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株式会社ビデオリサーチは、視聴スタイルが多様化するデジタル放送時代を迎え、それに対応する新しい視聴率調査用技術などを紹介するプライベートショー「Data Vision 2009」を2月5日~6日に関係者向けに開催。その中で、これまで測定できなかったレコーダに録画した番組や、ワンセグなどの視聴率測定も可能にする技術を展示した。
■ タイムシフト視聴も調査できる新技術 現在のテレビ視聴率調査は、自宅内でのリアルタイム視聴をメインに行なわれており、レコーダに一旦録画した番組を再生する、いわゆるタイムシフト視聴は調査対象となっていない。そこで、音声比較方式をコア技術とし、レコーダで再生する番組を特定/調査する技術が開発されている。 「センターマッチング」と呼ばれる方式で、各放送局の受信基地から各チャンネルの音声データを収集。センターサーバーに蓄積。各調査対象世帯宅では、テレビから出力された音声を検出。インターネットなどを通じてセンターサーバーに送り、音声データのマッチングを行なうことで、その世帯で視聴していた放送局、放送日時を判定するというもの。センターサーバーに一定期間分音声を蓄積しておけば、タイムシフト視聴でも測定が可能になる。 しかし、連続した音声であればマッチングは比較的容易だが、再生中に一時停止や早送り、巻き戻し、スキップなどのトリックプレイを行なうと、音声データに重複や抜けが発生し、判定精度が低下する。そこで、断片的な音声であっても、より正確に判定できるような精度の高いタイムシフト測定技術の実現に向け、研究が進められているという。 ほかにも、デジタルテレビの光デジタル音声出力を用いて、MPEG-2 AACの音声信号をアナログに復号することなく、直接デジタルデータから特徴を抽出。同様の方法で特徴を抽出した基準データと比較する識別機能も研究されている。 音声マッチングによる測定はCS専門チャンネルのリアルタイム接触率測定などに既に使われているが、大規模な導入などの予定は現在のところ未定。今後も技術開発を進め、テレビ局や広告主などからの要望に応えられるシステムの開発を進めていくという。
■ デジタルチューナ内蔵PCの測定も可能に 現在の視聴率調査には、既にデジタル放送も調査対象となっており、測定結果に反映されている。一方で、デジタルチューナを内蔵したパソコンが増加している事に合わせ、パソコンでのテレビ視聴率も測定する技術が開発されている。 基本は音声をデータベースとマッチングする前述の「センターマッチング」が利用できるが、パソコンならではの“遅延”問題に対応する必要がある。通常、デジタル放送はアナログ放送に比べ、放送の表示までに若干のタイムラグが生じる。しかし、パソコンテレビでは、内部処理の問題でデジタルテレビと比べても、さらに2秒程度の遅れが出る場合がある。また、テレビを観ながら複数のアプリケーションを立ち上げるなど、重い処理を行なうと、さらに遅延が発生することもあり、音声データベースとのマッチングが上手くいかない事があるという。 そこで音声比較アルゴリズムを大幅に改良した、「アドバンスド・サラウンド・マッチング」を開発。音声蓄積データの増加や音声比較処理の高速化なども行ない、チャンネル判定までの測定時間を伸ばすことなく、遅延が起こったパソコン音声にも対応できるようになったという。 また、持ち運びできるノートパソコンの場合、常に測定機器と有線で接続してテレビを観られるとは限らない。そこで、無線を使った小型音声送受信機を開発。パソコンから出力されたテレビの音声を送信機に入力。14bit ADCで2ch音声データとして暗号化し、2.4GHz帯を使って受信機に送信。受信機は有線接続された測定器にその音声を渡すといった装置も試作されている。
■ 屋外での視聴率調査も可能に
屋外でのワンセグ視聴率を測定する技術も開発が進められている。従来はアンケートなどで対応してきたが、新たに「モバイルWEBダイアリ」と呼ばれる専用アプリが開発された。これは、ワンセグ視聴を終了すると自動で立ち上がるアプリで、何時から何時まで、どの放送局を視聴していたのかをユーザーが入力。ネットワーク経由でその情報をサーバーに送信するというもの。 自己申告制となるが、携帯電話端末内の交信情報もサーバーに別途送信されるため、調査の正確性とリアルタイム性は確保できるという。ただし、運用を実現するためには各キャリアからAPIの開示を受ける必要がある。
ほかにも、前述の音声比較方式による測定をワンセグでも実現するため、小型の測定器を開発/利用する方法や、専用の調査票を郵送などで送付し、対象者が放送を観た時間/局を矢印線で引いて申告するアナログな方法も検討されている。
■ 電子透かし技術も活用 音声マッチング以外に、電子透かしを使った測定技術の開発にも取り組んでいる。これは、放送の映像に電子透かし技術を用いてメタデータを入力し、放送。実際にオンエアを受信して専用デコーダを通して透かし情報を検出するというもの。具体的には各局がCMを確実に放送したかどうかを示す「CM放送実績データ」を作成するためのシステムとして開発されている。 ビデオリサーチではこの電子透かし技術を、視聴率やレコーダからの再生率測定にも利用可能な汎用性の高い技術ととらえている。また、音声透かし機能も追加することで、ワンセグ視聴調査にも活用できる可能性があるという。
ほかにも、IP放送やインターネットでの動画配信の視聴率調査にも乗り出しており、コンテンツが再生されたことを示すビーコンを使った計測「ビーコンタグ方式」を用いた「Video Contents Report(VCR)」を開発。ユーザーの動画コンテンツ接触回数、人数、接触時間などのデータを高い精度で取得できるという。NECビックローブやマイクロソフト、ヤフー、USENが昨年発表した、ネット動画コンテンツ接触状況の統一測定基準に準拠。ブラウザ内蔵のWindows Media Player、Flashビデオ、Silverlightにも対応予定だという。
□ビデオリサーチのホームページ
(2009年2月9日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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