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楽天とビックカメラが家電で連携、「楽天ビック」スタート。ビックで楽天ポイントも

 楽天とビックカメラは11日、家電領域で協力し、ECサイト「楽天ビック」を開設した。両社の強みを生かして、競争力ある価格と幅広い品ぞろえを実現するECサイト「楽天ビック」を共同で運営し、オンラインとオフライン連携などに取り組む。

楽天三木谷社長(左)とビックカメラ宮嶋社長

 楽天ビックは、ビックカメラのECサイト(ビックカメラ.com)と同等の品揃え(約90万点)を目指し、家電を中心に展開。ビックカメラの約40店舗とともに、楽天の9,500万の会員を生かし、相互の強みを活かしたECサイトとリアル店舗連携を目指す。

 楽天ビックでの買い物のほか、ビックカメラの45店舗における在庫状況を確認できる機能を提供。さらにビックカメラの47店舗で、楽天の運営する共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」も導入。ユーザーはビックポイントと楽天スーパーポイントのいずれかを選んで貯められるようになる。また、ビックカメラにおける楽天ポイント支払いにも6月中旬を目処に対応予定。

 商品販売だけでなく、家電の購入から設置工事までをスムーズに依頼できるWebサイトを構築。東京23区においては、午後3時までに購入された商品は当日中に配送するサービスの実現を目指す。また、楽天ビックの購入製品をビックカメラ実店舗で受け取れるサービスも開始予定。

 ビックカメラは楽天の集客力と顧客、物流網を活用、楽天はビックカメラ店舗での説明や体験、設置工事など家電向けの配送能力を利用することとなる。

楽天の強み
ビックカメラの強み

 また、女性や若年層に向けた独自製品の開発などでも協力。第1弾として、ビックカメラグループ専売モデルのVRヘッドマウントディスプレイを、楽天ビックで先行販売する。FULL HD解像度で、STEAM VR対応の独自モデルとのこと。

ECの“漠然とした不安”を解消。楽天ビックで商品開発も

 楽天の三木谷浩史社長は、「家電の雄、ビックカメラとの素晴らしいコラボレーションを嬉しく思う。2社の新しいコラボレーションで、従来より一歩進んだ形でやっていく。例えば9,500万の楽天会員のデータを使って、女性向けなどの新製品を開発したい。また、店舗で楽天スーパーポイントが貯まり、リアル店舗とも連動する。このような取り組みができることにワクワクしている」と語った。

楽天 三木谷浩史社長

 ビックカメラの宮嶋宏幸社長は、「楽天ビックを開店できて嬉しい。ネットとリアル店舗の垣根を超えたサービス。やりたいことはたくさんあるが、少しづつ始めていく。店舗の在庫を楽天ビックで確認できるのも、ユーザーニーズに応えたもの。電話の問い合わせでも、『あの商品はどこで見られる』というものが増えている。その声に応えていきたい。また、楽天のユーザーには、女性が多いので女性層を拡大できると考えている。メーカーとのこれまでの関係を生かし、楽天との協力の下でプライベートブランドなどの新しい製品を作っていく」と、楽天ビックの目的を説明した。

ビックカメラ 宮嶋宏幸社長

 楽天 執行役員 楽天市場事業長の矢澤俊介氏は、2013年から16年のECにおける家電の成長は6.3%と紹介し、「もっと伸びるはず」と語る。一方で、楽天の調査では「ECで家電購入を断念した」という回答が8割に及び、その理由を尋ねると、「実際に試したい」、「配送設置への不安」という回答が上位に入った。

家電EC特有のユーザーニーズ
家電ECで重視すること

 そうしたECの課題を解決する取り組みが楽天ビックと説明。9,500万IDの楽天の顧客基盤や70以上の関連サービス、楽天スーパーポイントやユーザーデータを持つ楽天と、約40のリアル店舗と家電の専門性、家電に特化した配送網やアフター対応のノウハウを持つビックカメラの連携をアピール。「オンラインとオフラインの連携」、「設置・配送の利便性追求」、「競争力ある価格と品揃え」をアピールした。

楽天ビックの特徴

 ビックカメラ 常務執行役員 EC事業本部長 秋保徹氏は、「ネット通販では、実物を見られない、体感できない、説明が聞けないなど、『漠然とした不安』がありネット購入をためらう人がいる。大型製品になればなるほどその声は顕著。ビックカメラのECでも、店舗受け取りサービスの利用が増えている。これは実際の商品を確認したい、という要求を示すもの、と考えている」と語り、楽天ビックでは店舗での展示や在庫確認を重視したことを強調。「楽天市場内からビックカメラの店舗在庫が見られるのは有益なはず。この利便性をお伝えしていきたい」とした。

店舗受け取りサービスが伸長
楽天でビックの在庫確認

 また、将来的にはネットで“取り置き”して、店舗で受取、といったサービスも展開予定としている。

 配送への不安への対応については、東京23区内で、即日配送サービスを今夏に展開するほか、オンライン購入製品の設置サービスも強化予定。「安心して買っていただけるサービスフローを構築する。配送・設置の日付や時間の指定ができない点を解消し、ビック店頭と同等の日時指定を実現したい」とした。

 家電製品以外の取扱については、「非家電分野も拡充していくが、まずは家電というキーワードでベネフィットを提供し、家電の専門性にこだわっていく」と説明。また、ソフマップの強みを活かしたリユース商品の販売や買い取り、サービス・サポートなどの導入も検討中としている。

楽天ビックの特徴まとめ

 楽天ビックの開始により、ビックカメラは2021年度に売上高1兆円、EC事業の売上1,500億円を目指す('17年度は7,900億円、730億円)。

EC事業倍増へ

 なお、ビックカメラ.comのポイントは基本10%だが、楽天ビックは基本5%。基本ポイントに加え、最大10倍キャンペーンなど様々な施策を打っていく方針。また楽天ビックでエントリーし、店舗で買い物すると5%アップの10%ポイントをバックするキャンペーンも4月20日まで実施する。

 ビックカメラ.comと楽天ビックの取扱製品は同じだが、「当初は価格に差がある場合があるかもしれない。ユーザーの声を聴きながらやっていきたい」(ビックカメラ宮嶋社長)と説明。「これまで本サイト(ビックカメラ.com)で購入されている方と、楽天市場店を利用している人は明らかに棲み分けしていた。だから楽天市場店の機能を本サイトに近づければ、もっとユーザーが広がるのではという発想。スピード配達、当日配達なども可能になり、9,500万ファンを実店舗につなげて、新たなお客様にビックカメラに来ていただきたい」という。

 また、楽天はウォルマートと提携するなど、小売大手との連携が続いている。家電分野において、ビックカメラ以外の会社と組む可能性について問われた楽天三木谷社長は、「契約上、エクスクルーシブかどうかは申し上げられないが、紳士的な合意の元で、ビックさんとの取り組みを最優先にしていく」と答えた。