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3列目でもトンネルでも聴きやすい、マツダの「CX-8」とボーズ10基スピーカーを体験
2017年12月6日 19:04
マツダが12月14日から発売する新車「CX-8」は、3列シートを備えた新型クロスオーバーSUV。3列目に座る人も、前列の人と会話しやすい静粛性や、オーディオ性能にもこだわっているのが特徴で、オプション装備としてボーズのサウンドシステムを選ぶ事もできる。それも、“単にボーズのカーオーディオを後付できる”というレベルではなく、車両の設計段階から共同開発し、音のクオリティを高めたという。マスコミ向けのCX-8試乗会が開催されたので、そのサウンドを体験した。
CX-8は、マツダの国内向けSUVラインナップの最上位と位置づけられている。価格は3,196,800円~4,190,400円(税込)。
3列シートで6~7名が乗れる車なので「家族向け」と思われがちだが、多人数や荷物を多く乗せた場合でも高いトルクを活かし、「街乗りから高速走行まで余裕のある走りができる。走りやデザインを諦めたくない。でも家族や友人ともドライブを楽しみたい。家族で過ごす時間とともに、趣味など、自分自身の時間を楽しむユーザー」をターゲットとして開発された。
クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」を搭載。少量の燃料を多段かつ高圧で微細噴霧化して噴射することで、静粛性と燃焼効率、高い環境性能を両立したという「急速多段燃焼」を採用しているのが特徴。最高出力を従来の129kWから140kWに、最大トルクを420N・mから450N・mに向上させている。
さらに、72Lと大容量(4WDは74L)の燃料タンクを採用。新しい燃費値のWLTCモードでは燃費15.8km/L(4WDは15.4km/L)を実現、東京から九州までの1,137kmを無給油で走破する事も可能だという。
3列目でも前の人の声が聞こえるように
3列シートの車では、3列目に座ると、車内の騒音が大きく、ドライバーが喋っている声や、カーオーディオのサウンドが聴き取りにくいといった事がある。そのため、車内の人と会話する時に大きな声を出す必要があったり、長時間の走行でストレスを感じる事もある。
CX-8では静粛性(NVH性能)を強化。「1列目から3列目まで全ての乗員が普段通りの声量で、ストレスなく会話できる」事を目標として開発している。騒音には大きく分けて、空間を介して音が伝わる「空気伝播」と、部品を介して振動が伝わる「固体伝播」の2つがあるが、空気伝播では、人間の声の周波数付近が明瞭に聞こえる事を重視して改良したという。
具体的には、ボディの段差や隙を減らしたり、ワイパーの位置を変更するなどして、高速域の風騒音を大幅に低減。音の透過経路も分析し、孔や隙を削減し、遮音材も最適な位置に配置する事で、騒音の車室内への侵入も遮断した。
特に3列目の静粛性向上には、Dピラー付近、後輪タイヤの斜め後方上部の空間に配置した吸音材がタイヤ音の低減に効果を発揮。耳の近くにあるシートベルトの固定部にある小さな孔からも騒音が入る事を突き止め、対策を施した。天井のトップシーリングに貼り付ける吸音材も、三列目上部まで面積を拡大させている。
他にも、フロントストラットにダイナミックダンパーを設定するなど、サスペンションの共振現象を綿密にコントロール。各部のパーツも、共振周波数が重なって、特定の騒音が残らないように工夫するなど、細かな対策で静粛性をアップさせている。
実際に乗ってみると、ディーゼルエンジンとは思えないほど静かで、走行中に同乗者とも会話しやすい。これは、後述するカーオーディオを楽しむという点でも、重要なポイントだ。
10基のスピーカーを使ったボーズのサウンドシステム
オプションで選べるボーズのサウンドシステムも、3列シート全てで「上質なサウンドが楽しめること」を目的に開発したという。それを実現するため、10基のスピーカーを採用した。
