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松下電器産業株式会社は30日、2007年度上期連結決算を発表した。
売上高は前年同期比3%増の4兆5,253億円、営業利益は6%増の2,200億円、税引前利益は19%減の1,876億円、当期純利益は9%減の1,051億円となった。 第2四半期は売上高、営業利益ともに過去最高を達成。とくに営業利益では、22期連続の増益。上期実績についても、売上高では過去最高、営業利益では6期連続での増益となった。前年割れとなった当期純利益についても公表見通しを大幅に上回ったという。 松下電器の大坪文雄社長は、「上期公表見通しをすべて達成し、GP3計画の初年度として、まずまずのスタートが切れた」と上期決算を総括した。 セグメント別の売上高と営業利益のバランスがほぼ均一であることから、「売り上げに見合った収益構成比となっており、バランスがとれている」(上野山実取締役)との見方も示している。
セグメント別に見ると、AVCネットワークは売上高が前年同期比7%増の2兆596億円、営業利益が8%増の1,101億円。薄型テレビの好調ぶりに加えて、携帯電話事業がマルチキャリア対応により事業を拡大したことで、増収増益を達成した。 主要ドメイン会社では、パナソニックAVCネットワーク社の売上高が前年同期比5%増の9,401億円、営業利益は13%増の474億円。同社の営業利益率は6.9%に達し、第2四半期としては過去最高となった。また、パナソニックコミュニケーションズの売上高が12%増の2,651億円、営業利益が50%減の57億円。パナソニックモバイルコミュニケーションズは、売上高は14%増の2,055億円、営業利益は29%増の9億円となった。
■ テレビは世界で前年比2桁増。「薄型化はこれから」
薄型テレビは、米州が昨年後半からの在庫増加や価格下落の影響があり、前年同期比7%減の1,009億円となったが、日本が前年同期比1%増の1,028億円、欧州では29%増の1,301億円、アジア/中国では31%増の618億円となった。全世界では、3,956億円と前年同期比10%増と2桁の伸びを達成。とくに、第2四半期は19%増という高い成長率を記録した。 「米国では、競合が激しく、思ったほど伸びていないかもしれない。だが、これは現地販売会社の大がかりな構造改革によって、人の入れ替えを進めており、その影響が出ているもの。本質的な商品力や価格競争力に問題があるわけではない。第2四半期も1.4倍ほどの引き合いがあり、42インチフルHDの好調ぶりや、プラズマキャラバンの効果も期待できる。商品力プラス積極的な販売活動への取り組みとともに、当社が元祖といえるリンク機能の提案によって、販売数量を拡大させたい」とした。 同社では、年間計画として、プラズマテレビで全世界500万台、液晶テレビで400万台の計画を掲げている。 大坪社長は、「プラズマテレビは、米州での落ち込みを他の地域がカバーできず想定した台数には到達していない。だが、下期は300万台強の数字が見えており、年間500万台の計画台数は変えるつもりがない。また、液晶テレビについても、上期は若干目標を割り込んだが、これはIPSアルファからのパネル調達は予定通りだったものの、外部からの調達に遅れがあったのが原因。だが、落ち込みは、通期目標を達成できるだけの範囲に留まっており、400万台の目標は変えない」とした。 Vizioによる低価格薄型テレビの影響については、「米国のマーケットでは市場成長期において、過去の名前のブランドなどが1~2年間に渡って数%のシェアを取っていくという状況が見られる。Vizioも同様の可能性があると見られる。しかし、短期間に5%のシェアを獲得したことを考えると、過去のトレンドとは異なると判断することもできる。慎重な姿勢で見ていかなくてはならない。ただし、これによって、当社が方針転換をすることはない」とした。 他社が先行している薄型化については、「プラズマテレビの薄型化は、進化していくことになる。松下電器の最重要製品であるテレビの薄型化は、これから進めていく」と語るだけに留まった。
■ ビクターは97億円の赤字。PDPやデジカメを核に収益力向上へ
