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パナソニック株式会社は9日、大阪・枚方市の人材開発カンパニーにおいて、2009年度の経営方針を発表した。 大坪文雄社長は、「厳しい経営環境の下、すでに過去の構造改革効果は消失し、次の発展、成長に向けた体質強化と仕込みが求められている。2009年度を最終年度とする中期経営計画GP3で掲げた売上高10兆円、ROE10%、CO2を30万トン削減するという、すべての数値目標を達成するのは厳しくなってきた。だが、GP3計画で目指す姿勢や方向性は変えない。最後まで目標に向けて前進する。それにより、市況回復時には、他社を圧倒して大きく飛躍したい」と、中期経営計画の最終年度にかける意気込みを語った。
薄型テレビ事業に関しては、今年5月に稼働を予定している大阪・尼崎のPDP国内第5工場および、2010年1月に稼働予定のIPSアルファ姫路工場の設備投資計画を見直すことを明らかにした。尼崎プラズマ第5工場は、2012年までに合計で2,800億円を投資する予定であったものを2,100億円に縮小。IPSアルファ姫路工場は3,000億円から2,350億円に縮小する。 大坪社長は、「薄型テレビの市場は台数ベースで、2008年が119%、2009年に121%の成長率となっており、需要拡大のペースが鈍化してきた。今回の設備投資計画の見直しは、市場の減速に対応しつつ、業界以上の成長を目指すもの。2009年度以降も、市場の実需にあわせた投資を行なうために、マーケットの状況を見て、単年度ベースに近い形で判断できるようにした。PDP国内第5工場では、3期にわけて投資を考えていたが、これを4期に分けるようにした。また、IPSアフルァの姫路工場では、2期で考えていたものを3期で考えるようにした。第1期の生産能力は、PDP国内第5工場がフル稼働時の3分の1、IPSアルファ姫路工場は半分の規模を想定している。また、第1期の量産の時期を遅らせることも考えている」などとした。 また、生産台数の縮小については、具体的な数字には触れなかったが、「薄型テレビ市場は、2012年で、年間2億台規模に達すると見ており、その市場において、パナソニックは20%のシェアを獲得することを目指している。プラズマテレビと液晶テレビをあわせて、約4,000万台を想定している。それぞれ各2,000万台を能力を予定している。これまでの発表はPDPの場合で42インチ換算、液晶の場合で32インチ換算で発表しており、モデルミックスやインチサイズによって実際のアウトプットが異なる。投資の縮小が1対1で、生産台数の減少につながるわけではないが、それにほぼ近い形で生産台数を縮小することになる」と語った。 一方、2009年度の薄型テレビの販売台数計画を、前年比150%となる1,550万台を目指すことを掲げる。「NeoPDP、IPSαパネルによって、省エネ、動画性能を追求した基本性能の向上。基本モデルを4モデルから8モデルに拡大し、ラインアップを増強するほか、機種数を1.5倍に大幅に増加。販売間口の拡大として、欧米ではハイパー系、クラブ系などの伸びる流通を攻めていく。さらに、新興市場の増販を目指す」とした。
大坪社長は、経営方針説明の冒頭、2008年度における重点テーマの進捗状況について説明した。「重点テーマとして掲げた海外増販、および4つの戦略事業(ABCDカルテット、A=アプライアンスソリューション、B=ブラックボックスデバイス、C=カーエレクトロニクス、D=デジタルAVネットワークス)は、数値目標に対しては未達だが、個々の施策については着実に進捗している。これらの施策は、グローバルエクセレンスに向けて重要な取り組みであり、2009年度も引き続き継続する」とした。
■ 2009年度の取り組みについて
2009年度の取り組みとしては、伸ばす事業と撤退する事業を明確化することを示し、「事業・商品カテゴリーでは、2006年度以降連続赤字となっているものに関しては撤退を前提に整理し、海外拠点に関しても、2006年度に導入した撤退基準に該当した拠点は原則撤退し、経営資源を伸ばす事業にシフトする」ことを明らかにした。
海外拠点では、撤退基準に該当および該当する可能性がある拠点が20社前後に達するという。だが、撤退する事業・商品カテゴリーについては、「いまの段階ではどれということは話せない」と明言を避けた。
そのほか、経営体質の強化策としては、ガバナンス強化に向けた本社の改革に乗り出す姿勢を見せ、「シンプル&わかりやすい」、「将来に向けた戦略的投資」、「スリム&継続的な生産性向上」を目指し、4月には本社組織を経営戦略機能、渉外機能、ブランド戦略機能、R&D機能、グループ運営支援機能に再編することを明らかにした。 さらに、板や粉などの原材料まで遡って原価削減を行う「イタコナ」活動をより浸透、定着させることで、コスト削減活動を全社規模で推進する。設備投資に関しても、投資回収の視点から精査を行い、目標成果をより少ないコストで実現できるように見直しを図る。
