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公開から31日間で、全米での興行収入が4億7,149万ドル(約518億円)を上回り、'77年公開の「スター・ウォーズ」を越て全米歴代興行収入2位となった「ダークナイト」(ちなみに歴代一位はタイタニック)。日本でも人気となった本作のBlu-ray/DVDビデオ版が12月10日にワーナー・ホーム・ビデオからリリースされる。 注目作のパッケージソフト化という以外に、「ダークナイト」のBD/DVDにはもう1つの注目ポイントがある。それは、オマケでポータブルプレーヤーやPCで再生可能な、本編の映像ファイルが付属するということ。正確にはそのファイルをダウンロードするための専用サイトのアドレスと、ダウンロード用のシリアルナンバーが書かれたチケットが同梱されている。 既報の通り、米国ではワーナー以外にも20世紀FOXやSPEなどが既にサービスを開始しているが、国内での展開は初めてとなる。従来のメイキングなどを収めた特典ディスクなどと異なり、映画本編の楽しみ方を広げる可能性を秘めた特典となるのか? 発売日前日の9日に家電量販店でBDビデオ版を購入できたので、さっそく試した。
■ 「ダークナイト」ではBD/DVD全バージョンに付属 10日発売の「ダークナイト」は、BD/DVD/UMDビデオの3フォーマットでリリースされ、DVDとBDにはそれぞれ、劇中に登場するバットポッドのフィギュアを同梱するバージョンも用意。合計で5種類がリリースされる。BD/DVD版のパッケージは、通常版、フィギュア同梱の「BATPODプレミアムBOX」のどちらも、暗いカラーリングでデザインが良く似ているため、購入前に良くチェックしよう。 本編ファイルのダウンロードチケットが付属するのはUMDビデオ版を除いた、4種類。つまりDVD/BD版には、どれを買っても封入されている。ケースの帯に黄色いラインで「BONUS DIGITAL COPY」と書かれているので目印にしよう。ただし、チケットが封入されるのは2009年2月10日までの出荷分に限られる。
BD/DVD版ともに、フィギュア同梱版と通常版の違いはフィギュアの有無のみ。DVD/BD版とも特典ディスクが付属しているので、純粋に“フィギュアが欲しいか否か”で決められる。フィギュアのフォルムは独創的で美しいが、作りは若干チープに感じた。なお、台座の背景部分にはディスクが収納できる。 また、2009年2月10日までの出荷分に関しては、アウターケースが付属。アウターケースの背面デザインは普通のものだが、内部ケースの背面が“ジョーカー落書きジャケット”仕様になる。
ダウンロードサイトは9日の午後にオープンしていた。「http://www.wbdigitalcopy.com/thedarkknight-jp/」というアドレスを見るかぎり、今後もこうした特典ファイルが配布される場合、作品毎に専用ページが用意されそうだ。ページにはBD版購入者、DVD版購入者向けにそれぞれダウンロードボタンを用意。ヘルプボタンも用意されているが、飛ばされた先は英語ページ。10日の発売日には日本語解説ページも用意されるだろう。
BD版購入者向けのダウンロードボタンを押すと「DigitalCopyBD.exe」という494KBのダウンロード用アプリケーションが落とせる。これを起動すると、専用ウインドウが出現。同梱チケットに書かれていたシリアルナンバーを入力すると、いよいよ本編ファイルのダウンロードが開始される。注意書きによると、ダウンロードできるのは吹き替え版のみ。ダウンロードサービス自体はWindows XP/Vistaのみ対応で、Mac OSはサポートされていない。 ダウンロードがスタートすると、アプリウインドウの中で突然映像が表示される。ワーナーのロゴマークが現れたので「もう本編が落ちて再生が始まったのか?」と驚いたが、実は1分程度のトレーラー映像。「マトリックス」や「スーパーマン」など、同スタジオの代表作が紹介される。全画面表示やシークバー移動機能も用意。ダウンロード中、ユーザーを飽きさせない嬉しい配慮だ。しかし、音声は英語で字幕は無し。さらに1分程度と短い。ダウンロードには相応の時間がかかるのでもう少しボリュームが欲しいところだ。
ダウンロードの進捗状況は、ウインドウ右側にあるボタンから確認できる。見ると「The Dark Knight - PC」というファイルと「The Dark Knight - Portable」という2つのファイルがダウンロードリストに登録されている。どうやらPC再生用のものと、Portable用の2つのファイルが落とせるようだ。ポータブル用に変換などが不要と考えると嬉しい対応だろう。
■ 「ダークナイト」ではiPodやPSPに非対応
ダウンロードはポータブル用から開始され、サイズは約671MB。PC用は約1.62GB。合計で2GBを超えるため、回線によってはかなり時間がかかるだろう。ダウンロード途中で一時停止することも可能だ。説明文には「ダウンロードは1回のみ可能」と書かれており、完了後に再度ダウンロードソフトでログインしてみると回数制限に達したという「max token use exceeded」エラーが表示される。 2回目のダウンロードはできないと思われたが、エラーの下に表示される「Digital Copy Manager上で作業を進める場合はここをクリックしてください」をクリックすると、再度ダウンロードがスタート。そのままファイルを落とすことができた。あくまで12月9日時点の挙動であり、今後もこのままかどうかはわからないが、最初のダウンロードを行なったPCを使えば、ダウンロードに失敗した場合でも再度落とすことは可能なようだ。ただし、後述するが再生できるのはダウンロードしたPCのみである。
