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キヤノンは28日、同社のデジタルビデオカメラに採用されているレンズやCMOSセンサー、圧縮信号処理LSIなどの技術を解説する技術セミナーを開催。基礎的なビデオカメラの知識や、同社独自技術が持つ優位性などについて説明を行なった。
同セミナーは、日ごろから同社に寄せられる疑問について解説を行ない、技術や製品への理解を深めることが目的で、今回が6回目。 講師を務めたDCP第二開発センターの平沢方秀副所長は、これまでのビデオカメラについて、撮影部と記録部の筐体が分かれていた「VC-10」('81年)などの製品から、2005年に始まったとするHD化までを振り返り「このような変遷の中で、キヤノンが目指したのは業界No.1の高画質」とし、その要素である各技術について説明した。 ■ DIGIC DV IIの進化やハイスピードAF、NR技術を説明
カメラ部では大きくレンズ、センサー、カメラ信号処理LSI、AF、IS(手ぶれ補正)の5つの要素別に解説。これらのキーコンポーネントを内製化してきたことで、「“感動してもらえる画質”実現に向け、思うように設計が行なえた」と強みをアピール。 2006年のセミナーでは、高画質レンズの条件などを中心に解説されたが、レンズについてはビデオカメラの課題とする、絞りによる回折光対策を中心に説明。 より絞った状態で発生しやすい回折光の影響を抑えるため、“ビデオカメラ用のサングラスの役割”を果たすNDフィルタをかけるが、フィルタが半がかりの状態では、その隙間のせいで逆に回折が起きる問題がある。同社は独自の「グラデーションNDフィルター」を採用し、極端な隙間の発生を防ぐことで、回折光が明らかに低減できたという。
撮像素子については、スミアレス/低消費電力/高速化が容易といったCMOSの長所を挙げた上で「画素ごとの特性バラつきによる固定ノイズなどを取り除けば、CMOSは優れたセンサー」として、同社の固定ノイズ/ランダムノイズ対策について解説した。 ノイズ除去回路では、画素読み出しの前段階でランダムノイズを検出、記憶した上で読み出し後に固定パターンノイズを検出。信号+ランダム/固定ノイズからノイズ部のみを差し引くことで信号のみを出力可能にする。また、同社が採用するフルHD CMOSのベイヤー配列について、R/G/Bの画素バランスの良さなどから偽色の発生を防ぐとし、「斜め配列の方式では、電気的な処理で実際の画素以上の解像度向上が図れるが、輝度を左右するGの画素の割合が多くなり、B/Rが少ないため偽色の原因になる」と指摘した。
画作りを受け持つカメラ信号処理LSIについては、静止画の圧縮/伸長やAE/AWB制御、デジタルエフェクト、メモリーカード制御も行なう独自の映像エンジン「DIGIC DV」の特徴を中心に紹介。 平沢氏は「動画と静止画それぞれを最適処理する」という同社の方針を踏まえ、「色や輝度の処理を別々に行なうことで適した画質を再現する」と説明。現行の「DIGIC DV II」では、色信号の処理精度を従来の2倍に上げ、再現性を2倍に向上。新しいノイズリダクション機能により、空や肌など平坦部のノイズ除去を強化している。さらに、高集積化による業務用/民生用製品の共通プラットフォーム対応、高速化による静止画機能の向上などの利点を挙げた。
AF機能については、外測センサーを追加することで速度を向上する「ハイスピードAF」の特徴を紹介。一般的なTV-AFでは、コントラストの値だけを元に測定するためジャストピントまでに時間がかかり、レンズ移動量の大きさから、映像がフワフワとし、HD映像では特にその欠点が浮き彫りになると指摘。 「ハイスピードAF」では、三角測量と同じ技術で瞬時に対象までの距離を測定、ある程度のところまでは高速にレンズを動かし、TV-AFでジャストピントまで調節するという方式を採用。会場では実際にデモ映像を利用して、フォーカス速度の違いを比較。夜景など、もともとコントラストの高い映像においても、速さの違いがはっきりと見て取れた。 手ぶれ補正技術では、光学手ぶれ補正(OIS)のうち、ジャイロセンサーで被写体の角速度を測定/検出するジャイロ検知と、撮像素子の1フレーム前の映像を比較してぶれの量を検出するベクトル検知について説明。肩乗せなど、低速のぶれについてはベクトル検知で、車での移動など通常~高速のぶれにはジャイロ検知で対応する「スーパーレンジOIS」で、幅広い振動の抑制が行なえるという。
■ DVを“古いメディア”とは捉えない
レコーダ部については、「ノウハウに関するため」として詳細な解説とはならなかったが、これまで紹介したカメラの高画質技術にアルゴリズムを最適化することと、人間の視覚特性や記憶色に基づくアルゴリズムを併用することで、「限られたデータ量での最高画質を実現する」と説明。 また、ビデオ用のインターフェイスやコーデック、オーディオ機能などを1チップに統合し、ローコスト化と小型化、低消費電力化が実現したと述べた。 一方、記録メディアとフォーマットについても触れ、「DVテープを“古いメディア”、DVDなどを“新しいメディア”と説明する向きも見られるが、我々は古い、新しいという捉え方はしない。メディアの単価や記録時間など、それぞれメリットがあり、用途に合った選択が必要」とした。
□キヤノンのホームページ ( 2007年6月28日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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