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映像、情報、通信の総合展示会「CEATEC JAPAN 2007」が2日、幕張メッセで開幕した。期間は6日まで。 ここでは「HD Rec」を新たにサポートする、東芝のHD DVD/HDDレコーダ「VARDIA」の参考展示を中心に、HD DVD関連の展示をレポートする。
■ 「HD Rec」でDVD-Rに2時間のHD記録 「HD Rec」は、DVDフォーラムで策定された、従来のDVD-R/RW/RAMなどにHD解像度の映像を記録するため規格。映像フォーマットにはMPEG-4 AVC/H.264が採用され、容量の少ないDVDメディアでも4Mbps程度のビットレートでHD映像を収録すれば、片面1層メディアでも約2時間の録画ができるようになる。
また、デジタル放送のMPEG-2 TSデータと、従来のDVDと互換のあるVRコンテンツ、MPEG-4 AVCの3種類の映像形式を1枚のディスクに混在させることも可能になるという。ただし、対応するレコーダ/プレーヤーでなければ再生できないため、「対応機器の出始めは、録画したレコーダのみでの再生になるだろう」(東芝)という。
会場ではこれに関連し、MPEG-2 TSの放送データを、MPEG-4 AVC/H.264へトランスコードする技術を展示。実際に4Mbpsに変換した映像を比較表示し、劣化の少なさをアピールしている。 トランスコード可能な録画解像度はフルHD(1.920×1,080ドット)までサポートしており、BS・110度CSデジタル放送も、そのままの解像度で変換可能。1,440×1,080ドットの地上デジタル放送の場合は、1,440×1,080ドットのまま変換が行なわれるという。 ただし、「HD Rec」に関する詳細な情報は未定となっており、従来のDVDと同様にメニュー作成が行なえるか否かや、具体的な録画モードのビットレートも決定していない。また、展示ではリアルタイムエンコードに言及されておらず、MPEG-2 TSの放送をHD Recでトランスコードする技術のデモに終始している。 そのため、レコーダに採用された場合にMPEG-4 AVC/H.264でリアルタイム録画が行なえるのか、一旦HDDにMPEG-2で録画したものをトランスコードしてMPEG-4 AVCでディスクに書き出すのかは未定だという。 なお、DVDへの記録だけでなく、HD DVDメディアに記録する場合にもMPEG-4 AVCフォーマットが利用可能。HD DVD-Rの片面1層メディアの場合、約6時間のHD映像が録画できるという。
こうした「HD Rec」やHD DVDへのH.264録画に対応したレコーダとして、「VARDIA」シリーズの新モデル3機種が参考展示されている。いずれもHD DVDドライブを採用し、HDDを内蔵するハイブリッドタイプになる予定だが、HDD容量は未定。型番は「RD-X7」、「RD-A201」、「RD-A101」で、「X7」はフラッグシップモデルと位置付けられている。いずれも発売日や価格は未定。 「X7」は1080/24p出力とDeep colorに対応しており、i.LINKを経由して、対応する「VARDIA」や、D-VHSに録画したコピーフリーのTS番組のHDDへのダビングが可能。レグザリンクにも対応している。「RD-A201/A101」は1080/24pとDeep color非対応のモデルで、69mmという薄型筐体が特徴。2モデルの機能差は未定だが、「RD-A101はエントリーモデルとして購入しやすい価格を目指す」としている。 3機種とも、デジタル放送の「ダビング10」(コピー9回/ムーブ1回)に対応できるよう検討しているモデルだという。また、HD DVDへの録画時のモードが、従来のHD DVD-TS形式から、HD DVD-VR形式に変更されており、録画したディスクのHD DVDプレーヤーでの再生互換性が向上する見込み。
■ Cellの技術を利用した映像処理プロセッサ「SpursEngine」
東芝ブースでは、CPU「Cell Broadband Engine」(Cell)の技術を利用した映像処理プロセッサ「SpursEngine」も展示されている。Cellの高性能プロセッサ「SPE」(Synergistic Processor Element)コア4基(PLAYSTAION 3は8基)と、MPEG-2とMPEG-4 AVC/H.264のエンコード/デコード回路で構成するもので、PCや家電製品への組み込みを想定している。
会場ではSpursEngineを搭載したノートPCの試作機を用意。PCのカメラで人物を撮影し、顔の向きや表情の3D実写映像をリアルタイムに作成。さらに、その上に実際のものとは異なる髪型や継承をCGで付加し、実際の顔の動きに連動させて表示するというデモを実施している。
ほかにも、SD映像をHD映像にアップスケールするためのエンジンとして使用するソフトウェアも開発。「PS3のDVDビデオアップスケール再生よりも、鮮鋭度の高い変換が行なえる」という。ただし、リアルタイムの変換は実現しておらず、「実際にどのような形でPCに搭載していくかは未定」だという。 PCのテレビキャプチャ機能と組み合わせ、録りためたコンテンツに対して顔認と音声認識をSpursEngineで実施。それを顔のサムネイルや音声のバーグラフでグラフィカルに表示し、サムネイルを押すだけでそのシーンが再生されるデモも実施。 さらに、PCのカメラで人間の手の位置を認識し、画面に手のひらを向けることで「再生停止」、親指を立てることで「再生開始」などの動作をさせる「ジェスチャーリモコン」も開発。「リモコンが見当たらない時などに、自分の手を動かすだけでPCを制御できる技術を目指している」という。
搭載時期は未定だが、同社のAVノートPC「Qosmio」シリーズで採用される予定。テレビやレコーダへの搭載も検討していると言うが、今回展示された、「VARDIA」の参考展示モデル3機種に、このエンジンが採用されているかは明らかにされなかった。
■ 東芝ブースのその他 東芝ブースではほかにも、HD DVDドライブ搭載現行モデル「RD-A600/300」や、「ダビング10」対応予定のDVD/HDDレコーダ4モデルなど、VARDIA新モデルが展示。液晶テレビ「REGZA Z3500」シリーズも紹介されている。
また、将来的に製品化を目指しているモデルとして、3.2型、解像度240×427ドットの有機ELディスプレイを搭載した、ポータブルメディアプレーヤー「gigabeat」も参考展示している。色味や寿命などの問題で具体的な製品化の目処は立っていないが、「高輝度や広視野角などの利点も多いため、製品化に向けて開発していきたい」(同社)という。 同じく「gigabeat」では、小型のダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)を電源に採用したモデルも展示。別売される燃料を注入することで、動画ファイルならば10時間程度の再生が行なえるという。「数年後を目処に製品化したい」(同社)としている。
■ HD DVD関連の展示 HD DVDプロモーショングループのブースでは、欧州/米国向けモデルだが、オンキヨーのHD DVDプレーヤー「DV-HD805」が展示されている。また、アルパインも車載用HD DVDプレーヤーを参考展示している。
HD DVDメディアでは、日立マクセルが片面2層のHD DVD-RWメディアを展示。データ用と録画用を用意しており、「開発は順調。対応機器の市場動向を見ながら投入していきたい」という。ほかにも、三菱化学メディアが2倍速記録対応のHD DVD-Rや、HD DVD-RW DLメディアを参考展示している。 太陽誘電のブースでは、有機系色素を使ったHD DVD-Rメディアを参考展示。年内を目処にリリースを予定しており、既発売のHD DVD対応機器でも使用できるという。
□CEATEC JAPAN 2007のホームページ
(2007年10月2日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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