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総務省 情報通信審議会は18日、地上デジタル放送推進に関する検討委員会 第33回を開催した。 8月2日に発表された情報通信審議会の「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」第4次中間答申を踏まえた上で、地上デジタル放送への完全移行へ向けた諸課題の解決について、対応状況などが報告された。 また、難視聴エリアにおける衛星放送を使ったデジタル放送の再送信についても具体案が提案され、議論が交わされた。 ■ 「ダビング10」は2008年6月の開始を目標に 地デジ完全移行に向けた総務省の基本方針は、11月30日に公表された「デジタル放送推進のための行動計画(第8次)」に盛り込まれており、2008年8月の北京五輪までに受信機の普及世帯を約2,400万世帯、台数は約3,600万台を目標に設定。さらに、2011年の4月までに全世帯(5,000万世帯)のカバー、2011年7月までに1億台の普及を目指すため、送信側の中継局整備や送信網の拡大などの環境整備や、共聴設備の整備など、受信機側の課題の解消などの行動計画が策定されている。 委員会は、5カ月ぶりの開催となるため、中間答申に対する現在の具体的な作業の進捗状況について報告された。 中継局の整備は、2008年3月をめどにロードマップ見直しを進めるほか、市町村ごとの視聴可能時期を明確にするための「市町村別ロードマップ」のフォローアップを6月をめどに行なう。地方自治体との協力を進めながら、エリアごとの対応状況を細かく、確認していくという。 「コピーワンス」から「ダビング10」への著作権保護方式の見直しと、移行時期については、「2008年6月を目指して放送事業者及び、メーカーにより実装のための検討が進められている」と報告された。 IP網を利用した地上デジタル放送の再送信については、審査ガイドラインを10月に策定し、11月には電気通信役務利用放送事業者からの申請を受け付けるなど、取り組みを進めている。さらに、2011年にも地上デジタルがカバーできないエリアについては、約5年間の補完措置として、2009年内に衛星を使った地上デジタルの再送信も実施する予定。 衛星を利用した再送信は、補完的な役割の「セーフティーネット」と位置付けられており、放送品質はSDとなる予定。なお、今回の委員会では、この衛星によるセーフティーネットについて時間を割いて議論が行なわれた。 また、受信機の普及については、安価な地上デジタルチューナの開発についても、仕様のとりまとめを関係団体で進めているという。受信機購入に対する支援については、今後の情報通信審議会の議論を重ねていく予定という。 政府内における取り組みとして、総務省に地上デジタル放送総合対策本部を立ち上げたほか、内閣官房に「デジタル放送への移行完了のための関係省庁連絡会議」を設立。同会議では、庁舎や学校などの公共施設のデジタル化や、廃棄リサイクル対策、悪徳商法対策、経済弱者等への受信機普及などの取り組みにおいて、省庁間の連携を図っていく。 ■ 衛星を使ったSD品質の地デジ再送信も2009年に 委員会では、中間答申からの進捗の報告に加え、衛星放送を利用した「セーフティーネット」の計画の概略が公開された。 これは、2011年のアナログ放送終了期限においても地上デジタル放送が受信できない地域に対し、BS衛星を用いた地上デジタル放送の再送信を実施するというもの。 セーフティーネットでは、NHK総合、NHK教育のほか、各地方局の系列キー局の番組の放送を予定しており、日本テレビ、フジテレビジョン、TBS、テレビ朝日、テレビ東京の番組再送信を予定している。放送波はスクランブル化されており、視聴可能な放送局は、放送地域免許に基づいて管理される。 なお、福井県ではNNN(日本テレビ)系とANN(テレビ朝日)系のそれそれのネットワークを福井放送が担当しているが、こうした場合は、衛星では日本テレビ系とテレビ朝日系の双方の番組を提供予定。民間放送局が1つの徳島、佐賀県については、実態を踏まえて今後検討を行なうという。独立UHF局については、セーフティネットの対象外となる。 セーフティネットの事業主体は未定だが「放送分野に実績のある公益的な法人が望ましい」としており、2009年3月の開始を目標としている。ただし、運用期間は5年間の限定となっており、「地上デジタル移行に向けた暫定的な措置」と位置付けられている。 放送は通常のBSデジタル放送受信機で受信可能だが、画質はSD(標準画質)になる。字幕/解説はそのまま放送されるが、データ放送は無し。電子番組表(EPG)については、各局ごとに送信する。また、マルチ編成の場合には、主たる番組を送信する。 対象世帯は、地形などの理由により、直接電波が届かない地域やデジタル混信により視聴が困難で、共聴施設などを用いてもデジタル放送受信ができない世帯。これらの難視聴世帯については、地域協議会(各地域の放送事業者)がホワイトリストと呼ばれる、受信不可能世帯/チャンネル情報を作成し、セーフティーネットの運営主体と共有。視聴者がセーフティネットの運営主体に利用申請すると、運営主体はリスト内の住所であれば、申請を受理。リスト外であれば地域の放送事業者に確認をとり、申請の可否を決定する。 なお、衛星のトランスポンダなどの送信側や、受信側の環境整備などの経費については、「国や事業者などを含めて、どういう負担を取るべきか、あるいは負担のないかたちがあるのか。視聴者負担の在り方を含めて、今後検討を行なう」としている。 このセーフティーネットについて、委員会で議論が行なわれた。地方自治体の代表からは、「共聴施設でカバーできると考えてきた。どういった時に使うものなのか」といった質問が行なわれたが、「時間的に2011年までに整備が間に合わない場合、あるいはデジタル化により、受信点が変更されコストが高くなる地域など」を想定しているという。なお、5年間の時限措置にもかかわらず、消費者負担が必要となる可能性がある点なども、消費者団体を中心に批判の声が聞かれた。 そのほか、テレビのリサイクルについても議論が行なわれた。2011年の完全移行の前後に、まだ捨てていないアナログテレビの廃棄が進むと予測される。そのため、量販店の代表者からリサイクルの現場の混乱とコスト負担増を危惧する声も聞かれ、「モデル的な自治体などを作り、実際の告知や配布も含めて、本当に実験をしてみないとわからない。時期がたつと、混乱が広がる」などの提案が行なわれた。 □総務省のホームページ ( 2007年12月18日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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