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国内ケーブルテレビ業界で最大規模の展示会「ケーブルテレビショー 2007」が、東京ビッグサイトで開幕した。期間は6月14日から16日まで。主催は日本CATV技術協会と日本ケーブルテレビ連盟。入場は無料だが、会場での登録が必要。 今年のテーマは「ケーブルテレビが応援します! あなたのデジタルライフ」。出展社数は134グループ188社。昨年は3日間合計で85,254人が来場している。 STB市場ではHDD内蔵タイプの人気が高いが、今年のトレンドとしては、HDD非搭載のSTBに録画機能を追加する外付けHDDをパイオニアと松下電器が発表。注目を集めている。
■ パイオニア パイオニアのブースでは、年内の発売を予定しているという新STB「BD-V700」が参考展示されている。HDDを内蔵しないSTBだが、外付けHDD「BHD-V320」を接続することで、録画機能を追加できるのが特徴。 外付けHDDの開発はアイ・オー・データ機器が担当。同社がPC用外付けHDDとして展開しているカートリッジ交換タイプ3.5インチHDDの「Relational HD」を採用しており、容量は320GB。HDD自体はシリアルATAタイプで、STBとHDDの接続にはeSATAを使用する。本体、HDDとも価格は未定。
「HD放送を録画する中で生じるHDD容量の不足と、故障時の修理対応の面から外付けHDDを採用した」(パイオニア)としており、HDDとSTBの認証は行なうが、HDDに録画したコピーワンスコンテンツは、STBを修理したり交換した後でも引き続き再生できるようになる予定。 本体とHDDの提供方法は採用する事業者によって異なるが「カートリッジタイプのHDDを採用しているので、ユーザーが気軽に追加HDDを購入/増設できるようにしたい。家族の1人1人が自分のHDDを持つような利用提案をしたい」(同社)という。
STBはOFDM/QAMの両方式に対応し、地上/BS/CATVのデジタルWチューナを内蔵。2番組の同時録画も行なえる。端子などの詳しい仕様は未定だが、HDMI端子を備え、ケーブルモデムも内蔵。Eternet端子も備えるという。同社民生用DVDレコーダと同様に、EPGからの予約録画なども行なえる。
ほかにも、PPD(Pay Per Day)と呼ばれる、有料チャンネルを1日単位で課金できるシステムを参考展示。STBのGUIから手軽に1日視聴権を購入するサービスを提案。また、技術検証用に開発したというIP-STBも展示。H.264 MP@L4 1080i/720pの映像デコードが可能だという。
■ 松下電器 松下電器のブースでは、13日に発表した新STB「TZ-DCH520」と「TZ-DCH820」を展示。HDDを内蔵したTZ-DCH2800シリーズとは異なり、HDDは内蔵していないが、パイオニアと同様、別途250GB HDDユニット「TZ-HDD250」を追加できるのが特徴。いずれも9月発売を予定している。 「TZ-DCH520」は標準モデルでトランスモジュレーションのみ対応。「TZ-DCH820」はOFDMチューナを内蔵し、パススルーにも対応する。HDDを追加して録画する場合は、EPGからの予約や再生ナビ、追っかけ再生なども利用可能。6月より提供されているTZ-DCH2800/2810と同等の機能を備えているほか、子供に見せたくないチャンネルなどをスキップさせる機能や、オフタイマー機能も追加されている。
HDDユニットのデザインは「TZ-DCH520/820」と同系統で、フロントパネルのカーブラインなども共通。ピッタリと横付けすることで、TZ-DCH2800/2810とほぼ同じ幅になる。接続はi.LINKで、コピーワンスコンテンツの録画も可能。TZ-DCH2000/2800/2810にも増設可能で、1台のSTBに2台まで接続できる。直接録画、またはムーブした番組は、他のSTBにTZ-HDD250をつなぎ変えても再生可能だ。
また、同社ブースでは「マルチルームSTB」と呼ばれる、同軸ケーブルを利用した高速ホームネットワークシステムを参考展示。HDD内蔵のSTBとc.LINKモデムをLANで接続。モデムを介して同軸ケーブル経由で他の部屋のc.LINKモデムとSTBに映像を伝送。リビングに置いたHDD内蔵STBに蓄積した番組を、寝室のHDD非搭載STBで再生することができるという。
「DLNAなどの標準規格は利用していない。製品化される際にどのような方式を採用するかは未定」としており、「あくまでHDD内蔵STBがより一般化し、搭載HDDが大容量化した際の利用提案の1つ」だという。
■ 各社のSTB
マスプロの「DST62」は業界で初めて、縦置き/横置きの両方に対応するSTB。今秋発売を予定しており、地上デジタルのパススルーに対応した「DST62」と、トランスモジュレーションのみ対応の「DST62T」を用意。リマックス、i-HITS、JC-HITSもサポートする。 ACアダプタを採用したことで、従来製品に比べ約1/2(体積比)に小型化。外形寸法は60×165×240mm(幅×奥行き×高さ/スタンド除く)、重量は約0.9kg。縦置きも可能。EPGは8日間分の番組表が表示可能。映像出力はD4端子1系統と、コンポジット2系統を備える。標準リモコンに加え、別売で簡単リモコンも用意する。
