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ヤマハ株式会社は、音声とLEDライトを組み合わせた新コンセプトの電子楽器「TENORI-ON(テノリオン)」(TNR-W)を同社サイト限定で5月12日より発売する。価格は121,000円。 TENORI-ONは、外形寸法205×205×32mm(縦×横×厚さ)の正方形のボード状の筐体に備えた16×16個のLED搭載ボタンを押すことで、直感的に作曲/演奏が行なえるという電子楽器。メディアアーティストの岩井俊雄氏と共同で開発し、既にイギリスにおいて2007年4月に発売され、ビョークやコーネリアスなどのアーティストもライブで使用している。イギリス以外の欧州や米国でも4月以降より順次発売する。
LEDボタンは基本的に垂直方向が音階、水平方向が時間を表し、標準の「Scoreモード」では、押したボタンが点灯し、長押しするとその音階が盤面に残され、演奏される。本体脇に10個(L/R各5個)のファンクションボタンを備え、音色や発音の長さ、オクターブ、ループポイント、ループスピードなどが切り替えられる。 Scoreモードのほか、Random/Draw/Bounce/Push/Soloの計6モードが利用可能。Randomは図形を指定することで、その中をドットが移動し、頂点にぶつかったタイミングで音を発する。Drawは指で線を描くように滑らせると、その動きを記録し、流れるような音として出すことが可能。Bounceは、16個のボールが上下にバウンドするような動きをし、移動の長さを変えることで様々なリズム音を出せる。Pushモードは背景音として長い音を加える時に利用する。Soloは、ピアノの鍵盤のように、押したときだけ音が出て、押す位置の高さを変えることで繰り返しのリズムが変化する。
作成したデータはレイヤー(トラック)として保存でき、レイヤー16個までを1ブロックとし、16個までのブロックを1台のTENORI-ONで演奏することが可能。各ブロックの演奏順などを変えることで、変化を付けた再生が行なえる。作成したデータはSDカードに記録し、専用形式のファイルとして他のユーザーと共有することも可能。なお、SDカードスロットはSDHCカードには非対応。
出力0.5W×2chのスピーカーを内蔵し、イヤフォン出力も装備。パソコンとの接続や、他のTENORI-ONとの同期再生などにはMIDI端子を利用する。 操作ボタンとして、LEDやファンクションキーのほかに、本体下部にジョグダイヤルや決定/キャンセルキーなどを搭載。本体下部に122×32ドットのモノクロ液晶ディスプレイも備える。筐体フレームはマグネシウム合金製。
最大の同時発音数は32音。エフェクトとして10種類のリバーブと5種類のコーラスを用意。シーケンサ部は-5~+5オクターブ、40~240BPMのテンポで調整可能。 電源はACアダプタ経由で供給できるほか、単3電池6本でも駆動できる。アルカリ電池利用時の内蔵デモソングの連続再生時間は約5時間。電池を除く重量は約700g。 ■ 「アーティストが存在しない楽器」
発表会では、TENORI-ONの共同開発者である岩井俊雄氏がコンセプトや開発経緯を説明。映像作品を手がけ、人気テレビ番組「ウゴウゴルーガ」などでも知られる岩井氏は、「電子楽器といえばシンセサイザーというイメージを乗り越える意気込みで作った」とし、「アコースティック楽器のように、音だけでなく演奏者の振る舞いも見て楽しめる」とアピールした。 「ヤマハとの出会いはMSX」という岩井氏は、「実験アニメーションを作るためにヤマハの音楽専用コンピュータも買ったが、譜面を読み書きできないことから挫折した。でも音楽に対する情熱は強く、何かを作ってみたかった」と、学生の頃に出会ったという穴の空いたシートを用いて演奏する手回しのオルゴールを紹介。 オルゴールで「HAPPY BIRTHDAY」の曲を演奏した後、同じシートを裏返して演奏すると、一転して悲しげな曲調に変わった。岩井氏は「楽譜のドット配列の美しさは変わらないが、全く違う曲になる。このように、音楽を一つの時間の流れだけでなく、立体的に考えれば発展できるのでは」と述べた。 本体デザインについては「電子楽器といえば、キーボードの形状をしたものが多く、言い方は失礼だが“ピアノのものまね”。バイオリンやドラム、ピアノなどは、音を出すための必然性からその形が生まれたが、電子機器では新しい楽器を生み出すイマジネーションが弱まっている」と指摘。正方形の筐体デザインや、ボタン数やレイヤー数などの要素で16という数字を用いたことについて「現代の楽器を象徴するアイコンになるのでは」とした。
会場には、「普段は開発責任者に任せているが、ユニークなTENORI-ONについては話をしたくて駆けつけた」という梅村充社長がTENORI-ONを手に登場。そのユニークさについて「1番目には、まだ(専門の)アーティストが存在しない楽器であること。2番目には、コンセプトの段階から岩井俊雄さんと共同開発したこと」と説明。「これから新しいTENORI-ONアーティストが生まれることに期待する」とした。 ヤマハの開発担当者であるサウンドテクノロジー開発センターの西堀佑氏によると「ビョークがワールドツアーで使用するなど、先端の電子音楽を開拓するアーティストたちが使い始めている」という。国内では現時点では直販のみだが、タワーレコード渋谷や、青山・スパイラルの「スパイラルレコーズ」など全国のレコードショップや美術館などで体験スペースを用意するという。 なお、既にイギリス発売された一部の製品について「回路の不備で発熱の可能性があったが、既に改修されており、日本を含め世界中で安心して使える」(西堀氏)としている。
□ヤマハのホームページ ( 2008年4月25日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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