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社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は7日、東京芝公園の東京プリンスホテルにて、平成21年新年賀詞交歓会を開催した。会員会社である電機メーカーの首脳が一堂に介する新年恒例のイベントとして、今年も多くの関係者が出席した。
挨拶に立った同協会・庄山悦彦会長(日立製作所会長)は、「昨年は、全世界に大きな衝撃が走った1年であった。9月以降、金融危機が全世界の実態経済に影響を及ぼし、米国をはじめとする先進国の景気は大きく後退。中国などの新興国の景気にも急ブレーキがかかった。また、日本の経済も金融危機が与えた波が影響した。株価の低迷、円高の進行もあり、今後の展望が描けない、100年に一度といわれる危機となっている」と説明。 「猛烈な逆風のなか、モノづくりの企業であるJEITA会員会社は、目の前の状況に動じることなく、長期的な視野を持って、課題に立ち向かっていくべきだ。我々が真のよりどころとするのは、技術革新と人材育成を柱とした国際競争力強化であると考えている。日本は優れた技術をもとに、優れた製品を作ることで成長してきた国である。IT、エレクトロニクス産業も、日本の強みであるモノづくりの大切さを各社が堅持し、日々研鑽努力することで、この難局を乗り越えていくことができるのではないか」と述べた。 さらに庄山会長は、「今年の技術革新の最大のテーマは、地球温暖化対策、省エネ技術の開発である。永年の技術の蓄積にさらに磨きをかけて、グリーンITのコンセプトに基づく、製品、ソリューションを提供していくことが、国際的な産業競争力の要になり、世界の地球温暖化防止にも貢献できると考えている。グリーンIT推進協議会の活動により、技術開発とともに、国際的なイニシアティブを発揮して、低炭素社会の実現に向けて、普及、啓蒙、国際協調を実現していきたい」と語った。 「一方で、次代を担う人材の育成も重要である。若年層の理科系離れや、大学での理工系の人気低下が顕著である。JEITAとしても、これに歯止めをかけ、日本の未来を創造するために、グローバルに活躍できる人材の育成に、具体的に取り組んでいく」とも語った。 庄山会長は「金融危機は、世界経済の連動性や相互依存の強さを改めて感じたはずだ。これまでの日米欧の先進国が強力にリードする世界から、新興国や途上国を含む多極化が進む時代に進化していく。JEITAの活動も世界の多くの国と協調していくことが増えていくことになるだろう。苦しい経済情勢が続くなか、モノづくりの大切さを認識しなから、革新的なIT・エレクトニクス技術、優れた製品、新たなサービスを提供すること、それらによる変革、環境に貢献していくことで、この難局を乗り切っていくという思いである」とした。 また、「2011年7月の地上デジタル放送への完全移行が間近に迫った普及、促進活動については、知的財産権保護にも配慮しながら、機器の充実を図るとともに、関係方面との連携、協力を密にしながら、広く機器が行き渡るための最大限の努力を行ないたい」とも述べた。
来賓としては、経済産業省の吉川貴盛副大臣が登壇。「生産、輸出の状況、雇用も問題などを見ても、日本も厳しい経済環境にある。我が国の経済を支える電機・電子産業においても、厳しい経営判断や、対応を迫られているものと認識している。政府としては、国民が安心して生活し、企業が目前の課題に立ち向かうことができるよう、支援していく」と説明。 また「すでに安心実現のための緊急総合対策、生活対策、生活防衛のための緊急対策を取りまとめ、雇用や金融の安定、資金繰りなどに対して、総額75兆円の対策を打ち出したところだ。これらを着実に実施していく。とくに、昨年取りまとめた新たな雇用対策の実施に全力を尽くしていく。雇用の受け皿であるJEITA会員企業にも協力を求めたい」と述べた。 吉川副大臣は、「一方、我が国の強みを生かし、将来の成長に向けた取り組みのために、新経済成長戦略2008をとりまとめた。このなかで、グリーンITを中核施策のひとつに位置づけている。日本は、世界最高レベルの低炭素社会を実現しているが、絞りきった雑巾をさらに絞ってみせる強みを生かし、グリーンITの推進に、産業界とともに挑戦していきたい。厳しい状況であるが、我が国経済の土台を支える電機・電子産業が奮起し、明日の日本を作っていくことに期待している」とも語った。
一方、乾杯の音頭をとった同協会・大坪文雄副会長(パナソニック社長)は、「大変な経営環境、経済環境下での2009年のスタートとなった。しかし、日本の電機・電子産業のポテンシャル、底力は、世界的に見ても高い位置にあると見ている。大変な環境だが、正々堂々と胸を張って、この難局に立ち向かい、日本経済、世界経済回復のエンジン役を担う気概を持った一年にしたいと考えている」とした。 その後の懇親会では、各社首脳からも厳しい経済環境に対する意見や、これが長期化することに対する懸念の声が聞かれたものの、その一方で、危機をチャンスと捉え、国際戦略の推進や、モノづくりへの原点回帰を推進する姿勢を見せる企業トップの声も聞かれた。
□JEITAのホームページ ( 2009年1月7日 ) [Reported by 大河原克行]
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