また、マスプロではIP通信とケーブル放送をシームレスに活用できるというIP-STBの試作機を展示している。放送の受信と同時に、IPベースで配信される広告やテロップの受信やWebブラウジングが可能。地域情報や緊急放送の受信端末としてSTBを活用できるほか、ネット経由で外出先からSTBを制御することも可能。MPEG-2/4、H.264、WMV9(VC-1)などのデコードに対応可能で、VODやゲームもサポートできるという。
DXアンテナでは、4月に発売した地上/BS/110度CSデジタル放送対応のデジタルチューナ「DIR-401」を展示している。同社従来製品の「DIR-301」から体積比で約38%小型化しており、D3端子などを備えている。Ethernet端子も用意しており、アクトビラにも対応する。 Scientific Atlantaの「IPN330HD IPTV」は、MPEG-2/4、H.264、VC-1(SD/HD)のデコードに対応したSTB。最大16個の子画面表示が可能で、前面のUSBホスト端子からデジタルカメラ内の静止画を表示できるなど多機能なモデル。「採用してくれる事業者を探しているところ」だという。 伊藤忠ケーブルシステムは、HUMAXの地上/BS/110度CSデジタルチューナ「JC-4000/4000R」を展示。D4出力を備えるが、HDMIは非対応。さらに、HDMIとD4を搭載し、i-HITSやJC-HITSにも対応したエントリーモデルとして「JC-4100R」を参考展示している。
■ アクトビラのVODサービスは秋スタート
松下電器のブース内では、テレビポータルサービスがアクトビラのデモを実施。Interop Tokyoの基調講演で明らかにされたように、アクトビラでは2007年秋にストリーミングでのVODサービスの提供を予定しているほか、2008年中にはダウンロード配信サービスも開始する予定。来場者からはそれに関する質問が相次いでいる。 テレビポータルサービスのマーケティンググループ グループマネージャーの末吉現史氏によれば、当初のストリーミング配信ではH.264フォーマットを採用し、ビットレートは6Mbps程度を予定。HDコンテンツも用意し、DRMはMarlinを採用するという。
Marlinを採用したことで、現在発売されているアクトビラ対応テレビでVODサービスをそのまま利用するのは難しい。「ファームのアップデートで対応できるモデルなどもあると考えられるが基本的には“アクトビラのVOD対応”を謳ったモデル向けにサービス提供する予定」(末吉氏)だという。「テレビメーカーと足並みを揃え、VODサービススタートと同時期に、対応テレビがリリースされるのが理想。調整を行なっていきたい」とした。
■ 日本アンテナ 日本アンテナのブースには、地上デジタル放送用のUHFアンテナ2モデルが参考展示されている。「Atredia ARB-D1」は、ブースター内蔵の室内アンテナで、7月発売予定。価格は未定。アンテナ部の素材にグレースモーク樹脂を使用しており、インテリア性を意識したデザインが特徴。ダブルループを採用している。内蔵ブースターの利得は11~18dB(目安)。壁掛けにも対応する。 UDF80は、14素子相当の薄型アンテナで、屋外、屋内の両方の設置に対応する。ツインラジエーター合成方式を採用しており、取り付け金具の向きを変えるだけで、送信所による水平(横波)/垂直(縦波)偏波に対応できる。ブースターは非搭載。発売時期や価格は未定。
ほかにも、MPEG-2 TSを最大4ch多重化し、20kmを超える光伝送ができる「TS-マルチプレクサ/デマルチプレクサ 光LINK伝送装置」を展示。局間通信での使用を想定しており、例えばHDカメラとSDカメラで撮影した映像を多重化し、他のCATV局に伝送、分離して表示するといったことができる。
■ そのほか コンテンツメーカーのコーナーでは、ビックカメラなどが出資する日本BS放送がブースを出展。2007年12月1日に、BSデジタルに新設されるチャンネル「BSデジタル11」の紹介を行なっている。チャンネルは11chで、無料放送を予定。団塊の世代向けの落ち着いた雰囲気の番組や、テレビの原点である生放送にこだわったニュースやスポーツ番組を提供していくという。詳しい放送の内容は、秋頃に明らかになる予定。 カノープスのブースでは、プロフェッショナル向けビデオ編集ソフト「EDIUS Pro」の最新バージョン「EDIUS Pro version 4.5」を紹介。一新されたGUIデザインや、AVCHD/AVC-Intraなど、最新フォーマットへの対応強化も図られている。
□ケーブルテレビショーのホームページ
(2007年6月14日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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