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グーグル株式会社(Google)は2日、動画共有サービス「YouTube日本版」における事業説明会を開催した。 説明会では、既にコンテンツ配信を開始しているパートナー企業の意気込みや、著作権保護などの国内展開における問題点、今後の活動についての説明などが行なわれた。
■ 違法動画対策は秋頃までに開発。全自動化も検討 YouTube日本版は6月19日に開設。インターフェイスを日本語化しているほか、パートナー企業として、日本のメディア企業が参加し、パートナーページを開設している。 現在パートナーページを展開しているのは、株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)、GONZOのアニメ作品などを制作する株式会社GDH、東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYO MX)、吉本興業株式会社、株式会社ベルロックメディアの5社。
Google コンテント担当副社長のデービッド・ユン氏は、同社の事業や、YouTubeの展望などについて語った。 「Googleは、自らコンテンツを制作せず、世界中に散らばる有用な情報を整理し、使えるようにする“検索”の事業に特化してきた。検索サービスも進化し、開始当初は情報だけだったが、現在はニュースや書籍、地図、そして動画までもが検索できるようになった」とこれまでの事業について説明。 YouTubeに関しては「現在は、日本を含め10カ国で展開している。1日に数億の動画が世界中で視聴されているほか、毎日数10万ファイルの動画がアップロードされている」と説明した。 利用者数については「国別の視聴者数は米国が1位だが、日本はそれに次ぐ2位。それゆえ非常に重要な地域と考えている。他の動画共有サイトと比べても成長率は高く、2007年1~5月までのアクセス数は、前年同期比で70%成長しており、動画共有サイトとしての責任も重くなっていると感じている」とした。 メディア企業との提携によるコンテンツ提供については「これまでは、パーソナルビデオの共有が中心だったが、メディア企業が利用したいというケースが増加してきた。多様なコンテンツが提供できるようになれば、多様なユーザーのニーズに応えられるようになるため、メディア企業と提携し、配信を行なうようにした」という。
また、違法なコンテンツへの対処についても言及し「現在は、アップロード時に利用者に対して、権利を有しているコンテンツのみをアップロードするように提示しているほか、権利保有者が、許可していない違法コンテンツを確認した場合に、削除要求を行なうツールを提供している。違法動画の防止技術については現在開発中で、具体的な日時は未定だが、2007年の秋頃までには何かしらの発表が行なえるようにしたい」とした。 違法動画の特定には、音声認識や動画識別技術を利用する予定。フィンガープリント技術なども検討しており、単なる違法動画の削除だけでなく、プロモーション目的のための利用を認めるといった選択を権利所有者ができるようになる見込み。最終的には、こうした作業が全て自動で行なえる仕組みを構築していく考えを示した。 コンテンツについては「一般ユーザーは最大10分までのコンテンツしかアップロードできないが、ユーザーに人気のあるコンテンツは、数分の短めのコンテンツが中心。そのため、テレビなどと競合せず、むしろTVを補完する位置付けになると考えている。プロモーションのプラットフォームとしては最適なので、違法配信などのネガティブなイメージだけでなく、コンテンツの提供場所としてのメリットも考慮してほしい」とした。
