|
PLAYSTATION 3(PS3)の最新システムソフトウェア バージョン2.40が、7月2日の午後から提供開始された。バージョン2.40では、Blu-ray Disc関連のビデオ機能やシステムの機能が大幅に強化。そこでBD関連を中心に機能強化のポイントを検証した。 ■ BDAVアプコンはSD番組の高画質化に効果 ビデオ機能の強化で、まず大きなポイントがBDAVディスクのアップコンバート。
PS3では、Ver.1.80からDVDのアップコンバート機能が追加された。しかし、Blu-ray Discレコーダで録画したデジタル放送番組(1080i)のBDAVディスクについては、これまではアップコンバートできなかった。 つまり、1080iのまま出力されていたが、これが1080pにアップコンバートして出力するようになった。本体の[ディスプレイ設定]で、1080p(ディスプレイが対応していれば)まで選択しておけば、1080pで出力される。 アップコンバートは、「2倍」(2倍に引き伸ばしてアップコンバート)、「ノーマル」(画面サイズに合わせてアップコンバート)、「フル」(画面いっぱいに引き伸ばしてアップコンバート)と「切」が選択でき、BDAV再生中に△ボタンで操作パネルを表示し、映像音声設定-[アップコンバート]から変更できる。 基本的に1080iのハイビジョン番組ではノーマルで問題ないだろう。1080iと1080pの差はさほど大きくない。
このBDAVアップコンバートが最も活きるのは、SD画質のデジタル放送録画を記録したBDAVディスクの再生時。例えばWOWOWの連続ドラマや一部のスポーツなどマルチ編成の放送、NHK BSのニュースなど、SDの放送もかなりある。こうした番組をBDに録画してPS3で再生する際には、画質差は歴然だ。 BSデジタルのニュース番組をアップコンバート「ノーマル」で見ると、一見してハイビジョン放送かと見まごうほどの情報量。「切」にすると、テレビ側でも1080pから480pと表示され、SD放送そのものという画質になる。テレビ側のスケーリング品質にもよる(今回はソニーBRAVIA 46X1000を利用)が、情報量が圧倒的に違う。 スケーリングに起因する“もやっ”とした感じが消え、ベールを1枚剥がしたように色がはっきりと見えてくる。字幕のフチの解像感なども、明確な違いが見て取れる。Blu-rayを使いこなすという点でも、非常に魅力的な機能強化と感じる。
なお、市販のBDビデオタイトルや、BDMVディスクではアップコンバートに対応しない。市販BDについては、元々1080p収録が多く、また、高品位なソースに手を加えずに出力するという判断だろう。 ■ HDDやDLNAから高画質再生も
HDDやリムーバブルメディアに記録した、MPEG-2や、WMV(VC-1)、MPEG-4 AVC/H.264、DivXファイルなどの再生もアップコンバートに対応した。 さらに「フレームノイズリダクション」と「ブロックノイズリダクション」も適用可能となった。なお、DVD/BD再生時に利用できる「モスキートノイズ・リダクション」には対応しない。 とはいえ、これらの高画質化機能により、SD解像度のビデオファイルなどの画質向上が期待される。いずれも3段階の強度設定が可能となっている。 実際にPS3のHDD上の映像で検証してみたが、解像感を損なうことなく、ノイズを大幅に低減できる。 例えば、720×480ドット/2Mbps/WMVの草花の上で羽ばたく蝶の動画(WMV)では、ブロックNRを[切]にすると葉っぱの影側の部分に散見されたブロックノイズが[3]にすると、かなり削減される。完全になくなるわけではないが、ブロックが小さく背景になじむようになり、見やすさが向上する。フレームノイズリダクションにより、映像のざわつきもある程度抑制できる。 特に2~3Mbps程度のMPEG-2ファイルなどで、高い効果を発揮した。NRの強さによってはディティールが欠けるように感じることもあるが、VGA程度の解像度のものであれば、これらにあわせて調整したい。逆にビットレートや解像度を見て、自動的にNRを制御するモードなどもほしいところだ。 SCEによれば、HDDのアップコンバートはDVD用のものと共通の処理を行なっているという。つまり、単純なアップスケーリングだけでなく、Cellの演算能力を生かしたさまざまな高画質処理が加えられているようだ。ただし、BD/DVD再生時のようなアップコンバートモード(ノーマル/フル/2倍/切)の選択はできない。 また、PS3のDLNAクライアント機能を使ったネットワーク再生でも同様に、アップコンバートに対応し、フレーム/ブロックノイズリダクションが利用可能となった。 ■ 充実のVer.2.40。今後のアップデートの方向性は?
ビデオ関連では、DVDビデオのDTS再生時に、DTS-ESやDTS 96/24に対応するほか、Blu-ray DiscのDTS-ES Matrixの再生が可能となるなど地道な改善を図っている。 「ミュージック」機能においても、音楽再生中のミニ操作パネル表示に対応した。ビジュアライザー表示まで戻らなくも、XMB上で楽曲の確認/操作などが行なえるという点で、ジュークボックス的にPS3を活用しているユーザーには、便利な機能といえるだろう。 さらに、再生ファイルにMP3 Surroundが追加された。現時点でどれだけの利用者がいるのかはわからないが、対応フォーマットが増えることは歓迎したい。 ゲーム中のXMB呼び出しや、XMBからのWeb検索など、マルチタスク動作も強化。XMBからPS3の電源OFFが選択できるようになった。なお、海外では注目されているらしいのがトロフィー機能。対応したゲームにおいて、そのゲームで決められた目標を達成することでトロフィーを獲得できるというものだが、7月2日現在、対応ゲームはリリースされていない。
PS3は、2006年11月11日のVer.1.00から進化を重ねるとともに、“アップデートする楽しさ”を提供してきた。Ver.2.40では、特にBlu-ray Discのプレーヤー機能については、BD専用機と比較しても、不足点を見つけられないほどのものとなった。むしろ、BD-Live対応など、現状「PS3だけ」の機能もあるほどだ。 AVプレーヤーとしての進化が続くPS3。ユーザーの声に応えるという点で、残された大きな要望は、DTCP-IP対応による、デジタル放送録画番組のストリーミング再生機能ぐらいだろうか。 とはいえ、PS3の進化には新たな方向性が示されている。ソニーグループの新経営方針で明らかにされたように、今後、「ノンゲーム」、「ネットワーク」を強化し、年内のビデオ配信サービス開始などが予定されている。こうした新しい環境下で、PS3がどう進化し、成熟していくのか、期待したい。 □SCEのホームページ ( 2008年7月2日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|