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CEATEC JAPAN 2007の2日目のカンファレンスで注目を集めたのが「未来予測2007-2020 -過去の延長線上に未来は無い-」と題したセミナーだ。 ナビゲーターには、尚美学園大学芸術情報学部大学院教授であり、ITNY&パートナーズ マネージング・ディレクターの西和彦氏、そして、西氏とともに、今回のセミナータイトルと同じ「未来予想レポート デジタル産業2007-2020」を著した、株式会社アクアビット代表取締役チーフビジネスプランナーの田中栄氏が登壇し、全体の進行を務めた。
■ “プラズマの父”が開発した超大型PDP
このセッションでは、ディスプレイとして2つのデバイスを紹介。これに聴講者の関心が集まった。ひとつは、PTA(Plasma Tube Array)方式による大型ディスプレイだ。 これは、本邦初公開となった新方式・超大画面フィルム型ディスプレイで、篠田プラズマ株式会社代表取締役会長であり、広島大学大学院教授の篠田傳氏が開発したものだ。篠田氏は、元富士通研究所フェローであり、カラープラズマテレビの父と呼ばれる人物。富士通のディスプレイ事業の撤退に伴い、同社を退社し、自らベンチャー企業を設立し、PTA方式によるディスプレイを開発した。 先頃、同氏のフルカラープラズマディスプレイの開発および実用化に対する貢献が評価され、IEEEから名誉会員賞を受賞。同賞を受賞しているのは、日本では、ソニー創業者の盛田昭夫氏、シャープで副社長を務めた佐々木正氏など5人だけ。篠田氏が6人目となった。
会場で紹介したのは、縦1m、横50cmの試作品。43インチに相当する。 駆動させるために大かがりな装置が持ち込まれたが、フィルム基板を採用しており、ディスプレイ部の薄さは約1mm。ディスプレイ部の重量は約800gとなっている。 技術的な詳細については説明しなかったが、「原理的にはプラズマに似たもの」(篠田氏)としている。 また、1m×1mのフィルムをシームレスにつなぎ合わせることで、論理的には無制限にディスプレイサイズを拡張することが可能で、「製品化の際には、150インチから300インチといったサイズが容易に実現できる。そのサイズになったとしても、重量は50~60kgで済む」とした。 消費電力は、200W程度を想定。試作品では、サイズが小さいことから50W程度で動作しているという。 さらに、フレキシブル性があることから、円柱や曲面のある壁にも張り付けるといった使い方ができる。 「地下道の天井から壁一面までにこのディスプレイを張り付けたり、街中の広告をすべてこのディスプレイに置き換えることかできる。また、103インチの大画面プラズマテレビを家に導入するとなると、家庭用電源では駆動しなかったり、床を補強しなくてはならない、そして窓から入らないといった問題がある。しかし、このディスプレイならば、丸めて持ち運ぶことができ、重さも問題にならない。100Vの家庭用電源でも利用できる。家庭の大画面化にも寄与するだろう」と、ナビゲーター役の田中氏も補足した。
また、篠田氏は、「等身大の人間と同じサイズの表示が可能になる。同じ空間にいるような状況を作ったり、外を歩いたり、アルプスの風景を見たりといったことが、家にいたり、病院に入院したりといった環境でも実現できる。等身大サイズのものを来年には見せることができる。今月末には試作品が完成するだろう」などとした。 まずは、2m×3m(150インチ相当)、あるいは3m×6mのサイズの製品化を目指すとしており、フルハイビジョン対応も行っていくという。 気になるのは価格だが、篠田氏は具体的な価格には触れなかったものの、「コンセプトは、小さな投資で、大きな画面を作るというもの。クリーンルームも必要なく製品化できる。近い将来にはかなり安くできるはず」とした。 ■ 西氏「日本には創造力と構想力が必要」
もうひとつのディスプレイとして紹介したのが電子ペーパーである。 米E-INK Corporationのワールドワイド事業開発責任者の桑田良輔氏が登壇して、同社の取り組みなどとともに、電子ペーパーの具体的な製品例を紹介した。 米E-INK Corporationは、10年前に設立した企業で、「創業メンバーが電子ペーパーをやりたいと考え、20年前に松下電器が開発し、その後開発を中止した技術をベースに事業を開始した」という。 桑田氏は、2日に、米ソニーが米国市場向けに発表した電子ブック「PRS-505」を日本で初披露。ここに同社の技術が採用されていることを明らかにした。また、電子ペーパーを採用したモトローラの携帯電話を持ち出し、BRICs市場向けにすでに1,000万台の出荷実績があることを示した。 「モトローラにしてみれば、5,000~6,000万台を出荷したかったようで、それと比較して失敗といわれている」(桑田氏)と苦笑したものの、「モトローラは、当社の技術に、自社技術を用いることで、耐久性、信頼性などを高めており、自社の製品に新たな技術を活用するという意欲の高さを感じた。日本の携帯電話メーカーにはなかなか理解を得られなかったのとは大きな差があった」と語った。
また、桑田氏は、「電子ペーパーは、液晶やプラズマとは異なり、しっかりとしたマーケティングやセグメンテーションが必要。薄型といったブームに乗って、電子ペーパーを採用し、企画したものは失敗している。電子ペーパーは、他のディスプレイデバイスとは異なる用途やコンセプトがあることを知った上で、マーケティング、コンテンツ、サービスを企画していく必要がある」とした。
さらに、桑田氏は、「現在、電子ブックは、全世界で8社が量産しており、来年には20社が量産することになる。年間100万台の規模となり、普及のブレイクポイントに達することになるだろう。20社のなかには、インターネットの最大手企業が参入し、マイクロソフトもプロトタイプを開発している。しかし、その中には日本のメーカーはない。過去における電子ブックの失敗などが影響しているとはいえるが、このままでは日本を経由しない初のディスプレイデバイスになる可能性がある。もともと日本で開発された技術であるにも関わらず、それを米国が拾って、欧州のフィリップスや、ソニーUSAが製品化している。電子ペーパーの技術を発展させるには、日本のメーカーが必要なのだが」などとした。 一方、西氏は、「プラットフォーム、インフラ、コンテンツ、技術、会社がそれぞれにコンバージョンする時代を迎えている」と語るとともに、「日本には、創造力と構想力が必要」と語った。 「創造力とは、未来を感じる力。次にどんなものを開発すれば喜ばれるのかを感じることが大切。また、構想力とは、感じた未来を、現実のものとして絵に描き、それを技術、部品、ソフトをどう合成するかといった力を指す。デジタルコンバージェンスの時代には、こうした力が必要だ」とした。 また、田中氏は、「いまは、100年に一度の変化が訪れている。新しいモノを考えている人にとっては、これ以上ないタイミングに恵まれている。大きなチャンスの時期を迎えている」と、デジタルコンバージェンスの現在の様子を示した。
□CEATEC JAPAN 2007のホームページ ( 2007年10月3日 ) [Reported by 大河原克行]
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