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AIで映像制作/編集が簡単に? スマートスピーカーとTV連携、VR/HDR制作の注目機材も

 幕張メッセで11月17日まで開催されている「Inter BEE 2017」において、映像制作で一つの話題となっていたのが“AI活用”。マイクロソフトのAzureやAmazon AWS、IBM Watsonなどを活用し、効率的に動画制作や編集を行なう方法が提案されている。

Inter BEE会場の幕張メッセ

 このほか、360度VRカメラや、HDR制作向けモニターなど、会場で見つけた様々なトピックや注目製品をレポートする。

AI活用で字幕作成やダイジェスト動画作成

 マイクロソフトのブースでは、クラウドコンピューティングプラットフォームのAzureを活用し、様々なサービスを提供する企業が出展。AIを活用することで映像制作を省力化する提案が行なわれている。

マイクロソフトブースではAI活用を提案

 「フジテレビNEXT smart」や、プロ野球「パ・リーグTV」など様々な映像サービスに配信システムを提供しているEVCは、クラウド型 動画管理・配信プラットフォームサービス「Bizlat on Azure」を展開。

EVCの「Bizlat on Azure」デモ。映像の音声に合わせて自動で字幕を生成

 今回のInter BEEでは、マイクロソフトAzureのAI技術を活用し、動画の音声を識別して自動翻訳/字幕生成するデモを行なっている。手作業で行なっていた工程を効率化し、企業などが自社の動画を世界に向けて発信しやすくするという。

 Speech to Text機能により音声から文字起こしを行ない、検索キーワードとしても利用可能。動画内に表示された文字をOCRで読み取って書き起こすこともできる。さらに、キーワードをクリックすると該当するシーンにジャンプして再生できるという例も紹介している。

AI活用のサービス例

 動画配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」を運営し、企業の動画活用などを支援するJストリームは、AIによる動画解析に対応し、字幕やぼかしなどを簡単に追加できる機能を持つ新たなプラットフォームを開発。

Jストリームのデモ。指定した人の顔にぼかしを入れる

 動画のアップロードから変換、マルチデバイス向け配信までを簡単な操作で実現する「VideoAid」のプラットフォームにAI活用の機能を加えるもので、動画の音声から自動で多言語対応の字幕を生成できるほか、顔認識した特定の人物にぼかしを入れたり、手ブレ補正するといった編集が可能。ビデオ要約(一定時間のダイジェスト映像)や、タイムラプス動画も自動で作成できる。

VideoAidにAIを活用

Amazon AIで動画に自動でタグ付け、有名人検索も

 アマゾン ウェブサービスジャパン/AWSエレメンタルのブースでは、AI活用の画像認識を使ったサービスを紹介している。動画を一定間隔で静止画として画像認識、そのシーンで表示されている人の顔や物体などをタグとしてメタデータ化して蓄積。メタデータを選ぶと該当シーンが自動で再生できるというデモを行なっている。

Amazon AI

 ディープラーニングに基づいた画像認識/画像分析をアプリケーションに簡単に追加できるサービス「Amazon Rekognition」を活用。シーン内に表示された顔などを、メタデータとして保存できる。画像認識する枚数によって料金は異なり、「1秒に1回」など予算によって指定できる。1,000枚の画像処理につき0.4~1ドル、1,000件の顔メタデータは0.01ドル(バージニア北部の場合)。

 4月からは、性的/暴力的な画像の検出が可能になったほか、6月からは有名人検索が可能になっている。

Amazon Rekognitionの概要

IBM Watsonで映像編集を効率化

 日本IBMのブースでは、映像のアーカイブや活用などにおいて、クラウド、メモリ、テープ(LTO)それぞれのメディアを最適に活用するという提案を行なっている。

 その中で、AI「IBM Watson」を活用し、画像/音声分析を用いて映像制作を省力化するという事例を紹介。画像認識や音声認識などによって自動でシーンにメタデータを付加。そのメタデータを元に、そのシーンを使うかカットするかを判断できるという。

IBM Watsonを使った次世代編集ワークフローの提案

 カメラで記録した元データを編集するのではなく、クラウドにアップロードしたプロキシ動画に対して画像/音声分析を行ない、そのタイムコードなどを確認しながら、実際の編集作業は元データを使って行なう形を想定。作業支援としてAIを活用することを提案している。

スマートスピーカーと放送が連動

 「INTER BEE CONNECTED」コーナーに出展しているHAROiDは、「HAROiD Note」、「HAROiD×Ad」、「Live CM」という3つの技術/サービスを紹介している。