米国におけるサブプライムローン問題の影響については、「上期への影響はなく、また年末商戦の引き合いを見る限り、影響はないと考えている。とはいえ、いつどんな形で影響するかが予測しにくい」と語った。 DVDレコーダについては、総需要が減少している米州において、50%減と大幅な落ち込みを見せたが、日本では27%増、アジア/中国では45%増、欧州では39%増となった。 「リンク機能に高い評価が集まっており、グローバルでも16%増の563億円となった。次世代ディスクについても唯一、2層記録ができることを生かしてシェアを拡大した。日本では6割という圧倒的なシェアを獲得している。米国における次世代光ディスクプレーヤーの価格競争は、日本の企業同士が、陣営を分けてたたき合いをやっているつもりはない。次世代光ディスクの普及に向けて、再生機に限定して求めやすい価格で提供している。こうした競争を経て、勝ち残っていくことになり、健全な競争として取り組んでいく。時間とともに、必ずBlu-ray Discが次世代光ディスクであると認知されるだろうと考えている」(大坪社長)と自信を見せた。 デジタルカメラの販売金額は、欧州では47%増、アジア/中国では18%増、日本では20%増、米州では27%増と高い成長率を維持。「日本、フランス、チェコなどでは、トップシェアを狙える位置にある」(大坪社長)と好調ぶりを示した。 一方、アプライアンスの売上高は9%増の6,670億円、営業利益が6%減の373億円。デバイスの売上高は4%増の7,123億円、営業利益が2%減の495億円。電工・パナホームは売上高が5%増の9,372億円、営業利益が26%増の411億円、日本ビクターは売上高が44%減の1,831億円、営業損益はマイナス97億円の赤字。その他事業の売上高が2%増の7,652億円、営業利益は9%増の349億円となった。
大坪社長は、下期に向けての重点施策として、1)年末年始に向けての大増販、2)収益力の強化、3)環境対応の3点を掲げた。
年末年始に向けての大増販では、薄型テレビや、他のAV機器とのリンク機能などにより、商品力を訴求。「正攻法で増販を図る」とする。北米市場でのフルHDテレビの迫力とリンク機能の利便性を訴えるために、移動型のキャラバン展示を実施。キャラバンを実施した店舗では、通常の2~3倍の販売実績を達成した例もあるという。この活動を年末に向けて、さらにキャラバン活動を活発化させる考えだという。 また、欧州でも、薄型テレビおよびデジタルカメラの広告宣伝費を前年の2倍規模とし、4,000店舗での商品展示のほか、13か国43都市でのキャラバンを行うという。「年末商戦で、いかに供給を切らさないかが鍵になる」とした。 BRICs地域でも、400億円の販売促進費を投入し、海外での2桁増に向けて弾みをつける考え。 収益力の向上では、プラズマテレビ、デジカメ、白物家電、美容機器、デバイス、産業機器において競争力のある商品を核にした事業展開をするとともに、原価低減に向けた取り組みを強化する。 「原価低減活動は、これまで事業ごとに独自に培ってきたが、過去1年で、これをベストプラクティスとして抽出し、活用できる体制ができた。成功事例を横展開することで、原価力を高め、収益の改善と、着実な成長につなげる」とする。 そして、3つめの環境対応では、環境負荷の低減をGPS計画のなかに盛り込んだことを示し、省エネ家電の強化および省エネデバイスの増販に取り組むとした。 大坪社長は、「これらにより、通期目標の必達とともに、上積みを目指していきたい」と意欲を見せた。 また、会見の冒頭、大坪社長は、リチウム電池問題に関して言及。「品質問題、不具合に続き、電池工場の火災により、守口市近隣のみなさま、お客様、関係のみなさんにご迷惑をおかけしたことを謹んでお詫び申し上げる。10月1日に発足したリチウム電池対策本部により、お客様対応の強化とともに、原因究明と、早期の生産再開に尽くしている。この事態を真摯に受け止め、安全、品質の向上に一層厳しく取り組んでいく」とした。
□松下電器産業のホームページ ( 2007年10月30日 ) [Reported by 大河原克行]
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