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初代ウォークマンなどソニー製品が“楽器”に変身。ソニービルOPUS最後のイベント開幕

 ウォークマンなどの歴代ソニー製品を、楽器や音響機器のように演奏できるという体験イベント「エレクトリカル アンサンブル -ソニーを奏でる、みんなで奏でる-」が、東京・銀座ソニービルの8F「OPUS(オーパス)」で、3月6日に開幕した。入場は無料。期間は3月31日まで。ソニービルはリニューアルにより3月31日で営業を一旦終了するため、OPUS最後の来場者参加型音楽イベントとなる。開催時間は11時~19時。

銀座ソニービルの8F「OPUS」

ウォークマンや、オープンリールテープレコーダが楽器に変身

 初代ウォークマンや、ハンディカムなどが、音響器材へと変貌。OPUSの円形の音響空間であるイベントスペースに設置。それらに触れたり手をかざすなどの動作で、特徴のあるエレクトリックな音色を奏でられるというイベント。旧式のオープンリールテープレコーダを楽器として演奏するグループ「Open Reel Ensemble」のメンバーが、今回の機材の開発を監修している。

OPUS内に、ソニー製品が変身した“楽器”が集結
Open Reel Ensemble。左から、吉田悠さん、和田永さん、吉田匡さん

 設置されているのは、デジタルビデオカメラの「ハンディカム」、初代ウォークマン「TPS-L2」、デジタル一眼カメラ「α」、オープンリールデッキ「TC-7660」、ブラウン管テレビの「トリニトロン」、ポータブルラジオ「スカイセンサー」を、それぞれ楽器や音響機材のように改造したもの。映像機器から発するノイズを音に変換するなど、元の製品の特徴を活かした音になっており、音階があるものを弾いたり、ドラムパッドのようにリズムに合わせて自由に演奏できる。演奏している音に合わせて、壁面にも波形のような映像が投影される。

 ウォークマンの展示スペースには距離センサーが備えられ、手をかざすとテープの再生速度が変わり、近づけるほど音程があがる。これにより、電子楽器のテルミンのような、音程のゆらいだ不思議な“磁気サウンド”を奏でられる。

ウォークマンが楽器になったもの
手をかざして前後に動かすと音が変化
ウォークマンに手をかざして演奏

 ハンディカムは、管楽器のトロンボーンと一体化。映像出力を音声入力に直接つないで音に変換している。実際に演奏するようにスライド管の部分を前後させるとズームも変化。ビデオカメラがとらえている縞模様の本数がズームによって変わることで、音程も変わる。

ハンディカムとトロンボーンが一体化
ハンディカムでトロンボーンのように演奏

 デジタル一眼カメラのαは、シャッター音そのものをマイクでとらえ、機種による違いや、連写などを活かしてリズム感のある音が楽しめる。「α7」と「α7R」、「α7R II」の3機種が用意され、各機種が持つ音の違いや、会場に流れるリズムに合わせて設定されたシャッタースピードの違いを活かして演奏できる。

デジタル一眼カメラのα 3台を使用
αのシャッター音で演奏

 オープンリールのテープレコーダ「TC-7660」は、スクラッチマシンに変化。回転部分を手で回すと、磁気テープが読み取られて音が鳴る。音の「自動点滅機能」を備え、リズミカルな演奏ができるという。

テープレコーダ「TC-7660」を活用
オープンリールのテープレコーダで演奏

 ブラウン管テレビの「トリニトロン」は3台用意され、本体から発生する電磁波を拾って音を出すというもの。備え付けのアンテナのような部分を手に持って画面に触れると、画面によって違う音が鳴る。人間の体にある水分量によっても音が違うため、触る人によって音が異なるほか、手をつなぐとさらに音が変わるようになっている。

3台のトリニトロンを触って演奏
トリニトロンで演奏

 ポータブルラジオ「スカイセンサー」は、αのストロボからの発光による放電ノイズや、テレビリモコンからの赤外線信号を組み合わせて音が出る。ダイヤルで周波数を変えると音の大きさなどが変化し、より好みの音が出せるようにチューニングするという楽しみ方もできる。

ラジオの「スカイセンサー」とカメラのストロボ、テレビリモコンを使用
「スカイセンサー」で演奏

 楽器やDJをやったことがない人でも、会場に流れている一定のビートに合わせて適当にテープのリールを回したり、ウォークマンに手を近づけるだけで演奏している気分になれるのが新鮮。一方で、トロンボーンが弾ける人ならハンディカムで自由に音を付けて弾けるので、本格的な演奏も楽しめそうだ。

Open Reel Ensembleによるデモ演奏

「NTSC」がキーに。来場者の音を集めてOpen Reel Ensembleがライブ

 開幕初日にはオープニングイベントが行なわれ、今回の“楽器”を監修した音楽ユニットのOpen Reel Ensembleが来場。各メンバーの音楽やソニーへの想いを語り、イベントの楽しみ方などを紹介した。

左から、和田永さん、吉田匡さん、吉田悠さん

 今回のプロジェクトは、Open Reel Ensembleの和田永さんが取り組んでいた、「家電を楽器の視点で扱う」というプロジェクトのノウハウを活用したもので、どの製品を使って楽器にするかというアイディアから、吉田匡さん、吉田悠さんと検討。数多くあるソニー製品から候補を絞るなかで、今回は選ばれなかったが、AIBOも候補の一つだったという。

 制作した楽器へのこだわりの一例として、ハンディカムとトロンボーンを組み合わせたものについて和田さんが説明。「走査線が出すノイズを変換して音を作っていて、その音はNTSCの周波数である60Hzから来ている。サックスでいうとBフラットまたはEフラットがキーになりますが、我々は、ちょうどそのBとEの間、白鍵と黒鍵の間の音が60Hzで、それに全体が合うようにしている。“NTSCでしか出ないキー”」と思い入れを語った。

 来場者への“演奏するコツ”については、人の水分量によって音が変わるトリニトロンの演奏は「ポカリスエットを飲んだほうがいい音がする」と推奨。最終的に必要なのは「テクノな精神。電気電波電子電磁への感謝の気持ち(和田さん)」とのこと。

 会場では、30分ごとにOpen Reel Ensembleが演奏する映像が、180度に広がるOPUSの壁面に投影される。今回のイベントで来場者が奏でた音色は毎回アーカイブされ、Open Reel Ensembleが最終日前日の3月30日にその一部を演奏にミックスし、OPUSでのフィナーレとなるライブ演奏を披露する。

リニューアル予定の銀座ソニービルにおいて、「OPUS」最後のイベントとなる。It's a Sony展も開催中