズマともにフルHD対応機器が増え、選択肢が多くなっている。コンテンツの画素情報をフルに体験するのであれば、フルHDにこだわりたい。

 サイズについては、部屋の大きさや視聴環境という、設置スペース上の制約があるため、おのずと限定されてくるが、デバイスについては、「液晶」と「プラズマ」の2つの選択肢がある。この選択も悩ましい。

 フルHDという観点では、液晶は32型から、プラズマは42型から設定されている。液晶では標準的に37型がフルHDが製品ラインナップに用意されており、参入メーカーが多いことから選択肢も多い。

 対するプラズマは、松下電器の42型フルHD「TH-42PZ700」が30万円半ば~40万円代前半だが、それ以外は50型以上になってしまい、価格も50万円台に跳ね上がる。つまり、10万円台後半~30万円程度の、ボリュームゾーンにおいては、実質的には液晶以外の選択肢は無い状況だ。

 ただし、高精細化が難しく、フルHD化が遅れていたプラズマテレビにおいても、「TH-42PZ700」のように42型でフルHDという製品も出てきている。50型以上では松下、日立、パイオニアのプラズマ3社がいずれもフルHDモデルを用意している。

 フルHDにこだわれば、当面は40型前半までは液晶、50型以上はプラズマと液晶から選択するというのが、現時点では現実的だ。ただし、デバイスの特性を考慮に入れると、1,024×768/1,366×768ドットなどのHDパネル搭載のプラズマ製品も、残像感の無さや明るさなど、このクラスのプラズマならではの特徴を有しており、価格面での競争力も高いことは留意したい。


■ 用途とデバイスの特性を考慮したテレビ選びを

 解像度やサイズだけでない、こだわりを盛り込むとなると、当然液晶とプラズマの選択には、各デバイスの特徴を把握する必要がある。

 おおまかに、各デバイスの得手/不得手は以下のとおりになる。

メリットデメリット
液晶 高精細化が容易
サイズの選択肢が豊富
リニアな階調表現
リビング利用に耐えうる明るさ
参入メーカーが多い
動きのある映像での残像感
黒の表現(バックライトによる黒浮き)
暗所コントラストが弱い
プラズマ 黒の表現(黒浮きが少ない)
動画解像度(残像感の少なさ)
高コントラスト
小型/高精細モデルで輝度が不足
高精細化が難しい
映り込みが多い

 一般的にプラズマはコントラスト性能に優れ、残像感が少ないという特性がある。また、黒が浮かないため、映画やリッチなコンテンツをじっくりと鑑賞するのに適している。松下電器がVIERAで「映画を見るならプラズマ」というキャッチフレーズをアピールしていたのも、こうしたプラズマの特性に拠るものだ。

 また、フルHDに限らなければ、HDパネル(1,024×768/1,024×1,080ドットなど)採用のプラズマ37~40型台のプラズマは、こうしたプラズマの特性を活かしながら安価な価格設定となっている。

 一方、比較的明るいリビング用途で日常的にみるのであれば液晶がいい。フルHDにこだわれば、40~50型の同サイズのプラズマと液晶の比較においては、圧倒的に輝度が高い。リビングでの利用を想定すれば、液晶にアドバンテージがある。

 ただし、こうした前提はあくまで一般論。両陣営とも「欠点」の克服には力を入れている。

 液晶の弱点とされる「動画ボケ(残像感)」については、120Hzの倍速駆動を導入し、ボケを改善した製品が各社から投入されている。フルHDモデルに限っても、シャープ、ビクター、日立が対応製品を発売。さらに、各社のフラッグシップモデルでも導入が見込まれる。

 また、コントラストや黒浮きについても、パネルの製造技術の改善や、バックライトの進化などが進んでいる。

 プラズマに関しては、42型でもフルHDに対応するなど、ボリュームゾーンのフルHDラインナップを強化。さらに、映りこみや消費電力の改善など、従来の弱点をかなり克服しつつある。焼きつきや、小型フルHDモデルにおける輝度や消費電力に課題は残ってはいるが、大型での画作りや価格競争力は一日の長がある。