HAROiDの展示。スマートスピーカーのEcho Dot(中央下)と連携

 「HAROiD Note」は、AmazonのAlexaを活用するもので、スマートスピーカーのEchoに「テレビノートで保存して」などと話しかけると、テレビで放送されている商品や店舗などをスマホにメモとして記録。すぐにオンラインで商品を購入するといった流れにつなげられるという。将来的には、「俳優」をメモしたり、「BGM」を流すなど、対応するコンテンツ拡充する予定。

Echoに話しかけてメモすると、スマホに情報が蓄積

 「HAROiD×Ad」は、ドラマやテレビショッピングなどの視聴履歴を元に、その人がスマホなどで表示したWebにも関連するオンライン広告を表示させるというもの。その広告に実際にユーザーがアクセスしたかどうかを測定し、広告の効果を確かめられる。テレビで観たCMを元に、Webでクーポンを発券し、実際に店舗で使われるかという測定もできる。このサービスは、視聴履歴と広告配信を結びつけることを同意したユーザーに対して提供する予定。

HAROiD×Adのデモ

 「Live CM」は、テレビとスマホを連動させ、特定のCM放送中にスマホ画面をタップしてゲームなどに参加すると、それに応じてクーポンなどが配布されるというもの。番組本編だけでなく、CMでも視聴者参加ができる取り組みとして、既に複数のCMで採用されている。

Live CM

 同じくINTER BEE CONNECTEDコーナーに出展するNHKは、放送通信連動の次世代サービス「Hybridcast Connect X」(仮称)を紹介。テレビで放送されているサッカーの試合に合わせて、スマホだけでなく様々なIoT機器が連動するというもので、今回のデモではロボットや照明も放送に連動。得点が入ると、照明がチームカラーと同じ色で光り、ロボットが喜ぶというデモを行なっている。

NHKが「Hybridcast Connect X」を紹介
サッカーで得点が入ると、照明やロボットなど家にあるIoT製品が連動

本格HDR制作を実現するEIZO液晶「CG3145」

 EIZOは、輝度1,000cd/m2、コントラスト100万:1の映像制作市場向け31.1型 4K/HDR液晶ディスプレイ「ColorEdge PROMINENCE(プロミネンス) CG3145」を出展。12月18日の発売に向け、最終仕様の製品が展示されている。オープンプライスで、直販価格は285万円。

EIZO ColorEdge PROMINENCE CG3145

 PQとHybrid Log Gammma(HLG)のHDRに対応。新型のIPS液晶パネルと、専用の高輝度バックライトユニットの組み合わせにより、明暗比の大きい部分の輪郭がにじむハロー現象を抑え、HDR映像のカラーグレーディング作業において正しい色評価が行なえるとする。有機ELモニターに対してもそん色なく、全白のシーンなどで輝度が落ちるといった現象もないことなどを紹介している。

 入力はDisplayPortとHDMI端子が各2系統だが、SDI入力したい場合に向けて、互換性確認済みのAJA製SDI-HDMIコンバータ付きのセットも用意する。直販価格は293万4,000円。

AJAのSDI-HDMIコンバータ

 また、既存モデルのCG318-4Kや、CG248-4Kにおいて、有償アップグレードでPQカーブ(PQ10000、PQ300)に対応するサービスを開始。訪問サービスで適用される。マスターモニターよりも低予算でHDR対応したい場合や、まぶしすぎない輝度でHDR色確認をしたいといった用途に適しているという。

CG248-4Kも有償アップグレードでPQカーブ対応に

24個のカメラで8K 360度撮影

 フォトロンのブースでは、360度8K 3D映像を撮影できる米JAUNT製のカメラ「JAUNT ONE」を紹介。国内ではIMAGICAが導入し、三宅島の伊豆岬で撮影した8K 360度映像を使って紹介している。

8K/360度対応カメラ「JAUNT ONE」

 円形の本体の外側に24個のカメラを備え、各カメラにSDカードを装備。それらをソフト上でつなぎ合わせて8K 3D映像を作成できる。18ストップのダイナミックレンジに対応する。価格は1,350万円で、ケーブルやアクセサリーキット、専用ソフトなどが付属。

 JAUNTは、映像をクラウド上でスティッチできる機能も用意されており、この機能の利用には別途料金が必要。なお、360度動画のスティッチのノウハウを持つIMAGICAが、JAUNT ONEで撮った映像をスティッチする作業を請け負うサービスも行なっているという。

24個のカメラから360度8K映像を生成
三宅島 伊豆岬の映像
Insta 360のブースでは、Insta360 Air(右)やInsta360 ONE(左)などの360度カメラを展示
Blackmagic Designのブースに展示されていた、4つのクアッドリンク12G-SDIコネクタ搭載のデジタルシネマキャプチャ/再生カード「DeckLink 8K Pro」
ATOMOSブースには、スタジオ用HDR対応モニター「SUMO19M」。1,200nitに対応