具体的には、Aピラーに高音域用として、新開発の25mm径ツイータを配置。振動板はシルクドームで、磁気回路にはネオジウムマグネットを採用。「従来よりも、さらに滑らかで澄んだ高音再生が可能となり、より鮮やかで精密な音像を再現する」という。また、 Aピラーからの直接音により、フロントに広がるサウンドステージが、従来よりも高めの位置に、広がりをもって再現される効果もある。
ダッシュボード中央には80mm径の中高音域用ドライバを搭載。左右のフロントドアには165mmのスピーカーを、リアドアにも130mmのスピーカーを配置。
さらに三列目シートの近く、左右のトランクサイドトリムには60mm径の中高域スピーカーを配置。
ウーファは130mm径で、17インチ スペアタイヤ・ベースボックスに搭載。それをトランクフロア下部に配置している。
実際にCX-8に乗車して聴いてみると、Aピラーのツイータが効いているのか、非常に解像度の高い、明瞭なサウンドに包まれる。アコースティックなジャズでも、ヴォーカルの描写だけでなく、ベースの響きや弦の動きなど、カーオーディオではなかなか再現が難しい細かな音がダイレクトに堪能できる。
また、全体のバランスも良好。低域が出過ぎたり、高域だけ強調されるような事もなく、ニュートラルに全帯域の音が耳に入る。ピュアオーディオ寄りな音作りに好感が持てる。
ユニットだけでなく、独自の信号処理技術も活用。専用設計のデジタルアンプを搭載しているほか、「Centerpoint 2」というサラウンド機能も投入。ホームオーディオで開発された技術を、車載向けに発展させたもので、独自のアルゴリズムでステレオ音源を解析。2chのソースでも、5.1chに変換、例えばヴォーカルと楽器音は前方のサウンドステージへ、残響音などはそれ以外のスピーカーへと割り振るもので、様々なソースを、10基のスピーカーをフルに使って再生できる。
実際に「Centerpoint 2」をONにしてみると、ボーカルや楽器の音像がスッと前方に移動。まるでフロントガラスの向こうに歌手がいるかのような聴こえ方になる。OFFにすると、音像がグッと近くなり、ヘッドフォンで音楽を聴いているかのような感覚になる。ONの方が音の聴こえ方が自然に感じられるというだけでなく、長時間のドライブで聴いていても、Centerpoint 2を使った方が聴き疲れしないだろう。
運転席や助手席だけでなく、2列目、3列目に移動して聴いてみたが、ここでも効果がある。もともと車内の静粛性が高く、2列目、3列目でも音楽がしっかり耳に入るが、Centerpoint 2をONにすると、音の広がりにキッチリと包み込まれる感じになり、音楽がよりバランスよく耳に入るようになる。特に3列目では、耳の近くにあるトランクサイドトリムの60mm径スピーカーが活躍するので、Centerpoint 2をONにした方が大幅に聴きやすいサウンドになる。
さらに「AUDIOPILOT 2」という「走行ノイズ補償システム」も用意。走行中では、ロードノイズなどで再生音が邪魔されがちだが、それを自動補正するもの。車内にマイクを設置しており、ノイズを集音。再生しているオーディオの音を比較し、不足している部分を自動的に補正してくれるという。
試乗車を、ロードノイズが多くなる高速道路で走らせながらAUDIOPILOT 2をON/OFFすると、確かに違いがわかる。ONにしておくと、スピードを上げてトンネルに入り「ゴー」というノイズが増えても、音の1つ1つの輪郭がクリアで、聴き取りやすい。また、アコースティックベースなど、低域の動きも、ノイズに埋もれずにキッチリ聴き取れる。
「ノイズが増えたのでボリュームをアップする」という単純なものではなく、音量に変化はない。それでいて、“聴き取りやすさだけがアップ”する印象だ。そのため、トンネルの中を走っていても、不必要に音量を大きくする必要がない。単に音楽が良く聴こえるというだけでなく、これも長時間走行の疲労やストレス軽減に役立つ機能と言えそうだ。
ボーズのサウンドシステムは「XD PROACTIVE」と「XD L Package」のグレードでオプションとして追加でき、価格は75,000円となっている。