■ スカパー、FOXと共同で日本独自キャンペーンを展開 YouTube日本版のパートナー企業各社の代表者が登壇。スカパーの田中晃執行役員専務は、YouTubeとの協業のきっかけについて「最近の視聴者は、コンテンツの楽しみ方が多様化している。YouTubeにおける多様なコンテンツを多様な利用者が楽しむと言うコンセプトは、実に“スカパー的”。そのため、YouTube日本版の配信サービスを開始した」と語った。 違法コンテンツへの対策については「現在も引き続き改善を強く要求している。Googleからも技術的説明をたびたび受けているが、今後も着実に実施していくよう期待したい。現在は、担当の社員を用意し、24時間YouTube内をチェックして違法動画の報告を行なって対応しているが、パートナー企業として契約したことで、従来よりすばやく削除してもらえるようになったのはうれしい」とした。 今後の取り組みとしては「現在はプロモーションクリップのみの配信だが、今後は新しい企画も展開していく。8月下旬から開始する新たな試みとして、海外ドラマ・バラエティ専門チャンネル『FOX』とのコラボレーションによる番組プロモーションを実施する」と発表した。 FOXでは、10月より米国で人気のオーディション番組「アメリカン・ダンスアイドル」のシーズン2を放送開始する。この番組のプロモーション企画として、Webオーディション企画「ジャパン・ダンスアイドル」をスカパーとFOXが共同で開催する。 YouTube日本版などにユーザーが動画をアップロード。同時に事務局宛にメールを送ることで、オーディションに応募できる。予備審査を経た動画は、YouTube日本版のスカパーページ内に開設予定の「ジャパン・ダンスアイドル」特集ページで紹介され、一般ユーザーのクリック数や、審査員の審査などでオーディションの優勝者を決定する。なお、特別審査員として、ダンスを中心とした5人組音楽グループ「TRF」などを起用する。 「今後も、単なるプロモーションにとどまらず、新しいサービスを提供していきたい」(同氏)とした。
■ 東京MXはワンセグとの連携を模索 TOKYO MXの取締役技術局長兼総合デジタル局 田沼純氏は、YouTubeとの協業について「東京という町は、どこかつかみ所のない町。そこで“国際都市・東京”をキーワードに、番組を提供してきたが、さらに東京をアピールするのに、“YouTube”が最適と考えた。出せるものはどんどん出していくことで、積極的に事業を展開していきたいと考えてパートナーになってみたら、テレビ局としては最初のパートナーになれて光栄に思う」と語った。 YouTube日本版にコンテンツ提供を始めて、気がついたこととして「首都高速道路の西新宿ジャンクションを取材したニュースへのアクセスが最も多かったことに驚いた。私も報道畑の人間だから分かるが、こういうニュースは、力をいれずにさらっと作るが、視聴者にとっては、こういうのが見たいニュースなのかと気付かされた」という。そのほか「YouTubeでアクセス数の多いものを見ていると、視聴者のニーズがわかってくるので、指標としてとても役に立つ」とした。 今後は「インディーズアーティストのクリップを配信したり、過去の地方競馬や、アナウンサーが登場する番組などを順次配信していきたい。また、地上波放送局である強みとして、ワンセグ放送とYouTubeとの連携などもやってみたい。色々な企画を考えても、積極的に進めなければ長続きはしないし、どう進めていくかについては、今後色々検討していく」とした。
GDHの取締役副社長兼COO 内田康史氏は「アニメーションの場合、通常は国内のテレビ放送でしか作品が提供できなかった。YouTubeとの提携により、今後は、海外の利用者に見てもらえる機会が増えるだろう」と、海外の利用者もターゲットにしている点を強調した。 吉本興業の執行役員 経営・財務戦略室長兼ベルロックメディア 代表取締役 中多広志氏は「ムーディ勝山の携帯電話向けコンテンツが、2億円近くを売り上げた。何が受けるか世の中分からない。こういう新しい才能の登場にも期待している」とした。
また、YouTubeと提携し、YouTubeの名称やロゴの使用権を取得しているカシオ計算機株式会社は、同社が米国で8月に発売するYouTube対応デジタルカメラ「EXLIM Card EX-S880」のYouTube機能について説明。また、EX-S880の国内展開も検討していることを明らかにした。
そのほか、ソーシャルネットワーキングサービス「mixi」を提供する株式会社ミクシィが、本日よりYouTube日本版の動画ページ上から、mixiの日記に引用できる機能を追加。mixiへの日記投稿時に日記内にYouTubeの動画を埋め込む機能も追加されている。
□YouTube日本版のホームページ ( 2007年8月2日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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