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マルチメディア放送企画LLC合同会社(MMBP)は5日、同日より開始したモバイルマルチメディア放送サービス「ISDB-Tmm」の実験電波を使ったフィールド実験を報道関係者に公開した。
MMBPは、フジテレビ、伊藤忠商事、NTTドコモ、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、ニッポン放送の5社が設立した企画会社。2011年に現在VHFを使っているアナログテレビ放送が停波することから、後の空き帯域を狙い、モバイルマルチメディア放送の実用化を目指している。
しかし、この帯域を利用したいと手を挙げるシステムやサービスは多く、「放送システム」、「自営通信」、「ITS(高度道路情報システム)」、「電気通信(携帯電話)」という大枠の割り当て方針が決定しているが、「放送システム」の帯域を、どの事業者が、どの程度取得できるかは決定していない。ISDB-Tmmのほかにも、MediaFLOやデジタルラジオといった他のサービスも参入を狙っており、今回のフィールド実験は技術検証を行なうと同時に、割り当て決定に向けて、ISDB-Tmm方式の優位性をアピールする狙いもある。
■ ISDB-Tmmとは ISDB-Tmmの特徴は、現在放送されている地上デジタル/ワンセグで利用しているISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式を拡張して作られた方式であること。映像フォーマットにMPEG-4 AVC/H.264を採用するなど、現在のワンセグ放送と共通している点が多いため、テレビ局など、コンテンツ制作側がこれまでのノウハウを活かしやすく、コンテンツ作成用プラットフォームの共通化などでコスト削減も見込めるという強みがある。また、同じくISDB-Tをベースとした「ISDB-TSB」を採用しているデジタルラジオとも親和性が高く、受信機内のISDB-Tmm受信用ソフトでワンセグとデジタルラジオも受信できる可能性が高いという。 また、VHF帯では、4~12chのHIGHバンド帯が受信しやすく、アンテナや受信機そのものの小型化が見込めるため、ISDB-Tmmでは11~12chの14.5MHzの割り当てを希望している。ISDB-Tmmではこの帯域をワンセグのように429kHz単位で分割してサービスを実施できるため、帯域を無駄無く活用できると主張。一方、MediaFLOは6MHz単位のため、2倍すると12MHzとなり、14.5MHzの帯域に余りが生じると指摘している。
今回のフィールド実験は実験免許を取得し、実際に東京タワーからVHFの11チャンネルを使って、10Wの出力で送信。東京タワーにほど近い、霞ヶ関コモンゲートにある「TV Cafe+」にて受信デモが行なわれた。11chの6MHzを13のセグメントに分割。7ジャンル、70のコンテンツを用意し、映像のストリーミング配信や、動画コンテンツの放送波を使ったダウンロード配信などがデモされた。 詳細な仕様は決定していないが、デモでストリーミング映像として放送されたのは、QVGA(320×240ドット)解像度のMPEG-4 AVC映像で、フレームレートは15fps。ビットレートは400kbpsと現在のワンセグよりも高レートで、「携帯電話画面の高解像度化がより進んでも、ISDB-Tmmではそれを活かした高画質表示が行なえる」という。なお、デモで使用された携帯電話型端末は、ワンセグ対応携帯をVHF受信用に改造したもので、画質やフレームレートは、端末側のワンセグ用表示ソフトの制約を受けており、本来のクオリティが発揮できない状態だという。 携帯端末向けのトップ画面には9個のストリーミングコンテンツが動画サムネイル表示されており、気になるコンテンツを選択すると映像が拡大される。動画サムネイルは9個のコンテンツからリアルタイム作成しているわけではなく、あらかじめ作成したサムネイル用データを放送している。また、コンテンツによってはダウンロード配信されるものもあり、ストリーミング視聴中にダウンロードボタンを押したり、トップ画面のダウンロードコンテンツ一覧から選択して取得できる。 ダウンロード配信は放送波を用いて行なわれており、デモでは1Mbps程度の速度が実現できているという。データはVGA(640×480ドット)のMPEG-4 AVCで30fps、700kbps程度と高画質なのが特徴。「ドラマなどをストリーミング視聴している裏で、続きの高画質版をダウンロードするなどの利用を想定している」という。番組が終了すると放送波ダウンロードも終わってしまうため、ダウンロードしきれない場合は、深夜に再配信したり、人気のコンテンツは頻繁に再配信するなどの工夫で対応できるという。
ここでも、前述の“細かいセグメント分割”の利点が活き、昼間は3つのストリーミング動画を放送し、残りをダウンロード用に使用。深夜はストリーミングを1つに留め、残りをダウンロードといった帯域利用の変更が柔軟に行なえるという。そのため、ダウンロード機能は「ダウンロード予約」というイメージに近く、「2011年には携帯端末の内蔵メモリも大容量化しているので、ドラマ複数話などを随時ダウンロードして蓄積することができる。また、DVDレコーダのおまかせ録画機能のように、ユーザーの好みに合った番組が自動的に蓄積されていくサービスも実現できるかもしれない」という。 なお、ISDB-Tmmサービスイメージとしては、ワンセグのように放送局(チャンネル)が複数用意され、ユーザーが観たいものを選ぶのではなく、NTTドコモのiチャンネルのように、受信するとお勧めの動画が多数表示され、それがストリーミングかダウンロードコンテンツ意識することなく、ユーザーが視聴できるものを想定しているという。 また、地上デジタル放送のフルセグ用チューナを改造した、PCベースの広帯域放送用受信試作機も展示。携帯端末向けとは異なるトップメニュー画面や、前述の高画質コンテンツの再生デモも行なった。さらに、電子書籍など、動画以外のデータ配信もデモ。音声読み上げソフトも組み合わせた、新しいサービスも提案された。
コンテンツ保護のためのDRMについては、どの技術を採用するかは未定。「2011年にダビング10が広く受け入れられていればダビング10など、今後の技術革新も含め、決定時にISDB-Tmmに最も適したものを選びたい」という。なお、有料コンテンツの配信も計画しており、通信を経由して暗号化を解くキーを購入することで、再生可能になる課金システムを今後構築。サービスモデルの検証なども行ないながら、ARIBでの標準化に向けた取り組みを進めていくという。
□フジテレビジョンのホームページ
(2008年3月5日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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