■ 録画機能や入力端子に注目

VIERA Linkでテレビとレコーダ、周辺機器を連携

 サイズや画質はもちろん、使い勝手を左右するのは、入力端子やインターフェイスなど。

 たとえばテレビ番組録画を行なうのであれば、HDMIを介したレコーダとの連携機能や、テレビの内蔵HDDレコーダなどは、注目ポイントとなる。

 シャープ「AQUOS」や、松下電器「VIERA」では、こうした連携機能により、レコーダの使い勝手向上を図っている。対応レコーダを持っている場合や家族がAV機器の操作に強くない場合などは、当然考慮したい。

 また、HDDレコーダ内蔵テレビも、日立や東芝が発売しており、最新モデルではiVDRやeSATAなどのHDD拡張なども盛り込むなど進化を続けている。レコーダを内蔵するにせよ、連携するにせよ、「録画」を念頭においた製品選びは重要な要素といえる。

iVDRに対応した日立「Wooo L37-XR01」 外付けeSATA HDDへのムーブに対応した東芝「REGZA 42H3000」


 外部機器との連携を考えれば、なにはともあれHDMI端子の搭載は必須だ。それも数が多ければ多いほどいいといえる。

PZ700シリーズは前面にHDMI端子を装備する

 現在のデジタルレコーダや、BD/HD DVDプレーヤーの多くはHDMIを標準出力端子として定義している。特にハイビジョンディスクの映像をそのままデジタル出力する、という点で、無くてはならない端子だ。DVDにおいても1080i/pへのアップコンバート出力を利用するのであれば、HDMI端子は必須である。

 現行の大手メーカー製テレビはほぼ間違いなく、HDMI端子を備えている。ただし、最近ではPLAYSTATION 3(BDプレーヤー)や、HD DVD/DVDプレーヤーなどのプレーヤー製品、ハイビジョンレコーダだけでなく、ビデオカメラやデジタルカメラでもHDMIを備えた製品が増えている。

 VIERA PZ700シリーズでは前面にHDMIを備えており、ハイビジョンビデオカメラなどの視聴時の接続端子としても使われだしている。大手メーカー製テレビでは、すでに2~3ポートのHDMI入力を備えているが、それでも足りないほど。HDMIは多いに越したことは無い。

 また、HDMIについては、1080/24pの直接入力対応、x.v.Color対応などのさまざまな特徴を有した製品もある。対応機器を所有していたり、購入を検討しているのであれば、こうした点も選択時には注目したい。

 このように、販売店に実際に出かける前に、「サイズ」と「価格」以外に、「利用目的」、「必要な端子数」、「録画機などとの連携」も考えておきたい。「映画よりテレビ番組がメインになりそう」、「レコーダはあの機種を買う予定なので、同じメーカーのテレビで連携しよう」など、大雑把でもシミュレートしておくと良い。

 また、HDMI端子数の不足などは、HDMI切替機や対応AVアンプを導入することで、解決できることもある。その場合は、それらの予算も考慮しなければならない。“薄型テレビを中心とした、どのようなシステムを構築するか”を考えながら、お店に向かおう。


■ 販売店でのチェック時の簡単な注意点

 カタログやインターネット上の情報、雑誌などで、ほとんどの情報は手に入るとはいえ、やはり使い勝手や画質については、実際に自分の目で見て確認してみるのがいい。実際に、サイズや予算が決まったら、実機に触れてみよう。

 販売店の店頭ではテレビ放送のほか、各メーカーが用意したデモ映像などが、表示されている場合が多い。専門店でなければ、お気に入りのディスクを持ち込んでの画質チェックは、なかなか行ないづらいが、簡単に注意できるポイントもあるので、紹介しよう。

