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【新製品レビュー】
無線LANとX-Fiで提案する新しいプレーヤーの姿
 クリエイティブメディア 「ZEN X-Fi」


7月中旬発売

標準価格:オープンプライス

直販価格:17,800円(8GB)
     :22,800円(16GB)
     :32,800円(32GB)


 普及が進んだこともあり、新しい動きがあまり感じられなったポータブルオーディオプレーヤー。一方で、携帯電話がキャリア主導で音楽再生機能を強化したり、さらにはiPodをそのまま内包したiPhoneのような製品が出てくるなど、単体プレーヤーからネットワーク化に向けた新しい方向性が見えつつある。

 ある意味、通信機能の搭載が高付加価値型プレーヤーのトレンドといえる。電話機能はなくても、iPod touchやgigabeat Tのように、無線LAN搭載による、PCやネットサービスとの連携に各社歩みを進めている。

 そうした中、クリエイティブも主力プレーヤー「ZEN」をモデルチェンジ。無線LAN内蔵の16/32GBモデル「ZEN X-Fi」を発売した(8GBモデルは無線LAN無し)。無線LANの搭載により、PCの動画/音声ファイルのストリーミング再生だけでなく、チャットやPodcastのストリーム再生などに対応。また、9つのボタンを備えた新インターフェイスの採用など大きな変更を加えてきた。

 さらにサウンドカードの「SoundBlaster」で培った高音質技術「X-Fi」も搭載するなど、プレーヤーとしての基本性能強化にも取り組んでいる。今回は16GBモデルを試用し、無線LAN搭載の魅力やX-Fiの実力を探ってみた。


■ クレジットカードサイズのZENシリーズが一新

パッケージ

 外形寸法は約83×55×12.8mm(横×縦×厚み)、重量は約68.75g。「クレジットカードサイズ」という薄く軽いデザインは、既存の「ZEN(約83×55×11.3mm/65g)」を踏襲している。

 ディスプレイは1,670万色表示が可能な2.5型/320×240ドットTFT液晶で、その右側にボタンを集約。上部に、メニュー/戻るボタンとオプションボタン、下部にショートカット、再生/停止ボタンというレイアウトはZENと変わらないが、操作ボタンのレイアウトは大幅に変更。中央部は9つのボタンからなる「音量/方向パット」に切り替えられている。第一印象として、「ボタンが多すぎて、操作が難しそうだな」と思ってしまった。

 本体上部には、SDメモリーカードスロットを装備。SDカードを追加して、メモリ拡張が可能となっている。本体下部にはモノラルスピーカーを内蔵する。背面にはHOLD/電源スイッチを備えている。

2.5型/320×240ドットTFT液晶を装備 特徴的な操作ボタン部 上部にSDカードスロットを装備する
右側面にUSBとヘッドフォン出力 下部にモノラルスピーカー 背面に電源/HOLDスイッチを装備
iPod touchとの比較


■ 悪くは無い操作系。ボタンは多すぎる気が……

Windows Media Playerから楽曲やビデオデータを転送

 特徴といえるのが無線LAN機能だが、まずはUSB接続して楽曲やビデオ転送し、ベーシックなプレーヤーとしての使い勝手を試してみた。転送は付属ソフトのCreative CentraleもしくはWindows Media Player 11を利用。ドラッグ&ドロップでも転送できる。WMP11を利用し、121MBのMP3ファイルを転送した際の転送時間は43秒。

 トップメニューは、フォト/ミュージック/X-Fi/ビデオ/オンライン/FMラジオ/マイク/エクストラなどの各機能の選択画面となっており、ここを9つのボタンのうち中央の列の3つのボタンのうち、上/下で選択、中央で決定操作を行なう。


トップメニュー

 もっとも検索作業が頻繁になるのは「ミュージック」だろう。ミュージックを選ぶと、再生リスト/プレイリスト/アルバム/アーティスト/ジャンルの各検索メニューが表示され、任意の検索方法を選択できる。

 アーティストで検索した場合、検索画面ではA-Zのアルファベット順でソートされる。ここで、中央列上/下のボタンで上下に移動して、任意のアーティストを選択し、中央ボタンで決定となる。検索画面で中央行の右ボタンを押すと、アーティスト名の右側に表示されるアルファベット行にカーソルが移動。これがショートカットとなっており、Aの場所から5回押すとFのアーティストの項目を呼びだせる。

ミュージックの検索画面 アルバム検索画面 検索中に中央列右のボタンを押すと、右側のアルファベットの項目に黄色い操作カーソルが表示され、ショートカットとして利用できる

