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三洋電機株式会社は、世界初の「4LCD新光学エンジン」を搭載したデータ用プロジェクタ「LP-XP200L」を9月24日に発売する。価格は189万円。世界市場向けに月産12,000台、その中で国内向けは月産1,000台を予定している。なお、投写レンズは別売。 最大の特徴は、世界初という「4LCD新光学エンジン」を搭載したこと。通常の3LCD方式は、ランプからの光をダイクロイックミラーを使ってRGBの3色に分け、それぞれの光をLCD(HTPS)に透過させ、プリズムで再び合成、レンズを通してスクリーンへ投写している。しかし、「RGBの純光のみでは明るさが出ない」(デジタルシステムカンパニー プロジェクタ事業部 企画部 企画一課 渡邉昌彦担当課長)ことから、赤と緑に黄のスペクトルも若干混ぜて表示しているという。
しかし、この方式では「緑と赤の間のスペクトラムを捨てがちになるのが問題だった」(渡邉氏)。そこで、緑のLCDの前段に「カラーコントロールデバイス」を組み込み、そこにランプから取り出した黄色の光を照射し、黄成分を独立して制御。緑の成分と合わせて緑用のLCDを透過させ、プリズムへと送る新光学エンジンを開発。同社従来機種と比べ、色彩表現力を最大約20%向上させた。色彩表現能力が求められるデジタルサイネージ(電子広告)での利用を見込んでいる。 詳細な仕様は特許の関係で明らかにされていないが、「緑のLCDに黄成分を重ねても、緑成分に影響は無い」という。また、LCD自体は従来のものと同じ。LCDは1.3型で、解像度は1,024×768ドット。カラーコントロールデバイスのサイズや解像度は明らかにされていない。 カラーコントロールデバイスは板状のデバイスであるため、LCDと合わせて4枚の“板”が使われていることになり「4LCD」と名付けられた。しかし、カラーコントロールデバイスはLCDとは異なり、LCD自体は3枚しか使われていないため、厳密には「3LCD+1」という表現になる。
光源には330WのNSHAランプを採用。高出力のランプと高効率、光学エンジン技術を組み合わせることで輝度7,000ルーメンを実現した。なお、前述の“緑と赤の間のスペクトラムを取り込む”4LCDは、色彩表現能力だけでなく、高輝度化にも寄与している。コントラスト比は2,200;1。
メンテナンス性も向上。新たにアクティブ・メンテナンス・フィルタを搭載。吸気の風量からフィルタの目詰まりを自動検出し、フィルタを自動的に巻き取ることで交換の手間を軽減。10回分のフィルタを内蔵しており、業界最長約10,000時間のフィルタ実働時間を達成。1日14時間使った場合でも、カートリッジ交換サイクルは2年で済む。 投写レンズは別売。画面サイズは31~400型まで対応可能。投写距離は装着するレンズによって異なる。入力はHDCP対応のDVI-D×1、アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1、アナログRGB(BNC)×1、S映像×1。映像出力はアナログRGB(D-Sub 15ピン)×1。音声はアナログのステレオミニ入力×2、出力×1を用意。コントロール端子やUSB、有線リモコン用端子なども備えている。 消費電力は484W。外形寸法は370×439.9×187mm(幅×奥行き×高さ)で、レンズを含まない重量は11.4kg。リモコンも付属。
■ 4LCDの民生機展開は未定
4LCDで実現した色彩表現能力について、デジタルシステムカンパニー プロジェクタ事業部の荒田正副事業部長は、「より美しく鮮やかに、リアルに投映したいというユーザーニーズに応えるもの」とし、導入イメージとして「スーパーマーケットでの青果物など生鮮食品CM」、「旅行代理店で、旅行先の風景や観光スポットの紹介」、「デパートのショーウィンドウ」などでの使用を挙げる。
4LCD技術の民生機への投入については、「あくまで色再現性が必要とされるデジタルサイネージ向けに開発したもので、今後はさらなる高輝度化、大型化、高精細化に注力。教育関係などへも展開させたい」(荒田氏)とし、現時点での予定は無いとする。一方で渡邉氏は「コストの問題もあり現在のところは難しいが、将来的には検討していきたい」と答えた。 荒田氏はプロジェクタの世界市場規模について、2008年で約660万台、2010年には880万台と予測。「5,000ルーメン以上のデジタルサイネージ用モデルも順調に推移するだろう」とし、その根拠としてデジタルサイネージ市場向けの表示機器市場が2008年で1,000万台、2010年で2,000万台と急速に拡大していることを挙げる。 しかし、デジタルサイネージ市場の主流は液晶やプラズマなどの薄型ディスプレイであり、2010年の2,000万台市場でも「プロジェクタはその中で5%程度」(荒田氏)という。だが、薄型ディスプレイでは難しい、100インチを超える大型表示のニーズが海外で高まっており「そうしたニーズに向けて、プロジェクタでのデジタルサイネージを訴求していきたい。海外に比べて国内ではまだまだ薄型ディスプレイが主流だが、逆にこの状況はビジネスチャンスであると考えており、空港や地下鉄などで利用してもらうよう訴求していきたい」(荒田氏)という。
□三洋電機のホームページ
(2008年6月18日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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