TI、車載半導体で“車のリビングルーム”を提案 －消費電力1/10の新デジタルアンプ量産開始

8月28日発表

　日本テキサス・インスツルメンツ株式会社は28日、車載向けClass-Dアンプ「TAS5414」と「TAS5424」の量産出荷を開始したと発表した。パッケージは36ピン(TAS5414)または44ピン(TAS5424)のPSOP3で、1,000個受注時の単価(参考価格)は9.75ドルから。

TAS5424/5414の特徴

　いずれも、4chのClass-Dアンプで、通常のラジオ聴取レベルの車載オーディオシステムにおいて90%の電力効率を実現。2個/8ch構成では、4ch構成のClass-A/Bシステムと比べ動作時の放熱を抑えており、オーディオシステム全体のコスト効率向上や軽量化を図ることができるという。両製品の違いは、「TAS5414」がシングルエンド入力、「TAS5424」が差動入力という点とピン数。最大出力は45W(2Ω)で共通。

　両製品に搭載されたデジタルPWM(パルス幅変調)技術により、従来製品に比べ音楽再生時のアンプ消費電力を約10%まで低減。アンプ筐体の小型化や、アナログアンプでは困難だったヘッドユニットへの一体化が実現できるとしている。

TAS5414の評価ボード	TAS5414(左ボード上)と、ハイエンド向けDAC「PCM1792」(右ボード上)を用いて再生デモも行なわれた

■ “自動車向けリビングルーム”提供へ

執行役員戦略企画本部長 兼 自動車事業担当の岡野明一氏

　新製品の紹介に合わせ、自動車向け半導体の事業戦略について執行役員戦略企画本部長 兼 自動車事業担当の岡野明一氏が説明。「日本では、メモリを除く半導体市場で最も伸びるのは自動車。携帯電話は、インセンティブ制度の廃止などで、シュリンクするのでは」との見方を示し、同社の売上げ成長率は2005年～2006年が30%で、「市場成長率を上回る」とアピール。

　中でもエアバッグや車体コントロールなどの「安全系」と、カーAV/ナビなど「インフォテイメント系」に注力するとしており、「家庭用テレビ/オーディオや携帯電話での実績を自動車向けにも展開する」と説明。カーオーディオ/ビデオを“オートモーティブリビングルーム”、携帯電話を“ウェアラブル・リビングルーム”と位置づけた「リビングルーム・コンセプト」で技術を水平展開するという。

　そのほか、MP3/AAC/WMAなどの圧縮音源において失われた16kHz以上の高域を補間する技術「Perfect Playback」も紹介。筑波の研究拠点で開発されたという日本TI独自の高域合成技術で、テレビやFM、アナログ入力などにも適用可能としている。

「リビングルーム・コンセプト」を提案	ホームAV製品での蓄積を活用するという	Perfect Playback技術

コンシューマシグナルチェーンビジネス推進部の望月和人マネージャ

　新製品について説明したコンシューマシグナルチェーンビジネス推進部の望月和人マネージャは、カーオーディオシステムについて「6～24chのスピーカーを搭載したシステムが、従来のアフターマーケット市場ではなく、自動車メーカーのプレミアムシステムによって、純正製品で増加した」という動向に触れ、多チャンネルでも放熱や小型化の面でデジタルアンプがアナログに比べ優位であると強調。

　一方で、デジタルアンプで問題とされていた不要輻射やAMの受信妨害、オーディオ特性の3点においても、ホームオーディオで蓄積された技術により改善されたという。

　今後の開発指針として、軽自動車向けなどの低価格モデルを計画。「年内にサンプルを用意できる」(望月氏)とした。さらに、上位モデルの開発も進め、ラインナップの拡充を図る。

デジタルアンプの不要輻射やAM受信妨害、オーディオ特性上の問題への対策

□日本TIのホームページ
http://www.tij.co.jp/
□ニュースリリース(英文)
http://focus.ti.com/docs/pr/pressrelease.jhtml?prelId=sc06003
□製品情報(英文)
http://focus.ti.com/dsp/docs/dspsplash.tsp?contentId=2475&DCMP=AudioPressReleases&HQS=Other+PR+caraudio1

( 2007年8月28日 )

[AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]

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