 階層を戻るときは、9つのボタンのさらに上にある「戻る」ボタンを利用する。基本的な検索機能は従来のZENシリーズと同じだが、メニューの構成もうまくできており使いやすい。

再生画面

 だが、ZEN X-Fiでは4方向+中央のキーだけではなく、9つものボタンがついている。この4+中央以外のボタンを何に使うかというと、左列の上/下(携帯電話の数字キー風にいうと1と7)では、ライブラリの先頭と最後へのスキップ。そして右の上/下(同3と9)は、ページ送り/戻しで7行表示されている次の画面に遷移するというわけだ。

 ボタンが多すぎるという当初の印象どおり、5方向に絞ってくれたほうがわかりやすいと思えた。しかし、少し使って慣れてくると、こうしたショートカットも活用できるようになる。実際の利用シーンを考えて作って設計されていることがよくわかる。とはいえ、最初から使いこなせる人はあまりいないだろう。

 また、間違えて決定のつもりで周囲のキーを押してしまうこともある。ボタンのサイズを変えたり、クリック感を変えるなど、基本の5方向(4方向+中央)と周囲の4ボタンの違いを出したほうが良いように感じた。

 楽曲再生時には、中央列の上/下でボリュームの変更。左右で曲スキップ/バック、左右長押しで早送り/戻しとなる。この画面では左右行の上下ボタンは使わない。

SDメモリーカードスロットを装備

 基本的なナビゲーションの作りこみはこなれており、ビデオから音楽への遷移なども違和感が無い。シンプルなナビゲーションに対して、かなり挑戦的なボタン構成という印象だ。

 また、上部のスロットにSDメモリーカードを挿入し、メモリ拡張も可能だ。ただし、本体メモリと、SDメモリーカード上のメモリを一括して管理できず、SDカードにアクセスする際は、「エクストラ」からカード内に移動して、楽曲や写真などを探すこととなる。

 内蔵メモリの拡張と考えるのであれば、内蔵メモリとカードを一括管理できるようにしてほしいところだ。なお、SDカード上のMP3/WMAやJPEGファイルなどをメモリにコピーすることも可能となっている。


「エクストラ」からSDメモリーカードのデータにアクセス SDカードから本体メモリにコピー


■ 力強い中低域が特徴。X-Fiの効果も

付属イヤフォン「EP-830」

 いろいろな機能があるZEN X-Fiだが、基本はオーディオプレーヤー。その中でも大きな特徴といえるのが音質改善技術「X-Fi」の搭載。付属のイヤフォンも単品販売モデルの「EP-830」。実売4,980円と、付属品としてはかなりしっかりしたイヤフォンが同梱されており、音質へのこだわりを感じさせる。

 まずは、X-FiをOFFにして聞いてみたが、厚く力強い中域が特徴的だ。低域が重く、どっしりとしているが、高域まで情報量はしっかりと出る。付属イヤフォンの特性も中低域が強めとなっているが、イヤフォンを「MDR-EX90SL」に変えてもその印象はしっかり残っている。これが、ZEN X-Fiが目指した音の方向性なのだろう。

 X-Fiは、高周波と低周波の各帯域を適切に強化して、圧縮した際に失われるディティールを復元するという「X-Fi Crystalizer」と、広がりある音場再生を実現する「X-Fi Expand」の2つの機能が用意されている。

X-Fi CrystalizerとX-Fi Expandを選択できる

 Expandは音場効果的なもののようで、広がりは出てくるが、音楽を聞く分にはOFFで良さそうだ。一方のCrystalizerは、大きな変化があるわけではないが、確かに高域のつややかさ、滑らかさの違いが感じられる。オン/最大の2段階で効果が設定可能なので、好みにあわせて使い分けたい。基本的にはオンで問題ないだろう。

 ビデオ再生機能はシンプルで、QVGA解像度までのWMVやXviDファイルなどが再生できる。液晶ディスプレイの表示性能も高い、また、フォトビューワや、ボイスレコーダ、FMチューナなども備えている。

 便利なのが、モノラルスピーカーを内蔵したこと。アラーム設定して目覚ましとしても利用できるなど、使用シーンの幅が広がりそうだ。ただし、音楽再生中にイヤフォンが抜けると、自動的にスピーカーの音が鳴り出してしまう。メニュー設定で、「スピーカーオフ」にしていても、とにかくイヤフォンが抜けると自動的に「スピーカーオン」に切り替わり、音が鳴るという仕様なので結構悩ましい。スピーカー内蔵のiPhoneを含めiPodシリーズではイヤフォンが抜けると再生停止という仕様。そのため、特にiPodユーザーは戸惑ってしまうかもしれない。


