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株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)は21日、10月17日に発売を控えているBlu-ray Disc BOX「スパイダーマン トリロジーBOX」(BP-394/12,800円)のマスコミ向け試写会を開催した。
「スパイダーマン トリロジーBOX」は、シリーズ3作品のBDビデオ版を収録したBOX。各作品BDビデオ版は単品発売がアナウンスされていない。試写会は、同タイトルに採用されている音声フォーマット、ドルビーTrueHDのデモも兼ねており、試写はドルビーラボラトリーズの日本支社・試写室にて行なわれた。
トリロジーBOXは、第1~3作の本編ディスクを収録するほか、「スパイダーマン3」のボーナス・ディスク1枚が付属し、合計4枚組みとなる。第1、2作目は英語音声をドルビーTrueHD 5.1chで、日本語をドルビーデジタル5.1chで収録。3作目は英語をリニアPCM 5.1chとドルビーデジタル5.1ch、日本語をドルビーTrueHD 5.1chで収録している。
ドルビーラボラトリーズ マーケティング部販売促進担当の長内紀己雄シニア・マネージャーは、ドルビーTrueHDの特徴について、元音源に100%復元可能なロスレスの符号化技術であり、リニアPCMと比べて1/2~1/3にデータ量を圧縮できるなどの利点を紹介。 さらに、完全にソースの音を復元できるかの実験として、リニアPCM 5.1chの音源と、DVDビデオをイメージした448kbpsのドルビーデジタル5.1ch、BDビデオ版スパイダーマンにも採用されている640kbpsのドルビーデジタル5.1ch、DTS 5.1chのハーフレート(768kbps)、フルレート(1.5Mbps)、最後にドルビーTrueHD 5.1chの音源を用意し、デモを行なった。
単純な聞き比べでも、不可逆圧縮フォーマットでは中音が痩せたり、高音の質感が低下、音場が狭くなるなどの違いが感じらる。長内氏はさらに、リニアPCM音声を逆位相にして再生し、そこに正相のままの各フォーマット音声を重ねて再生するというデモを実施。これにより、「圧縮時に失われた音」を披露した。
448kbpsのドルビーデジタルを重ねると、シャラシャラとした高域が中心の、乾いた音がかなり多く残されていることがわかる。不要として捨てられた超高域が中心となっているためだ。640kbpsを重ねると、失われた音の数はグッと減り、音そのものが小さくなる。 DTSでも失われた音がはっきり聞きとれるが、ドルビーデジタルとは傾向が大きく異なり、高域成分の失われた音が少ない代わりに、中音がかなりの量取り残されていることがわかる。音のレンジをとるか、厚み(密度)をとるかという、両フォーマットの特性の違いがわかりやすいデモと言える。 では、この逆相PCMに正相のTrueHDを重ねると、当然のことながら、互いが互いを完全に打ち消しあうため、完全に無音になった。情報の欠落が無く、可逆フォーマットであることが証明された。
長内氏はPCMに対する利点として「音声が占めるディスクの容量を削減できるため、特典映像などをより多く記録できる」とし、音声クオリティだけでなく、ソフトの商品価値やユーザーの満足度の向上にも貢献できる圧縮技術であることをアピールした。
■ “音”が重要なキーになる「スパイダーマン3」 試写会の再生環境はPLAYSTATION 3をプレーヤーとして使用し、音声は英語(リニアPCM 5.1ch)。PS3のHDMI出力をヤマハのAVアンプ「DSP-AX2700」に入力、音声は「AVC-A1SR」に送信、パワーアンプはブライストンの「9B-SST」を2台を使用。スピーカーはリピンスキーのモニタースピーカー。プロジェクタはビクターの「DLA-HD1」という構成。
BOXは3作品を収録しているが、視聴には最新作である「スパイダーマン3」をチョイス。クモの糸を駆使した躍動感あふれる映像と、主人公が自らの心の闇と向き合う重厚なストーリーが見所の作品だが、ストーリーの中で非常に重要な要素として“音”が使われている作品でもある。 BDビデオ版ではそんな重要な音も非常に生々しく、迫力たっぷりに収録されている。低音では砂の化物・サンドマンの咆哮や巨体とともに繰り出されるパンチが生み出す、地鳴りのような振動も、迫力がありながら、解像感も残している“芯のある低音”として再現。また、ラストバトルシーンではサラウンド効果をフルに使った音響的演出も活用されており、ホームシアターの醍醐味が味わえるソフトに仕上がっていると言えそうだ。
ちなみに、映像はMPEG-4 AVC/H.264で収録。本編時間139分と若干長めの作品ではあるが、ビル間をスパイダーマンが自由自在に飛び回るシーンでも破綻はほとんど見られず、DVDビデオのクオリティとは次元の違う映像が楽しめる。全編を通じてフィルムグレインが強めに画面全体にかかっているが、CGが多用されている映画のため、質感の向上を目指しての処理だろう。
なお、試写会に合わせ、トリロジーBOXに、FM高精細印刷を使ったトレーディングカードが付属することが明らかにされた。通常のカラー印刷よりも高密度な印刷が施されたものだという。ほかにも、「ドルビーTrueHD ハンディーマニュアル」として、ドルビーTrueHDの紹介や対応機器の一覧、各機器の接続方法などを解説したパンフレットも同梱している。
□SPEのホームページ
(2007年9月21日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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