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東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「春のヘッドホン祭」が4月19日の土曜日、中野サンプラザにて開催された。
フジヤエービックは薄型テレビやビデオカメラ、各種オーディオ機器の新品/中古販売、買い取りなどを行なっているほか、業務用機材も手掛けるプロショップなどもあり、AV関連機器専門の総合販売店として知られている。一方で、国内外の中高級ヘッドフォンや、ヘッドフォンアンプなど、ヘッドフォンと関連製品の販売にも注力。東京におけるヘッドフォンムーブメントの中心地的な存在とも言える。 「ヘッドホン祭」は、そんな同店が取り扱う製品や、各社の新製品が体験できるイベントとして、従来は中野ブロードウェイの中で行なわれていた。今回は会場を中野サンプラザへ移し、15階のエトワールルームを貸し切って、オーディオテクニカやデノンなどの国内メーカーから、ULTRASONEのEdition9など、普段あまり聞くことのできない海外製高級ヘッドフォンも多数出展。気軽に試聴できるイベントとして、多くの来場者でにぎわっていた。入場料は無料。
来場者の中には、聞き比べをするために、普段使用しているヘッドフォンやヘッドフォンアンプ、CDソースなどを持参している人も多く、熱心に聞き比べを行なう姿が目立った。しかし、全てヘッドフォンで試聴しているため、会場内に音楽は流れていない。担当者に様々な質問をしても他人の試聴を妨げる心配もすくないので、熱気溢れるオーディオイベントでありながら、人の話し声が大半を占めるという、このイベントならではの光景が広がっていた。
■ トレンドはバランス接続
今回のイベントで注目を集めているのは、マニアの間で話題を集めるバランス接続に対応したヘッドフォンアンプ。通常の3極プラグで接続するヘッドフォンはアンバランス接続だが、左右のユニットそれぞれに、プラス極に正相、マイナス極に逆相を流すXLR端子のバランス接続を行なうことで、コードの短いヘッドフォンでも、外来ノイズの低減やヘッドフォン駆動能力の向上、クロストークの低減などの利点を堪能しようという動きだ。 しかし、この接続を行なうためには、バランス接続に対応するヘッドフォン、もしくはアンバランス接続用をバランス接続用に改造したヘッドフォンと、片チャンネルに±極用アンプを2基、合計4基のアンプを内蔵した専用ヘッドフォンアンプが必要になる。
そこで、例えばフジヤエービックではULTRASONEのヘッドフォン「Edition9」のバランス接続版(オープン/フジヤ価格22万8,000円)や、GRADOの「GS1000」のバランス接続版(17万100円/フジヤ価格124,800円)などを取り扱い中。アンバランスの「Edition9」をバランス用にカスタムする有料サービスなども実施するほか、バランス接続対応のヘッドフォンアンプの品揃えも拡充させている。
■ Intercity Intercityのブースでは、アンバランス用ヘッドフォンアンプの人気モデル「HD-1L」をデュアルモノラル構成のバランスアンプ化し、パワー段のドライブ能力も向上させたという新モデル「MBA-1」と「MBA-1S」を展示。バランス接続だけでなく、アンバランス接続も可能で、プリアンプ出力も備えているため、バランス接続プリアンプとしても使用できるという。 L/Rチャンネル間や、それぞれの±間の回路配線長が同じになるよう設計されているのが特徴で、各アンプ回路は内部で完全に独立し、正確で高品位な再生が行なえるという。ブラックカラーの「MBA-1」に加え、ニッケルを多く含む非磁性ステンレスを筐体などに使い、外来ノイズの影響を低減したという上位モデル「MBA-1S」も用意。価格はどちらもオープンで、「MBA-1」は5月8日発売で実売19万8,000円前後、「MBA-1S」は6月1日発売で22万9,800円前後の見込み。
■ C.E.C. C.E.C.のブースでは、ヘッドフォンアンプの「HD53R」と、ベルトドライブ方式を採用したCDプレーヤー「TL53Z」などを、現行モデルを使った試聴環境を提供。さらに、紙資料だけではあるが、バランス接続対応ヘッドフォンアンプの資料も配付している。 「HD55」と名付けられたモデルで、年末、もしくは来年前半のリリースを目指して開発が進められている。アンバランス/バランス接続の両方に対応するA級動作のヘッドフォンアンプで、スピーカーの駆動もサポート。DACも内蔵し、USB端子も装備。USBオーディオとしての機能も搭載予定という多機能なモデルで、価格帯は20万円後半~30万円前半程度のイメージだという。