■ 特徴的な無線LAN機能

Creative Centrale

 ZEN X-Fiの最大の特徴とも言える無線LAN機能を試してみる。無線LANの自動ON/OFFは設定メニューで選択できる。無線LANの利用のため、自宅など一般的な環境では当然WEPやWPAなどのセキュリティキーを入力する必要がある。

 これをZENの9つのキーで入力する必要があるのだが、携帯電話式の入力方法で20文字を越えるようなキーを入れるのは結構大変だ。


利用可能なネットワークを検索 セキュリティキーの入力画面。9つのキーが画面右下のGUIの文字に割り当てられる Creative CentraleのMedia Server機能を有効にする

オンライン機能からメディアサーバー(USUDA)にアクセス。MediaboxはCreativeのサーバー

 PC用のコンテンツ管理ソフトとして「Creative Centrale」が付属し、写真や音楽、ビデオなどPCのライブラリとの同期できるほか、PC上のファイルのストリーミング再生が可能。ストリーム再生可能なビデオ形式はWMV(最高320×240ドット/850kbps)、MPEG-4 SP/XviD(同320×240ドット/1Mbps)など。音楽形式はMP3、WMA、AAC(m4a)。なお、利用前にCreative Centraleの設定で、「Creative Centrale Media Serverを有効にする」をONにしておく必要がある。

 ZEN X-Fiからサーバーへのアクセスは、メニューの「オンライン」→「メディアサーバー」から任意のWi-Fiアクセスポイントと、サーバーを選択する。

 サーバーを選択した後は、MUSIC/VIDEO/PHOTOの各メディアを再生できる。音楽再生では、一度サーバーにアクセスしてしてしまえば、ネット接続かZEN内のコンテンツかを意識することはほとんど無い。音質についても大きな劣化は感じられない。ただし、時折バッファリング中との表示が出るほか、早送り/戻しはできない点で、ネット経由の再生を意識させられる。

 ビデオは、解像度が高いファイルは再生できないのが残念。ただ、早送り/戻し以外の動作については不満を感じることは無い。QVGAクラスのWMVやMPEG-4ファイルをPCに貯めている人にとってはなかなか便利な機能だ。


音楽を選択して再生 ネットワーク経由でPC内のビデオを再生

 また、サーバー検索画面では、Creative CentraleをインストールしたPCの情報のほか、Creative Mediaboxという項目も用意される。ここを介して、ZEN X-Fi同士や主要なメッセンジャーソフトとチャットできるほか、Podcastコンテンツなどにアクセスするための専用サーバーとなっている。PodcastはComedyやBusinessなどジャンルごとに様々なコンテンツが用意されており、これらをストリームで再生できる。ダウンロードには対応しない。

 また、チャット用のマイフレンド機能やアバター設定機能も備えている。これらでZEN X-Fiユーザーとコミュニケーションできるが、日本語入力はできない。「無線LANでチャット」のため、ボタン数の多いインターフェイスになったのかもしれないが、日本で使う分にはあまり意味がある機能とは思えない。


Podcastを選択して再生 アバター設定やチャットに対応する


■ ちょっとマニアックなマルチメディアプレーヤー

 無線LANを利用したストリーミング再生など、目新しい機能もあり、マニアックに楽しめるユニークなプレーヤーだ。ただ、音楽やビデオ再生などは従来モデルを踏襲しているものの、操作系に慣れるまではちょっと戸惑う部分が多い。使いこなしに慣れと経験が求めらるようにも思う。基本性能が高いプレーヤーなだけに、従来のZENのままのほうがよかった部分があるようにも感じた。

 誰にでもお勧めというよりは、前モデルよりちょっとマニアックな香りが強くなったような印象。使いこなしも含めて楽しみたいという人にとっては、魅力的なデジタルガジェットになったといえそうだ。

□クリエイティブメディアのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12961
□製品情報
http://jp.creative.com/camp/zenxfi/
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【2007年12月4日】クリエイティブ、カード型プレーヤー「ZEN」の32GB
-直販限定で39,800円。AAC再生対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071204/creative.htm
【2007年8月29日】クリエイティブ、カード型動画/音楽プレーヤー「ZEN」
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(2008年8月22日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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