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NECは、PCベースのホームサーバーを中心に、蓄積したコンテンツを遠隔視聴できる専用端末を組み合わせたソリューション「Lui(ルイ)」の具体的な展開を発表。ホームサーバーPC「Lui SX」2機種と、クライアントの専用端末「PCリモーター」2モデルを4月下旬に発売する。PCリモーター用サーバーとしても機能するデスクトップPCも同時期に発売。価格はいずれもオープンプライス。直販価格は下表の通り。
Luiは「Life with Ubiqitous Integrated solutions」の略。ホームサーバーPCとクライアント用端末の組み合わせで構築される。DLNAサーバーとしても機能する高機能なサーバーPCの画面と音声を、独自形式にリアルタイム圧縮し、家庭内や外出先にある「PCリモーター」と呼ばれるクライアント端末に送信。端末はWindows CE 5.0を搭載したPDA的な小型/軽量ハードウェアだが、その液晶画面にはリモート接続したサーバーPCの画面が表示され、遠隔操作できる。そのため、長時間動作が可能なPCリモーターでありながら、サーバーPCの処理能力を活かした快適なコンピューティングが行なえるという。映像や音声の配信にも対応している。
■ ホームサーバPC 「Lui SX」と名付けられたホームサーバPCは横長の筐体を採用。筐体は一体型だが、内部でPC部とHDDレコーダ部に分かれている。PC部はOSにWindows Vista Home Premiumを採用。CPUはCore 2 Duo T7200(2GHz)。メモリは2GB、HDDは320GB。上位モデルの「SX700/1G」はBD-Rの4倍速書き込みに対応したBDドライブを採用。「SX500/1G」はDVDスーパーマルチドライブを採用する。 HDDレコーダ部は、2モデルでHDD容量も異なり、上位モデルは500GB×2個の1TB、下位モデルは500GB HDD1基を内蔵する。チューナはレコーダ部に内蔵。地上デジタル×2、BS/110度CSデジタルを各1基搭載する。放送波のTS録画が可能だが、録画機能専用で、放送のリアルタイム視聴は行なえない。総ての番組は録画してからのみ視聴可能。リビングにテレビと接続して利用することをイメージしており、「リアルタイム視聴はテレビを利用して欲しい」(NEC)という。データ放送にも非対応。また、ダビング10への対応は現在のところ未定だという。 DLNAサーバーとして動作し、録画したデジタル放送番組の2番組同時配信が可能。ダブルチューナでデジタル放送の2番組同時録画も行なえ、2番組録画中でも2番組同時配信が可能。DTCP-IPにも対応しており、サポートするDLNA対応テレビなどから録画番組を再生できる。ただし、ホームサーバーで再生する場合、HDDレコーダ部からPC部へ“内部で配信する”という扱いになっているため、サーバーでの再生が配信1系統に含まれる。そのため、サーバーとクライアント、クライアントとクライアントの同時再生は可能だが、サーバーとクライアント2個の同時再生は行なえない。
独自のミドルウェアとファイル管理技術により、2番組録画、2番組再生という、HD放送4番組分の同時データアクセスを実現。配信専用のLSIも備えており、配信時のCPU負荷を軽減している。また、内部の温度やファンの回転状況などを監視する専用マイコンも内蔵。システムダウンした場合にも自動的に再起動したり、停電時には復旧後にレコーダ部を自動的に再起動して予約録画を行なうことも可能。サーバーグレードの電源を使用するなど、企業向けサーバー開発のノウハウを投入したとしている。 ホームサーバーのPC部にプリインストールされた視聴/録画ソフトは「LuiStation」。クライアント用ソフト「LuiStation/PLAYER」も同梱しており、後者は2台までのPCにインストールできる。いずれも、SmartVisionをベースとしている。
両ソフト間はDLNAを拡張した形式で連携。LuiStationだけでなく、クライアント側からもEPG表示やサーバーPCの録画予約などが遠隔操作で行なえる。ただし、ネット経由の宅外などからの録画番組の再生、録画予約は行なえない。DLNA接続でコピーワンス保護がかけられていない動画や音楽、静止画などは宅外のPCでも視聴できる。
「LuiStation」はリビングでの使用を想定した10フィートUIを採用。付属の専用リモコンでも操作可能。ムーブはBD-RE、もしくはDVD-RAMのみ可能で、編集はムーブ後のオンディスクエディティングでサポートする。おまかせ録画や番組表カスタマイズ、追跡録画、視聴履歴を解析してのおすすめ番組提案などの機能が利用できる。「LuiStation/PLAYER」はマウス操作に対応し、リモコンには非対応。サーバーPCの、PC部分の電源を遠隔でONにすることもできる。なお、LuiStation/PLAYER側ではディスクへの書き出しは行なえない。
