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松下電器産業株式会社は28日、2007年度(2008年3月期)の決算を発表した。売上高は前年と同程度の9兆689億円だが、営業利益が13%増の5,195億円、税引前利益は1%減の4,350億円、当期純利益は30%増の2,819億円となった。大幅な伸びを示した純利益は22年ぶりに過去最高を更新。アジアや欧州を中心に好調な薄型テレビなど、デジタル家電が牽引した。
売上高は、前年の9兆1,082億円から9兆689億円に減っているが、これは子会社だった日本ビクターが連結対象から外れたため。これと、為替換算差を引いた実質前年比では104%と増収となっている。 大坪文雄社長はROE(株主資本利益率)が7.4%になったことや、純利益が過去最高を更新したことなどに触れ、「2007年度を初年度とする、3カ年の中期経営計画である“GP3”計画のスタートダッシュとして十分な実績が得られた」と語り、2009年に売上高10兆円、資本利益率(ROE)10%の達成を目標として掲げるGP3計画の実現に向け、「GP3を実現するためには今年度は勝負の年になる。ここで止まることなく、さらに力強くフェーズチェンジを行なっていく」とした。
成長の柱となる薄型テレビの戦略は、目標として2009年度に37型以上で、販売台数1,250万台を掲げる。2007年度はプラズマが425万台、液晶が325万台、合計750万台という実績で、その内37型以上は450万台。2008年度はプラズマ600万台、液晶500万台を見込み、37型以上は700万台を予定している。大坪社長は「我々の予想よりも一年前倒しで37型以上の市場規模が増加しており、GP3計画では5,000万台の市場で2009年度にシェア25%として、1,250万台という数字になった。現在だと6,200万台程度の規模になると考えている。それでも当初の計画通り、1,250万台という数値は必ず達成しようと考えている」とする。
なお、大坪社長は2007年度のテレビ事業を振り返り、液晶とプラズマの両方で、金額ベースでは当初計画を達成したが、台数ベースでは未達であったことに触れ「2007年度の液晶は、パネル調達はできず、作りたくても作れないという状態になった。プラズマは経営的にベストになる供給を心がけた結果で、計画そのものに大きな矛盾は無かったと考えている。今年度の液晶の調達は多少緩和されると思うが、引き続き厳しい状況に変わりはないだろう」とした。
部門別では、AVCネットワーク分野の売上高は前年比6%増の4兆18億円。映像・音響部門は薄型テレビ、デジタルカメラなどが好調で前年比8%増。情報・通信機器分野ではカーエレクトロニクス機器や移動体通信などが堅調に推移。前年比5%増となった。デバイス分野の売上高は一部電子部品などの売り上げが堅調で前年比2%増の1兆1,503億円となっている。日本ビクターの売上高は1,805億円。
成長戦略の柱の1つと位置づけている海外市場でも、2桁増販に向けた取り組みを強化する。欧州では白物家電、北米では製販一体化を強化し、VIERA Linkを含め、VIERAブランドを徹底訴求。ロシアでもVIERAや白物を推進、中国ではオリンピックを徹底活用、インドではブランドショップ増強など、それぞれの国や地域に合わせた施策を実施。
その一例として、ロシアと中近東を挙げる。両国では103型プラズマが台数ベースで前年比、ロシアでは919%、中近東では374%と「大変好調」(大坪社長)だという。中近東では王族などの超富裕層に向けた、「One to Oneマーケティング」を強化。ロシアではショールームや展示会など、従来のマスマーケティングに加え、富裕層へのダイレクトなコンタクトや、美術館などへの導入も検討しているという。
2008年度の年間見通しは、売上高が前年比1%増の9兆2,000億円、営業利益が同8%増の5,600億円、税引き前利益が同15%増の5,000億円、当期純利益は10%増の3,100億円を見込む。なお、ビクターを除いた実質前年比は、売り上げ高が7%増となる。 薄型テレビが引き続き成長を牽引。営業利益は原材料のコストアップや価格低下で5,360億円程度のマイナスを想定するが、合理化の影響4,700億円に、実質売り上げ増の2,200億円などがカバーし、5,600億円の達成を目指す。パナソニックAVCネットワークス社の見通しは前年比16%増の2兆2,816億円、パナソニック モバイルコミュニケーションズは「ビエラケータイを進化させたモデルの投入を予定しており、売上高は7%増の4,816億円を見込んでいる」という。 引き続き、円高や原材料価格の高騰などのマイナス要因は存在するが、大坪社長は「原材料高騰によるコストアップは事業計画立案の中で想定した範囲内。折り込み済みのものより厳しい部分もあるにはあるが、イタコナボード(製品に使われた材料を突き詰めると鉄板か粉末、つまりイタかコナに帰結することに由来)の考え方を拡張し、原材料が高騰したら、その材料を少なく使うような製品の開発に取り組めば良い。“モノを作るメーカーとしてどのような備えをするか”がイタコナの真髄」と、成長への自信を崩さない。 「2007年度の結果は、全従業員が一致団結して成長へとフェーズチェンジしようという想いが実を結んだもの。従業員のモラルも上がっており、社内が良い雰囲気に包まれている。従業員皆が成長へのフェーズチェンジを実感できていることが、最も良い成果でもあり。それが“松下らしさ”の復活にも繋がるだろう」と語った。 また、2007年4月に設立した「モノづくりイノベーション本部」に、従来の4部会に加え、新たに新規事業創出プロジェクトを加えたことを発表。「まだ、どこも事業化していない事業にチャレンジする部会で、極めて明確なターゲットをいくつか設定している」というが、詳細については伏せられた。
なお、一部報道にあった三洋電機との資本・業務提携については、「そういうことを検討している事実はまったくございません」と強く否定。また、北京オリンピックの聖火リレーをめぐる混乱については「特定の国とか、社会問題について特にコメントは無いが、我々はオリンピックの精神を尊重してサポートしているので、IOCの意向に従う。トップスポンサーとしてのポジションに一切変更は無い」とした。また、「中国で外国製品の不買運動が起こっている影響は?」と聞かれると、「不買運動は無く、中国からのオーダーも極めて順調。ビジネスに影響は無い」とした。
□松下電器のホームページ
(2008年4月28日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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