一方で、成長戦略については、BRICs+V(ベトナム)の新興国市場の攻略を掲げ、「これらの市場で前年比2桁成長を死守する」と宣言。ラインアップの拡大、地域密着型商品による強い商品の連打、販売網構築やブランドマーケティングによる販売力の強化によって、富裕層、ネクストリッチ層への深耕を図るという。 さらに、「生活快適実現事業においては、エコライフ、照明、セキュリティ、ヘルスケアの4つの領域で、事業戦略委員会を設置して、ドメイン同士が連携した新たな商品の創出に取り組んでおり、これにより、グローバル展開の加速、融合商品の連打を実現する」と意欲を見せた。
白物家電事業に関しては、今年3月から欧州市場向けに、冷蔵庫、洗濯機を新たに投入。2009年度は17か国で展開するとともに、順次他の国にも展開を広げていくという。「これまで欧州にはないブランドのメーカーが、環境、省エネ、節水性、デザインという特徴を持ちながら進出する。2月には欧州でディーラーズコンベンションの開催を予定しており、商談やセールストレーニングも始まっている。すでに手応えを感じている」などとした。 一方、アジアについては、前年並みの事業規模が見込める数少ない市場と位置づけ、商品ラインアップの大幅な拡充、冷蔵庫、洗濯機の増販に向けた域内生産体制の強化などにより、アジア地域でのダントツナンバーワンを実現する。 「欧州白物事業を確実に軌道に乗せること、欧州、アジアで存在感を高めることで、さらなるグローバル展開につなげる」姿勢を見せたほか、「成長の根幹になるのは『商品』。商品で当社の進化を示すことが大切。お客様視点、安全・品質、環境という基本戦略を維持し、パナソニックらしい商品づくりを追求する」と語った。
海外システム・設備事業に関しては、これまでドメインごとに分かれていた体制における課題を克服するために、システム・設備事業推進本部(仮称)を設置。「重点的な地域や業界を絞り込んだ攻略戦略や、ドメイン連携の商材パッケージ開発などを進め、将来の成長エンジンのひとつになるように、グローバルでの事業基盤を強化する」とした。 厳しい環境にあるデバイス事業、カーエレクトロニクス事業については、「基本に返り、やるべきことをやる」と前置きし、「デバイス事業では、顧客との接点を持ち、ブラックボックス技術を仕込み、コスト力を追求するとで、高収益を実現するコア商品の開発、低価格セットの創出、新興市場の攻略に取り組む。厳しい状況下での取り組みが次の勝負を決めることになる。市場回復の兆しが出てきたときに、一気に攻めることができる体制を作る」と語った。 カーエレ事業では、再成長への徹底的な構造改革を継続し、「世界展開車向けの受注、新興市場における市販商品の拡販、環境・安心・安全分野への拡大といった、伸びる分野への集中強化を行なう」とした。
■ 新事業の創出
一方、新事業の創出としては、モノづくりイノベーション本部に設置した新規事業創出部会によって、ドメイン、本社、R&D部門が連携した形で、3~5年後の事業創出に向けた取り組みを行っているが、2009年度には新規事業推進支援制度を新たに開始し、資金、技術、人材の観点から支援する体制を整えるという。 新規事業の事例として、ロボット事業化プロジェクトの取り組みを説明。「作業労働支援、医療支援、生活快適支援の観点から、人をアシストするコンセプトで事業化を進めている。2015年には1,000億円以上の事業拡大を目指す」と、将来構想を明らかにした。 資本・業務提携を発表している三洋電機との協業については、12月24日にコラホレーション委員会を発足したことを明らかにし、「委員会では、幅広いテーマで議論を開始し、枠組みを検討している。創エネや省エネ、蓄エネといった領域でのシナジー効果だけでなく、空調やヘルスケア分野でのシナジーも生み出せる。三洋電機が持つ太陽電池は、当社の販売ルートに乗せるだけで、販売を大きく拡大できる可能性がある。将来の組織再編も視野に入れて、緊密な協業関係を構築し、今後の成長を担い手として事業に厚みを増す」と述べた。 さらに、環境経営の強化では、2009年度には省エネナンバーワン商品を200機種へと増加(2008年度は150機種)。GP3計画に盛り込んだC02の30万トン削減については、「ほぼ順調に推移している。景気後退による生産減もCO2削減に寄与しているが、原単位でも厳しく管理していく」と語った。 省エネ追求の実例としてBDレコーダを挙げ、「他社商品に比べて、27%もの省エネのほか、イタコナ活動の成果や、ユニフィエの活用によるコスト優位性や小型化によって、市場でも高い評価を得ている。こうした事例を重ねていくことが大切」などとした。 説明の最後にはポストGP3計画についても言及。大坪社長は、「グループ総合力を徹底して活かし、グローバル展開を加速する。くらしを輝かせるアイディアの連打によって、家まるごと提案、世界まるごと市場の精神で、創業100周年には世界ナンバーワンの企業として、胸を張れるような成長を遂げていく」と語った。
また、今年の経営スローガンも「打って出る」となった。これは大坪氏が社長に就任して以来、3年連続で同じ言葉だ。「2009年度は大変な難局にあるが、こういう時こそ、大きな成長を遂げるための仕組みの時期、経営の足腰を鍛える好機と捉え、道を切り開く姿勢が必要。グループ全員がこの想いを共有し、結束して挑んでいくことから、経営スローガンは、今年も『打って出る』とした」という。
□パナソニックのホームページ
(2009年1月9日) [Reported by 大河原克行]
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