筐体デザインはリビングでの使用をイメージし、AV機器のようなフォルムを採用。ピアノブラック塗装とヘアライン仕上げのアルミパネルを採用。全面右側に動作状態を示すインジケータを備える。独自の空冷システム「エアサイレンス」を採用することで、録画/再生をしながら30dBを切る低騒音を目指しているという。 ディスプレイ(テレビ)接続用にHDMI出力を1系統装備。光デジタル音声、ライン入出力、ヘッドフォン出力などを各1系統備える。SDやメモリーステックなど、7つのメディアに対応したリーダを搭載。外形寸法は2モデル共通で、430×360×180mm(幅×奥行き×高さ)。重量はSX700/1Gは約15kg。SX500/1Gは約14kg。消費電力は標準で100W、スリープ状態でSX700/1Gが約59W、SX500/1Gは約49W。
■ PCリモーターとの連携
前述のホームサーバーPCには、PCリモーターと呼ばれる端末との連携が可能という大きな特徴がある。これは、ホームサーバーPCの画面、音声出力を、独自形式にリアルタイム圧縮し、PCリモーターと呼ばれるクライアント端末に送信。CPUなどが非力なPCリモーターから、高機能なホームサーバーPCを操作することができるため、PCリモーターを高機能PCのように扱えるというもの。
PCリモーターはノートPCタイプの「RN」(RN700/1C)と、ポケットタイプの「RP」(RN500/1C)を用意。どちらもフラッシュメモリを内蔵(ノート型は256MB/ポケット型はそれよりも小容量)し、OSにWindows CE 5.0を搭載しているが、起動すると専用メニューが表示され、サーバーとリモート接続するか、ファイル転送を行なうかの選択画面が表示されるため、通常のWindows CE端末のように任意のアプリケーションをインストールするなどのカスタマイズや、Windows CE 5.0の画面で各種操作を行なうことはできない。ただし、ブラウザのInternet Explorerと、ゲームのソリティアは用意しており、ちょっとしたブラウジングやゲームは行なえるようになっている。
「RN」(RN700/1C)は10.6型、1,280×768ドットの液晶ディスプレイを搭載。IEEE 802.11b/gの無線LANを内蔵するほか、JIS標準配列のキーボードも搭載。モノラルスピーカーも内蔵。USB 2.0端子を2系統備え、SDメモリーカードスロットと、Type II CFカードスロットも備えている。ただし、利用できる通信機能は無線LAN、および有線LANのみで、そのほかの通信カードは使用できない。外形寸法は258×15.8×23.9mm(幅×奥行き×高さ)、バッテリを含む重量は約649g。バッテリ駆動時間は約4.6時間。
ポケットタイプの「RP」(RN500/1C)も、スライド式のキーボードを搭載。液晶ディスプレイは4.1型ワイドで、解像度は800×480ドット。モノラルスピーカーも内蔵する。RNと同様に無線LANを内蔵。マウス操作はRNがスティック型ポインタで行なうのに対し、ポケットタイプはタッチパネルを採用している。SDメモリーカードスロットや、Type IIのCFカードスロットも装備。USB 2.0を1系統装備。外形寸法は142×80×22mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約249g。バッテリ駆動時間は約5.4時間。有線LANには非対応。
なお、両モデルにCFスロット、ノートPC型にはPCカードスロットも備えているが、リモート接続をサポートするのは無線/有線LANのみで、通信カードは利用できない。これは、PCリモーター用の、各通信カードのドライバが存在していないためで、「通信事業者とも話し合いを行なっているので、将来的にドライバを用意し、通信カードも利用できるようになる可能性はあるかもしれない。しかし、現在のところは未定」(NEC)だという。また、無線LANのアドホック接続にも非対応。
LAN内に加え、ネット経由で屋外などから自宅のホームサーバーへ接続可能。PCリモーターのメニューから接続ボタンを押し、パスワードを入力すると認証が行なわれ、接続が完了する。内部で行なわれる動作は、PCリモーターのパスワードを入力した時点で、自宅ホームサーバー用にあらかじめ設定したメールアドレスに接続を促すメールが送信される。ホームサーバー側では、スタンバイ/休止状態であってもLANを監視するサブボードが20秒に1回程度メールをチェックしている。接続要求メールを発見すると、サーバーを起動させ、ルータの接続用ポートを自動開閉。サーバーの現在のグローバルIPアドレスをPCリモーターへとメールで知らせ、接続が完了するという流れ。メールを使っているため、固定IPやDNSは必要無い。