ファイル形式はWMV。解像度などは下表の通り。再生の回数/期限などの制限は無いが、CD書き込みや使用権限のバックアップなどは許可されていない。プロパティを見ると、ポータブルプレーヤーへの同期(転送)は1回のみ可能のようだ。
ポータブル用動画の転送先として、東芝の「gigabeat S」を用意した。転送可能な機種は、マイクロソフトの「PlaysForSure」認定を受けたもののみで、残念ながらiPodには非対応。ダウンロードソフトの概要説明の中で「MacやiPodには対応していない」と明記されてしまっている。米国では20世紀FOXが「iTunes Digital Copy」を採用し、iTunesで本編動画をダウンロードし、iPodに転送。SPEの映画ソフトでは転送用ソフトを使ってPSPに本編を転送することも可能になっているので、日本での「PlaysForSure」の浸透具合を考えるを残念な対応状況だ。 なお、WMVファイルにはDRMがかけられているので当然だが、試しに「携帯動画変換君」や「TMPGEnc MovieStyle」などの動画変換ソフトにファイルを投入しても、エラーが出て再変換は行なえなかった。なお、「gigabeat S」にコピーしたポータブル用動画は、その後もPCのローカルHDDから再生することは可能だった。 ファイルを他のPCにコピーし、再生すると、シリアルナンバーを入力せよというアラートが現れる。先ほどダウンロードに使ったシリアルナンバーを入れてみると「このシリアルナンバーは使用済みです」と表示され、再生できなかった。再生可能なプレーヤーはWindows Media Player 10以上で、GOMプレーヤーなどは利用できない。 そもそも、Windows Media Playerのバージョンが10以上でないと、アラートが出てダウンロード用ソフトすら起動できない。おそらく、ダウンロードに使用したPC、もしくはそのPCにインストールされたWindows Media Playerと、ダウンロード済ファイルが紐付けされているようだ。
■ 気軽に楽しむには十分な画質/音質
ポータブル用ファイルの解像度は320×176ドットと低いが、gigabeat Sの2.4型液晶も320×240ドットと高くはないので違和感は無い。建物の壁などの単色部分に、フィルムグレインに誘発された圧縮ノイズが確認できるが、それ以外の画質は概ね良好。輪郭部分のブロックノイズが気になるシーンもほとんどない。階調表現に乏しく、人の顔の頬から首にかけての起伏も乏しいが、ファイルサイズを考えると仕方のないところだろう。ステレオ音声は良好で、高音のカサつきもほとんど無く、ヘッドフォンを接続すれば、低域に迫力がある映画らしいサウンドが楽しめる。 PC用ファイルは720×400ドットの解像度があるため、ポータブル用からは飛躍的に情報量が増加する。ビルの窓の形状もあやふやにならず、登場人物の毛髪も解像される。しかし、壁や窓など単色部分のグラデーションが階段状になったり、ジラジラとした色ノイズが見受けられる。画面がパンするアクションシーンでは机や車などの形状が荒くなり、境界線には疑似輪郭も発生する。暗部もつぶれぎみだ。Blu-rayの画質に慣れると正直ツライものがあるが、内容を確認したり、PC画面の隅に表示して“ながら視聴”する場合には十分とも言えるだろう。
■ iPodやPSPとの連携を
従来のDVD/BDの特典は、映画鑑賞後にメイキングやインタビューなどを“作品をより深く理解するためのもの”として存在していた。そのため、初回観賞後に再生するが、それ以降はあまり頻繁に観る事は少ない。 動画ファイルの提供は、外出先で本編を楽しんだり、テレビの無いPCルームで再生できるようになり、“映画本編をより身近に楽しめるようにするもの”と言えそうだ。PC再生用ファイルが必要か? という意見もあるが、PC用BDドライブが高価な現状を考えると、DVD版を追加購入しなくても気軽にPCで再生できるソースがあるのは便利だろう。 残念なのは、ポータブルプレーヤーのスタンダードとなったiPodや、PSPに動画を転送できないこと。米国の状況を見るに、これは“BONUS DIGITAL COPY”全体の問題ではなく、「ダークナイト」(もしくはワーナー・ホーム・ビデオ)に限ったことと考えられるが、iPodやPSP用など、複数形式のファイルがダウンロードできるようになるのが理想的だろう。
PlaysForSure認定を受けたプレーヤーは米Microsoftのページで紹介されているが、日本では馴染みが薄いのが現状。そのためPC用ファイルを再生する場面が多くなりそうだが、前述のように再生できるのはダウンロードに使用したPC“のみ”という制限があるため、ダウンロード前に“どのPCで活用するか?”を考えておくとよいだろう。
□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ
(2008年12月9日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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