■ OJI Specialなど カスタムオーダーのオーディオ機器、ホームシアター用PCの制作などを行なっているOJI Specialでも、バランス接続用ヘッドフォンアンプを、同社のDAC、トランスポートと組み合わせて展示。トランスポートはマスターCDとバイナリが一致したデジタル出力が行なえ、Blu-rayなどの再生にも対応したというモデルを使用。DACからは完全バランス伝送/増幅処理を行なうことで、トータルで精密な再生が行なえるという。 ハイエンドシステムと位置付けられており、より低価格なモデルも含め、今後はこの技術を使ったカスタム機器のオーダーも受け付けていくという。 さらに、会場ではHEADROOMの高級ヘッドフォンアンプ「Balanced Home」も試聴可能(MAXモジュールとMAXDAC付きでオープンプライス/フジヤカメラでは54万8,000円で販売中)。来場者の注目を集めていた。
■ イヤフォン新モデルも エムオーディオのブースでは、Ultimate Ears製のカナル型(耳栓型)イヤフォンの新モデルを参考展示している。「ハウジングの小型化という日本市場の要求にUltimate Earsが応えた新モデル」とのことで、「Super.fi 3 Studio」と同様にシングルウェイのバランスド・アーマチュアユニットを搭載しているが、ハウジング部が小さい(短い)のが特徴。 さらに、イヤフォンコードも従来シリーズより柔らかいものになっているという。展示モデルは薄紫で光沢があり、ハウジングの小ささと合わせて女性にも人気が出そうなスタイルだ。小型化することで起こる低域再生能力の低下は、ハウジングをバスレフにすることで解消。コードの根本に小さい穴が開いている。5月発売予定で、価格は15,800円程度になる見込み。
フックアップのブースでは、業務用CDマスタリングソフト「Sequoia 10」をステレオヘッドフォンアンプ/DAC/ステレオプリアンプとして動作するUSB接続の「DAC1 PRE」と組み合わせて展示。「Sequoia 10」から機能を絞って低価格化した「Samplitude10」も紹介した。 マスタリングスタジオで、ヘッドフォンを用いて音のチェックをする環境そのままと言える展示をした理由は、「CD制作現場と同じ環境で再生することで、より忠実な高音質再生が行なえるという提案をするため」だという。つまり、CDマスタリングソフトを再生用ソフトとして使ってもらおうという試みで、「Sequoia 10」は40万円程度、Samplitude 10も10万円前後するソフトウェアだが、注目しているマニアも多いそうだ。
会場ではほかにも、タイムロードが日本総代理店として販売を開始する、オランダのポータルサイト「Qables.com」プロデュースのポータブルヘッドフォンアンプ「iQube」が注目を集めている。乾電池で駆動できる高品位な小型Dクラスアンプで、ポータブルプレーヤーなどとの接続を想定している。5月20日から発売予定で、価格は65,100円。
会場では製品だけでなく、ヘッドフォン文化そのものの新たな方向性もかいま見ることができる。音質のレポートだけでなく、そのヘッドフォンを装着した美少女イラストも掲載するという新しいスタイルが話題になった同人レビュー本「萌えるヘッドホン読本」。その商業誌版の出版が発表された。
「美少女+ヘッドフォン」という組み合わせは、可憐な少女に機能美溢れるメカ的なヘッドフォンを装着するという「メカ娘」的なアンバランス感と、その機種がハイエンドになればなるほど「現実にはほとんど見られない光景」という非日常感も加味され、独自の“萌え”ジャンルとして静かな盛り上がりを見せている。 商業誌版は同人版に、描き下ろしのヘッドフォン娘を15人(カラー)追加。今回のイベントの告知イラストも手掛けるオオツカマヒロ氏や、安倍吉俊氏、玄鉄絢氏、PONPON氏など、豪華なイラストレーター/漫画家が参加するという。文章もソニーのヘッドフォン開発者や、アニメ関連のサウンドクリエイターである川井憲次氏へのインタビュー、SACDの音質が話題のアクアプラス「LEGEND OF ACOUSTIC」の特集などが追加されるという。白夜書房から6月25日発売で、価格は1,890円。
会場にはこの本から抜け出してきたような、ヘッドフォンを付けたコスプレイヤーの女の子達も参加。撮影コーナーも設けられており、音質だけではない、のヘッドフォンの新たな魅力に触れられるイベントとなっていた。
□フジヤエービックのホームページ
(2008年4月21日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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