通信のセキュア化には、VPNと128bit AESでの暗号化を使用。サーバー/クライアント間での機器相互認証も行なっている。なお、同一ネットワークに設置できるサーバーPCは1台のみで、1台のサーバーに接続できるPCリモーターは1台のみ。サーバーPC上で再生する動画/音声などはPCリモーター経由で表示できるが、デジタル放送を録画したものや、DVD/BDビデオなどの映像は配信できない。 なお、リモート接続時に注意が必要なのは、ホームサーバーの光学ドライブに、何らかのディスクが入っているとPCリモーターと接続できないこと。DVD/BDビデオの映像を配信しないための処置で、リモート接続時中に、配信してはいけないディスクの種類を判別するのが難しいため、光学ドライブにディスクが入っていると連携できないよう設定されている。リモート接続時に自宅のホームサーバーにディスクが挿入されるとリンクが切れる。遠隔操作で光学ドライブをイジェクトすることはできない。そのため、リモート接続する必要がある場合は外出前にドライブからディスクを抜いておき、家族などにディスクを挿入しないよう伝えておく必要がある。 リモート接続時の映像/音声データの転送は、回線速度に合わせてサーバー側から4段階に設定可能。ノートタイプの「RN」はEthernet端子も備えているため、より高画質な映像でリモート操作できる。対応ビットレートは3~30Mbps。接続中はPCの操作レスポンスを重視した「PCモード」と、バッファリングを行なうことで動画を安定再生する「Movieモード」を用意する。リモート接続中は画面表示領域の移動などはPCリモーターのキーボードから操作可能。高解像度なサーバーPCの画面をPCリモーターの小画面に縮小表示したり、等倍で切り抜いた表示を行なうなど、表示モードも変更できる。 こうした遠隔操作に加え、ファイル転送専用モードも用意。PCリモーターに挿入したSD/CFカード、USBメモリなどに保存されたデータを、リモート接続したサーバーへ転送するもので、FTPソフトのようなデザインの画面が表示される。 ■ VALUESTAR R Luiモデル
これらの機能はホームサーバPCとPCリモーターの組み合わせで実現できるが、リモート接続用サーバー機能のみを搭載した通常のPCもラインナップされる。それがVALUESTAR R Luiモデル「VR970/MG」、「VR500/MG」の2機種。スペックはVR970がCore 2 Quad Q6600(2.4GHz)でメモリ2GB、HDDは500GB。BDドライブを搭載。VR500がCore 2 Duo E4500(2.2GHz)で、メモリ2GBで、HDDは320GB。DVDスーパーマルチドライブを備えている。 価格はオープンプライスで、4月下旬発売予定。店頭予想価格はVR970が30万円前後、VR500が22万円前後の見込み。どちらも19型の液晶ディスプレイが付属する。OSはWindows Vista Home Premium。 なお、この2機種には、LuiのPCリモーターサーバーとしての機能を搭載した専用サーバーボードが内蔵されている。NECでは2007年12月の「Luiブランド」発表時に、サーバーボードのみの販売も予定するとしていた。しかし、第1弾モデルとしては内蔵PCのみのリリースとなり、ボード単体での販売は第2弾以降で予定しているという。
単品ボードの価格やリリース時期は未定。対応OSも現在はWindows Vistaのみとなる。カードにはHDMIの入出力端子とEthernet端子を備えており、PCの画面出力(HDMI)を、ボードのHDMI入力に挿入。PC画面をHDMIでリアルタイム動画キャプチャし、PCリモーターへ送信。HDMI出力はスルー出力用で、ボードを組み込んだサーバーPCのディスプレイへと出力する。そのため、現在の単品ボードの仕様では、PCリモーター用サーバーとして動作するためにはHDMI出力のあるPCに搭載する必要がある。NECでは「単品発売の要望は多く、Windows XPなど、他のOSへ対応して欲しいという声が多いのは認識している」という。
□NECのホームページ
(2008年4月15日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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