東芝、西田社長が退任。佐々木副社長が昇格

-「経済危機もイマジネーションで克服」


西田社長と次期社長の佐々木副社長
3月18日発表

 株式会社東芝は、現副社長の佐々木則夫氏を、現社長である西田厚聰氏に代わり、新たに社長とする人事を発表した。本日、同社社長氏名委員会で策定後、取締役会にて決定された。6月下旬の定期株主総会終了後に開かれる取締役会で正式に選定される予定で、正式な就任日は確定していない。

次期社長に就任予定の佐々木則夫副社長

 現社長の西田氏は取締役会長に、現取締役会長の岡村正氏は代表権のない相談役に、それぞれ就任する予定。

 新社長となる佐々木氏は1972年に東芝入社以来、一貫して原子力事業を手がけてきた。「東芝に入社してはじめて手がけたのが、原子力発電所の配管設計」(佐々木氏)という経歴ももつ。2003年4月に原子力事業部長となり、2006年10月に締結された米ウェスティングハウス社の原子力事業買収をまとめた人物として知られる。現在は取締役 代表執行役副社長として、電力・水道などの社会インフラ事業グループの他、イノベーション推進本部長および輸出管理グループ担当として、PCやテレビの生産現場も統括している。


■ 新方針は「もうすこし時間を」。半導体不振の引責との見方を否定

 17時より東芝本社にて記者会見を開催。西田現社長は、「昨年12月末に、社長から退くことを決め、3月3日に佐々木氏へ正式に伝えた。2005年の就任時より、4年間をひとつのめどとして考えていた。いまだ構造改革の途中にはあるが、半導体事業を中心に改革プランをまとめ、構造改革の“めど”はたてられたと思う。今後成長軌道にのっていくためには、構造改革とその後の経営とを、同じ人間がやるのがいいと考えた」と、今回の人事の狙いを語る。佐々木氏を選んだ理由については、「これまでの経験の中での、判断力・決断力を重視した」と話す。

 現在同社は半導体事業を中心に、大規模な構造改革の途上にある。「業績の悪化による引責では?」との質問に対しては、「業績の悪化は残念に思っている。すべからく社長である私の責任を大いに感じているが、今回の人事は、その責任とはまったく別のところで判断した。また会長(岡村正氏)が、今年弊社内規で定めた最高年齢に達する。そのため岡村会長が退く場合には、私が社長と会長を兼務することになる。弊社のガバナンスとして兼務することができないことも考えた」と答え、業績悪化との関連を否定した。

 新社長となる佐々木氏は、「このような経営環境が厳しい時期に(社長を)引き継ぐのはプレッシャーを感じ、かなり悩んだが、お引き受けすることにした。グループ社員一丸となって危機を乗り越え、業績の回復を果たしたい」と抱負を語る。

 社長就任後の具体的な経営方針については、「就任依頼が最近のことであるので、もう少し検討のお時間をいただきたい。具体的な方策については、別途機会を設けて解説させていただきたい」と語るにとどまり、事業の統廃合や投資の見直しといった、具体的な施策については言及を避けた。ただし、「責務は3つある」と説明する。

「まず(西田社長の策定した)改革プログラムを引き継ぎ、徹底的に推進すること。2009年中の黒字化を目指したい。事業の選択と集中・環境経営・グローバル化の推進で、安定した収益構造を確立したいと考えている。そして、東芝を時代の変化に即応して進化させていく。これには時間がかかるだろう。新規事業の創出を含め、グローバルメーカーに進化した東芝の姿を見せたい。その核となるのがイノベーション。事業を再定義し、さらに発展させていきたい。進化する東芝と、しっかりと守る東芝を維持し、新たな光をもって光り続けられるよう、従業員一同がんばってきたい」と抱負を語った。

 佐々木新社長が電力を中心としたインフラ事業出身であることから、「今後の半導体事業のゆくえ」についても質問が及んだ。佐々木氏が原子力事業出身者であり、今後の中核事業として原子力事業をより重視し、半導体事業などの比率が低くなるのでは、との観測について、西田現社長は「我が社は『エネルギーとエレクトロニクスの東芝』。彼はエネルギーに精通し、豊富な経験を持っている。そしてもちろん、エネルギーの分野ではエレクトロニクスもたくさん利用している。エネルギーが専門なのでエレクトロニクスはわからない、というようでは理系とはいえない」と語り、否定した。

 佐々木新社長は「半導体事業は社会インフラ事業と異なり、スピードが非常に速く、事業のサイクルも短い。だが、問題はサイクルの差ではなく、それに合わせた形でどうジャッジするか。担当役員と一致団結してマネジメントしたい」と自信をのぞかせた。

 正式な社長交代まではおよそ3カ月の期間がある。西田現社長は「その間に改革プログラムの完遂に務め、財務体質強化に努めたい。こういう時代だからこそ、技術をベースとしたイノベーションを生かし、新風を吹き込んで欲しい」と佐々木新社長にエールを送る。佐々木新社長も「ご期待に応えていきたい。経済危機も、イマジネーションを生かすことで乗り越え、克服し、次への進化になるよう努力したい」と答えた。


(2009年 3月 18日)

[Reported by 西田宗千佳]