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ソニーは、2008年春に発売する液晶テレビ「BRAVIA」の新製品から、難燃性などに優れた自社循環の再生プラスチックを利用することを明らかにした。 過去に販売したソニー製ブラウン管カラーテレビを回収して得られたプラスチック(ポリスチレン)廃材および部品梱包用の発泡スチロール廃材から、難燃性ポリスチレン材料を再生し、BRAVIAのブラケット、リアカバーなどの部品に再利用。テレビ製造における新規投入資源の低減と、製品のコストダウンを図るという。
テレビに使用されるプラスチック部品であるポリスチレンは、これまで回収時の異物除去、再生時の難燃性および耐衝撃性の確保が難しく、再利用は困難とされていた。 ソニーでは、1990年代からテレビ製品における環境配慮設計により、環境リスクの低い難燃剤への変更や種類の制限、ラベルにリアカバーと同じ素材を採用するなどの素材の統一化、再剥離性テープの採用や、取り外しネジ表示マークや取り外しネジ本数表示などによる解体容易性、解体時間の短縮などを図ってきた。 こうした回収時の異物除去などが、比較的容易に行えるようになったことで自社循環を可能にした、としている。
さらに、ソニーEMCSの稲沢テックで発生する発泡スチロール廃材を、難燃性ポリスチレン材料に再生することも可能にした。 独自開発の難燃性や耐衝撃性を付与することが可能な添加剤を開発し、これを材料メーカーにおいて添加することで、難燃性や耐衝撃性を確保したペレットの生産を可能とし、成形メーカーにおいて、BRAVIA用の部品成形を行ない、部品として再生する。 「ソニー独自の添加剤の開発によって、BRAVIAで必要とされる物性を実現することができた」(ソニーの環境担当・田谷善宏氏)という。
ソニーでは、「2008年に発売する国内向けBRAVIAの約10%に、再生プラスチックを使用し、10%の製造コスト削減につながる」と見ているほか、「再生プラスチックを採用した製品は、見た目も、性能も、新材を利用したものと変わらない。再生プラスチックを利用していることはサイトなどを通じて公表するが、製品そのものに表示する予定はない」としている。 自社循環の再生難燃性ポリスチレン材料を使用することで、新材を使用する場合と比べて、30~40%のCO2排出量削減が可能になるという。
ソニー全体では、年間15万トンの樹脂を使用しており、そのうちポリスチレンの比率は8万5,000トン。再生ポリスチレンの2006年度の使用量は1万6,000トンで、これを、2010年度までに、2006年度比2倍となる3万2,000トンを目指す。これは全使用量の30%を占めることになる。 「今後は、社外の食器容器や各種廃家電プラスチック、発泡スチロールの再生も行ない、BRAVIAのほか、ホームシアターのスピーカーバッフル板やダクト、システムステレオのリアキャビネットやスタンドカバーなどにも利用していく」という。 ■ 廃CDからロケフリ/ハンディカム部品への再生も
また、ソニーは、2010年度までに、CO2排出削減量換算で5万トンの再生可能エネルギーを導入する計画を発表した。2006年度比4倍となる規模だ。 同社では、遠隔地で発電された再生可能エネルギーを購入するグリーン電力証書システムを、電力会社と共同開発し、2001年からこれを自ら利用。日本国内の再生可能エネルギーの33%をソニー1社で利用している。今年10月には、新たに1,600万kWhの木質バイオマス発電委託契約を、秋田県の能代森林資源利用協同組合と締結。国内グループ会社が他社と契約している分とあわせると、3,640kWhの再生可能エネルギーを発電委託しており、国内最大規模を誇るという。この合計発電量によるCO2排出削減量は1万3,760トンとなる。 また、ディスク製造工場であるソニーDADCオーストリア、およびソニーオーストリアでは、今年11月から同施設が使用する年間5,950万kWhの電力すべてを水力発電による再生可能エネルギーに切り替えることで、年間1万1,000トンのCO2排出量を削減できるという。これにより、ソニーが欧州において展開している9つの事業所で再生可能エネルギーを利用。欧州で利用している全電力使用量の約41%を再生可能エネルギーにした。 「再生可能エネルギーは、通常の電気料金よりは高いが、これを省エネルギー化の取り組みとして換算。今後も積極的に導入を図る」(中鉢良治社長)とした。 ソニーでは、2000年度を環境基準年として、同年度のCO2排出量の222万トンへの引き下げを目指すグリーンマネジメントに取り組んでおり、2006年度には、2000年度比9%にあたる19万トンを削減し、203万トンにまで引き下げている。 また、2007年3月からは、Earth(Environment Activity for Returning Back to the nature with THoughtful minds)プロジェクトとして、ソニーにおける資源循環システムを構築するための活動を開始。2007年11月には、専門組織として資源循環室を設立している。 その取り組み例として、廃CDから再生ポリカーボネイトを循環し、リアプロジェクションテレビの光学ブロック、ロケーションフリーHome HDのトップカバー、ハンディカムのフロントパネルなどの耐熱部品に、循環型の再生ポリカーボネイトを使用しているという。
ソニーの中鉢良治社長は、「当社は環境対策には前向きに取り組んできたが、これまで積極的に告知をしてこなかった反省がある。工場およびオフィス、製品、研究開発という領域からの取り組みに加えて、今後は、環境に関するコミュニケーション活動にも力を入れていく」と説明。 活動内容としては「工場、オフィスにおける環境対策では、少ないエネルギーや資源で生産活動を行なうこと、再生可能エネルギーを使用することに取り組んでおり、また、製品においては、省エネ製品を投入し、利用環境における省電力化を図っている。さらに、研究開発領域では、バイオ電池の開発をはじめ、環境配慮型の技術開発に投資してきた」などとし、ソニーの環境への取り組み成果を、改めて強調した。
( 2007年12月4日 ) [Reported by 大河原克行]
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