 ポイントは以下の5つだ。それぞれ順を追って解説していこう。

  • 店頭の明るさ
  • サイズ
  • テレビとの距離
  • デモ機の「映像モード」
  • デモ用コンテンツ

 最初の「店頭の明るさ」というのは、実際の家庭と店頭での明るさの違いのことだ。販売店店頭は「非常に明るい」のだ。

 店頭は、数百ルクスから最高で2,000ルクスと非常に明るい。一般的な家庭では100~200ルクス程度なので、家庭とは見え方が異なってくる。店頭で家庭と同じ明るさを求めるのは難しいが、実際の視聴環境では、店頭ほど高い輝度は求められない、ということを留意しながら各機種の画質をチェックしたい。

 隣の機種と比べて、「暗い」とい感じても、リビングに持ち込めば十分な輝度はある。輝度設定が同条件になっているかも、確認したいポイントだ。

 サイズというのは、自室と店のスペースの違いのこと。大抵の家庭より販売店のほうが広いので、購入後に実際に家庭に設置してみると、「思いのほか大きい」、あるいは「置けない」ということも起きうる。購入前には、実際のサイズのイメージはしっかり持っていたい。事前に設置スペースの実寸を図っておき、店頭で比べてみることでより家庭内での利用イメージがつかめるようになるだろう。

 また、テレビとの「距離」も重要だ。平均的な家庭では、テレビから視聴位置までの距離は1~3m程度。店舗で見極める前に、まずは自室の視聴距離をしっかり把握しておきたい。その距離をもとに、店頭でテレビを見ると、実際の利用時に近い評価が行なえるだろう。

Wooo L37-XR01の画質モード

 画質面での注意点は、展示機の画質モード。店頭デモ機では、「ダイナミック」、「スーパー」、「あざやか」など、高輝度かつ店頭映えのする画質モードになっていることが多い。

 こうした表示モードの場合は、明るい店頭向けのチューニングのため、白飛びが酷かったり、階調表現がおかしいという事例が多い。最近ではかなり出来のいい、高輝度モードが用意されてはいるとはいえ、基本的にこれらは店頭デモや日中の利用向け。通常、[スタンダード]、[標準]といったモードが、家庭の明るさにあわせて各社がチューニングしているものだ。

 実際の家庭での利用時に近い画質でチェックするという点においては、この画質モードの確認はぜひ行なっておきたい。もちろん、家庭内での利用においても、できれば高輝度モードでの利用は控えたほうがいいだろう。

 デモ用コンテンツについても注意したい。店頭では、派手で輝度が高い南国の映像などが流されている場合が多いが、比較用としてはあまり参考にならない。人肌の滑らかさなど、見慣れた映像で確認したい。チューナが繋がっている場合は、実際に放送に切り替えて選ぶというのもいいだろう。いずれにしろ、見るポイントを考えながら、確認したい。

 また、使い勝手面でも簡単にチェックできる点がある。重要なのは、電源投入からの起動時間や、チャンネル切替、入力切替のレスポンスなど。特にチャンネル切替は日常的に行なうだけに、重視したいポイントだ。

 現在のデジタルテレビにおいては大体2~5秒弱で切り替わるが、それでも機種やメーカーによって大きな使い勝手の差がある。また、チャンネル切替後、切り替わるのは3秒後でも、0.5秒程度で番組情報や切り替わる先のチャンネルが表示されると、さほど待たされる感覚はない。しかし、単に黒画面が表示されるだけだと、同じ3秒で切り替わってもかなり待たされる印象がある。

 これらは、実際に店頭でチューナがつながっていれば確かめられる。同様に電子番組表(EPG)画面も各社が独自に作り込みを行なっているので、好みの表示方法や見易さをチェックしたい。

 操作を行なうリモコンについても、持ちやすさやボタンの配置などがかなり異なっている。このあたりの自分の利用スタイルになじむか、チェックしたい。特にリモコンと番組表は、テレビを使う皆が利用する部分。家族の意見も参考になるだろう。

 次回では、この夏モデルのトレンドを技術や製品仕様の面から紹介する。

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フルハイビジョン液晶テレビ 2007年新製品/現行モデル
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070501/lcd2007.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070501/pdp2007.htm

( 2007年6月12日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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