|
NTTコミュニケーションズは、生放送のニュース番組向けに、字幕を自動制作する「全自動リアルタイム字幕制作システム」を開発、1月22日より受注開始する。システムソフトウェア一式の価格は315万円で、2008年度中に2~30の放送局への販売を目指し、売上額は1~2億円を見込む。 アナウンサーが読むためのニュース原稿から自動で字幕テキストを生成。生放送中にニュース番組の字幕として自動で送出するソフトウェア。対応OSはWindows XP/Vista。 従来方式では、常に字幕送出のための作業者が1人以上必要だったが、この部分を自動化し、作業者がいない状態でも字幕の送出が行なえるのが特徴。 対応可能な番組は最大5分前後のストレートニュースのみで、今後はさらに長時間の情報/ニュース番組にも対応できるよう、技術開発を進めるとしている。
現在、生放送において字幕を送出する方法は主に3通りで、アナウンサーの発生した音声を音声認識ソフトでテキスト化し、それを手動で修正し、字幕テキストとして送出する「リスピーク方式」と、事前にニュース原稿のテキストファイルから手動で字幕テキストを作成し、生放送中に手動で字幕を送出する「字幕テキスト手動送出方式」、アナウンサーの発生した音声を、タイプライターなどで入力し、手動で送出する「高速入力方式」がある。 いずれも、生放送中に作業する人員が必要となるほか、リスピーク方式の場合、音声認識の精度を高めるため、事前にアナウンサーが発話すると予想される単語を入力しておく必要があった。また、手動送出方式も、ニュース原稿から字幕テキストへの変換を手動で行なう必要があるなど、事前の準備に時間がかかるのが問題だった。
今回の全自動リアルタイム字幕制作システムでは、音声認識ソフトウェアを利用することで、字幕送出の作業を自動化。アナウンサーの音声と字幕テキストを照合し、発話のタイミングで字幕テキストを自動で送出できる。生放送中に字幕送出のための作業員を用意する必要がなくなるため、コストが削減できるという。 また、ニュース原稿を自動で字幕テキストに変換するソフトウェアも含まれており、アナウンサー向けの注釈などが含まれるニュース原稿から、必要なニュース本文のみを抽出し、字幕用テキストを生成できる。各放送局ごとにニュース原稿のフォーマットは異なるが、各社フォーマットに合わせた抽出が行なえるという。ただし、完全に合わせることは不可能で、「放送局側にもニュース原稿制作時に若干の譲歩をしてもらう必要がある」としている。
■ 実証実験では放送品質と評価 同社では、開発の背景として、総務省が挙げた放送番組への字幕付与目標について説明。「現在、日本における難聴者の数は人口の約5%となる600万人と推定されている。これを受けて、総務省では、平成29年度(2017年度)までに、再放送番組も含む全ての字幕付与可能な放送番組に字幕を付与するように目標を挙げている」という。 字幕付与の現状としては、「事前に制作された番組など、字幕付与可能な番組に対する字幕付与率はNHKが100%、民放各局では、平均78%となっており、今後は生放送番組への字幕付与が進む」としている。 生放送番組の場合、前述の従来方式では、字幕制作人員が多数必要となるが、そのための人員確保が非常に困難な状況にあり、こうした放送局側の背景を元に、今回の全自動リアルタイム字幕制作システムが開発されたという。
開発中には、事前に北海道放送、KTS鹿児島テレビ、A放送局の3社と共同で実証実験を実施。その結果、3社中2社より放送品質であると評価されたことを受け、製品化を決定したとしている。 今後は、事前準備をより簡易化するため、ニュース原稿の取り込み作業の自動化を検討しているほか、インターネット経由で利用可能な、ASP事業としての提供も検討しているという。
□NTTコミュニケーションズのホームページ ( 2008年1月21日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|