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IMAGICA、8K編集スタジオを渋谷に。8K放送に向け「フィルムの経験活きる」

 IMAGICAは、同社初となる8K映像編集に対応した新拠点「渋谷公園通りスタジオ」を東京・渋谷に7月1日にオープンした。2016年に8Kの試験放送、2018年の本放送開始に向け、8K映像の編集に特化したスタジオとなっている。

IMAGICA 渋谷公園通りスタジオの編集室

 総務省のロードマップでは、2016年にBSを使った4K/8K試験放送の開始が定められており、NHKが8月1日、A-PAB(旧NexTV-F)が12月1日より衛星のBS 17ch(12.03436GHz)を利用して実施する。2018年には実用放送、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた本格普及へ向けた研究開発が、NHKを中心に進められている。

 IMAGICAは五反田に4K対応の編集室を設けているが、今後の8K試験放送/本放送に向けたニーズの高まりを見込んで、新たに8K映像編集に特化したスタジオを開設することとなった。住所は東京都渋谷区神南1-19-11 パークウェースクエア2 3Fで、8K制作の中心となるNHKから程近い場所に構えている。

ユナイテッド アローズ(BEAUTY&YOUTH)があるビルの3Fにある
IMAGICAの殿塚功一氏

 IMAGICAが強みとして打ち出しているのは「フィルムで培った技術」。テレビ制作事業部 赤坂プロデュースグループの殿塚功一氏は「ビデオ/テレビのBT.709に比べ、もともと映画やフィルム系はDCI-P3などで色域が広い。今はBT.2020色域やHDRの採用により、テレビ収録もRAWで行ない、色を現場では決めずに、後から加工する形が増えている。テレビの「カラコレ」ではなく、フィルムの「カラーグレーディング」のように、幅広い表現ができる環境が整ってきた。この部分は4Kでもやってきたが、IMAGICAが一番強いところだと、お客様にも認識いただいている」と述べている。

 機材は、ノンリニア編集機としてSnell Advanced Madia「Quantel Rio 8K」と「Neo Nano」、「Sapphire for Quantel Rio」を用意。P2 Expressカードに収めたDual Green方式の映像を取り込んで編集できる。

 8K素材の場合で5.5時間分(108TB)まで取り込んで編集可能。ただし、全て8Kで編集するというよりは、プロキシファイルをオフライン編集し、全体の尺を決めて8Kで取り込むワークフローが中心になるという。

編集室の機材

 モニターはシャープの85型8Kディスプレイ「LV-85001」をベースに、現時点でのHDRのHybrid Log-Gamma(HLG)仕様に対応するセッティングを施した特別仕様。今後、HLGの最終仕様が変更になった場合は、シャープと協議してバージョンアップするなど都度対応していくという。モニターの輝度が1,000nitsで、「Dolby VisionのST2084には正確には対応していないが、ガンマはDolby VisionのPQカーブも入っている」としている。

シャープの85型8Kディスプレイ「LV-85001」

 このほか、4Kモニターとしてソニーの有機ELマスターモニター「BVM-X300」を備える。レコーダは、パナソニックのP2レコーダ「AJ-ZS0500」。

 なお、新スタジオは8Kコンテンツの編集が中心にはなるが、4Kコンテンツにも対応している。同社は8Kを含む高精細コンテンツを、このスタジオを通じて年間20本製作することを目指しており、既に8K業務について打診があるという。

 音声については、NHKの8K SHVでは22.2chが採用されているが、IMAGICAのスタジオでは現時点で22.2chには対応しておらず、「需要に合わせて視野に入れたい」としている。スタジオの音声環境は5.1chで、22.2ch音声もダウンミックスして再生する。

別室のサーバーなど

「8Kはテレビに留まらない」。ROBOTと共同製作も

 今回稼働した8K編集スタジオの主なターゲットは、これからオリンピックなどに向けて映像制作の需要が高まるNHKが中心になると見られるが、IMAGICAの執行役員 ポスプロ事業統括担当の南誠氏は「8Kのニーズはテレビ放送に留まらない」とし、メーカーなどのデモ映像などを含め、高精細映像への高い需要を見込んでいる。

執行役員 ポスプロ事業統括担当の南誠氏

 「4Kはこれからも進めるが、8K試験放送が始まるタイミングで、8K編集室にもニーズがあるだろうと思い、この地に(スタジオを)作った。グループを挙げて、高精細映像に取り組む拠点とする。サイネージでの活用など、高精細な映像にはいろんな未来がある。フィルムで培った知識や経験は、テープなどよりもよっぽど4K/8Kに活かせる部分。4Kに取り組んだ実感は非常にある。映画(の製作)で育った人間が、8Kにお役に立てるのでは」(南氏)としている。

 IMAGICA単独ではなく、グループの制作会社含めて8Kに取り組む方針で、既にグループ会社であるROBOTと共同で8Kコンテンツの製作を行なっているという。