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27日から東京ビッグサイトで開幕した世界最大級のアニメ総合見本市「東京国際アニメフェア」。会期は3月27日~30日までだが、27日~28日はビジネスデーとなっている。当日券は一般が1,000円、中高生が500円。主催は東京国際アニメフェア実行委員会。 会場に設けられた放送局やアニメスタジオのブース展示が中心のイベントだが、併設されたステージでは新作紹介のイベントや、各種シンポジウムも実施されている。28日には、Blu-ray Disc Association主催のシンポジウム「新世代パッケージメディア Blu-ray Discの魅力」が開催された。
■ BDビデオ作成の依頼は急増 薄型テレビのシェア拡大や、HD DVD事業の終息に伴うフォーマット統一により、BDビデオの新作タイトルも増加傾向にある。アニメに関して言えば、先日バンダイビジュアルが「ガンダム00」シリーズのBDビデオ化を発表するなど、劇場用作品だけに留まらず、テレビアニメシリーズのBD化も今後本格化していきそうな気配だ。
そんな中、BDAが主催したシンポジウムにはオーサリングやエンコード、メニュー作りなど、BDビデオの制作を手掛けているオーサリングスタジオの関係者が出席。BDビデオの魅力や、今後の展望などを語った。 出席したのはIMAGICAの西正徳氏、キュー・テックの平野則之氏、ビデオテックの小山康明氏、松下電器産業の加納康男氏、ソニーピーシーエルの横田一樹氏。DVDビデオ市場の立ち上げ時から交流があるという5人は、年に数回飲み会も開いているという。ビデオテックの小山氏は5人の関係について「例えば特定のプレーヤーで再生できないディスクがあった場合、その問題がプレーヤー側にあるのか? ソフト側にあるのか? の原因究明が難しい時がある。その時は皆に電話して“地雷踏んじゃったんだけど、情報無い?”と聞けるような間柄。そういう意味では、新フォーマット市場の円滑な立ち上げに貢献している。努力して酒飲んでいます」と答え、会場は爆笑。和やかなムードで、座談会形式でのシンポジウムとなった。
フォーマット統一の影響について、IMAGICAの西氏は「コンテンツホルダの皆さんから、BDビデオを作りたいという問い合わせが増加している。アニメや映画だけでなく、IMAGICAはCMの編集も行なっているが、CMそのものをBDビデオ化して活用したいという問い合わせも増えている。今後も増加するだろう」と説明。急増する需要への対応策として、松下電器の加納氏は「エンコーダのラインをもう何ラインか増やそうと考えている」という。 だが、立ち上がったばかりのフォーマットには問題がつきもの。BDビデオ特有の困難としてビデオテックの小山氏は「エンコード所用時間の長時間化」を挙げる。「ソフトウェアエンコードで行なうと、DVD時代の数倍から10倍かかることもある。複雑なメニューや特典コンテンツも盛り込めるようになった反面、オーサリングに必要な期間も長くなっている。コンテンツホルダの皆さんには“できるだけ余裕を持ったスケジュールで”とお願いしている」と、苦労を滲ませる。 一方、IMAGICAの西氏は「フィルムからビデオ信号に変換するのと異なり、フルデジタルで制作されたものであれば、色の再現なども正確なままBDビデオにすることができる」と、クオリティ面でBDビデオの利点を挙げる。
しかし、デジタルならではの問題点もある。「アニメで特に多い問題は、階調表現が境界線として出てしまうバンディングという現象。これを低減することが高画質化に重要」という。IMAGICAでは境界線部分をなじませる処理(マッハバンド除去システム)として、独自の「M.A.P.S(マップス)」を導入。同様の問題を指摘するキュー・テックの平野氏も、「この問題に対応できる専用のシステムをスキームとして用意している。これまでの経験を活かし、カット&トライで品質を向上させている」と語った。 ビデオテックの小山氏は、ビデオCD時代のMPEG-1から、MPEGに関わってきた同社の経験から、「オリジナルのエンコーダを作り、日々そのクオリティも向上させている。難しい映像があってもエンコーダを自分たちで作っているので、設定の変更などで対応していける」と強みをアピール。
松下の加納氏は、米国にあるパナソニック・ハリウッド研究所(PHL)での研究結果を活かして作られた、「オリジナルマスターと遜色無いような圧縮映像が得られるエンコーダ」の強みを説明。「六本木にある国内のスタジオでも同様のエンコーダを使っている。また、ポップアップメニュー作成などでもより使いやすいものにすべく、日々話し合いながら作っている」という。 ソニーピーシーエルの横田氏は、編集、エンコード、メニュー作成、音楽作成などを、BDビデオの制作に必要な全段階をカバーできるスタジオとしての総合力をアピールした。
■ BDビデオの今後
BDビデオの今後と言えば、3月25日に公開された最新ファームウェア「Ver.2.20」でPLAYSTATION 3がサポートした、「Blu-ray Disc Profile 2.0」、通称「BD-Live」が気になるところ。この「BD-Live」で実現できる機能について、ソニーピーシーエルの横田氏が解説した。 横田氏によれば、「BD-Live」で実現出来る機能は「提供型」と「参加型」に分けられるという。「提供型では、例えばBDビデオのシリーズ全巻購入者に、ネットワーク経由で特典映像を提供することができるようになる。アニメであれば、アフレコ映像やメイキング映像の差し替えも可能。また、専用のショッピングサイトへと誘導することもできる」と、パッケージメディアの価値向上だけでなく、ビジネス展開にも対応できる点をアピール。 参加型では「鑑賞している人同士での対戦ゲームや、トリビアゲーム、ランキング関連の機能も実現できる。また、掲示板を設けることも可能。それらの機能を本編映像とリンクさせることもできる。パッケージメディアそのものの楽しさを向上させるだけでなく、PCではなくリビングでそうした機能を実現できる」とし、新たなコミュニティ創造の可能性を秘めた機能であることを強調した。
最後にはコンテンツホルダ側のゲストとして、バンダイビジュアルの井坂浩典氏も登壇。同社は日米で既に16タイトルのBDビデオをリリースするなど、積極的なBDビデオ展開を行なっている。しかし、井坂氏によれば「もっとタイトルを増やして欲しいという要望は、ユーザーさんから多数寄せられている」という。 井坂氏は「バンダイビジュアルのBDビデオは、DVD時代に培った高い技術力を持つ、皆さんようなオーサリングスタジオの力が無ければ実現できない。今後もBDの特徴を活かせるような、新たなソフトの企画をスタジオ皆さんにぶつけていきたい」と語り、今後もBDビデオに注力していく姿勢をアピールした。
□東京国際アニメフェアのホームページ
(2008年3月28日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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